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「ほめる」子育てが生み出す、主体性のない子ども/くやまない、悩まない、自分を責めない――心がラクになるアドラー流子育て【第22回】

「ほめる」子育てが生み出す、主体性のない子ども/くやまない、悩まない、自分を責めない――心がラクになるアドラー流子育て【第22回】

アドラー流で考えると、ほめる子育てにも問題点があるのです。それは、行動をする目的が「ほめられるため」や「叱られたくない」になってしまうと、明らかに「ほめられる」とわかっているときにしか、行動できない子どもになってしまう危険性があることです。

最近、ピアノ指導者の間で話題になっている大事なこと

わたしが指導法を教えているピアノ指導者の間で最近話題になっていること。それは、

お母さんの顔色をうかがう子どもたち

です。例えば、レッスン中に何かあると、すぐにお母さんの方を見る。そんな生徒が増えているそうなのです。

わたしは、子育て中の保護者に向けて「アドラー流の子育て」を伝える仕事をしていますが、同時に、わたし自身がピアノ講師であることから、ピアノ指導者や音楽指導者、あるいは教育に携わる先生方に向けても、執筆や講演会などを通してアドラー心理学を伝えています。

(学研プラスより発行されていた「おんがく通信」にて「勇気づけのピアノレッスン」というコラムも連載していたのでよかったらご覧ください。)

このコラムを読んでくださっている方の中にも、お子さんがピアノを習っているという方も多いかもしれませんね。みなさんのお子さんはどうですか?

言われてみれば、確かにわたしの教室にもかつて、そのような生徒がいました。

そんな生徒の気持ち……それはきっと「お母さんにどう思われているか」が、とても気になるからなのでは? と、先生方も口をそろえます。

ほめて育てるのは一般的ですが、困ったことを生み出すことも

子どもたちは、お母さんのことが大好きです。嫌われたくないのです。叱られたくないのです。ほめてもらいたいのです。

そして、その思いが頭の中いっぱいになると、ついお母さんの顔色をうかがってしまうのでしょう。

お母さんに認められたい気持ち自体は決して悪くはないのですが、その思いが強すぎてしまうと、その後が心配になってしまう先生方の気持ちも、わたしにはよくわかります。
昨今では「叱る」子育てについては、問題点が多いと指摘されていますが、「ほめる」子育ては一般的です。
けれども実は、アドラー流で考えると、ほめる子育てにも問題点があるのです。

それは、行動をする目的が「ほめられるため」や「叱られたくない」になってしまうと、明らかに「ほめられる」とわかっているときにしか、行動できない子どもになってしまう危険性があることです。

例えば、ピアノを上手に弾けることの目的がお母さんにほめられることになっていたとしたら、近い将来、自ら主体的に練習できなくなってしまう可能性があります。ピアノに限らず勉強においてもそうなのですが、上手に弾くことができなかったとき、あるいは、学校のテストで高得点を取れなかったときに、お母さんにほめられなくなることによって、ひどく落ち込んでしまい、自分に自信が持てなくなり、一気にやる気を失ってしまうケースもあるのです。

また、このような経験を積んでいくと、他者の評価によってしか自分の価値を認められなくなり、自分を過小評価するようになるとも言われています。

では、どうしたらいいのでしょうか? アドラー心理学では、「勇気づけ」がその答えです。

「ほめる」は上下関係から

「ほめる」というのは、上の立場の人が下の立場の人を評価するものです。
アドラー心理学では、『人は誰もが対等』と考えるので、「ほめる」代わりに「勇気づけ」をします。

例えば、子どもの良い面を伸ばそうとするときに、上から目線で「よくできたね」ではなく、対等の関係で「がんばっているね、お母さんもうれしい。」「困ったときはいつでも相談してね。いつも応援しているから。」と共感し、見守ることで、次のやる気につながるよう勇気づけをするのです。

ほめられて育った子どもたちの傾向として、行動の基準が常にお母さんであったり、他者であったりします。自分の中に基準がもてないので、傷つきやすく、心が折れやすいということも指摘されています。

現代の若者が抱えているコミュニケーション問題の解決にも

最近の10代後半から若い世代の社会人に、「人にどう見られているのかが気になって仕方ない」「どう評価されるかばかり気になってしまい行動できない」という傾向あることをご存知の方も多いでしょう。

数年前に話題になった「大学生がトイレの個室でお昼ご飯を食べる」という衝撃的な話も、上記のようなことが理由かもしれません。

未来を担う子どもたちが、これから生きていく厳しい社会の中で、もまれながらもたくましく健全に育っていくためには、わたしたちおとなが自らの行動の基軸をもつこと、そしてコミュニケーションの大切さ、勇気づけすることの大切さを伝えていく必要があるのではないかと、強く感じています。

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松井美香(まついみか)

松井美香(まついみか)

松井美香(まついみか)

東京音楽大学ピアノ専攻卒業。「勇気づけの音楽家」。大学卒業後約10年間公立中学校に勤務。その頃偶然、教員研修でアドラー心理学に出会い、岩井俊憲氏の元で学び約25年が経過。自身のピアノ教室や子育てにおいてアドラー心理学を実践する中、子どもたちが音楽や部活動を続けながらも有名大学に続々と合格し夢を叶えている。長男(21歳)と双子(18歳)三人の男子の母。現在、保護者や音楽指導者に向け、執筆やセミナーを通して「勇気づけの指導法」を広める活動をしている。

*学研「おんがく通信」にて、コラム「勇気づけのピアノレッスン」連載中

*学研プラス出版「あなたの想いが届く愛のピアノレッスン」にて、手記「ある教室のささやかなサクセスストーリー」を執筆

松井美香公式ホームページ:

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