子どもの夢を応援する親になりませんか/くやまない、悩まない、自分を責めない――心がラクになるアドラー流子育て【第23回】
わたしたち親は、子どもの「こうなりたい」という夢を邪魔する「ドリームキラー」ではなく、あきらめない心を育てる「ドリームサポーター」になりたいものです。
目標を立てても意味がないと主張する生徒がいました
年が明け、今年の目標を立てた方も多いと思います。
この時期、子どもたちも学校で「目標を立てることの大切さ」を教わっているのではないでしょうか。
かつて、公立中学校の学級担任をしていたころ、年明けや学期の始まりごとに、わたしもクラスの生徒たちにホームルームでそのような話をしていました。また、実際に「目標を立てる」という内容の授業もしました。
目標を立てたあとの生徒たちの反応はさまざまでした。
目標を達成するため真剣に取り組む生徒もいれば、いい加減にその場しのぎでやり過ごすという生徒もいます。
なかには「目標なんて立てたって、どうせ自分には達成できないし意味がない!」と言いきる生徒さえいました。
夢を持てない子どもが多くなっている
現代の子どもたちはとても現実的で、努力や苦労を避けて楽なことを選んだり、困難にぶつかったとき、すぐにあきらめてしまう傾向があると言われています。
「無理!」という言葉が口癖になっている子どもも多いし、小学校高学年にもなると「こうなりたい」という夢を持てない子どもが一気に増えるとも聞きます。
「目標を立てても達成できないから、最初から立てなくていい」
「夢なんて持ったって、どうせそうなれない」
その思いに至った理由はわかるとしても、なんとも寂しい気持ちになりますね。このように考えてしまう子どもが、これ以上増えないことを願うばかりです。
目標の先にあるもの
目標を立てることの先にあるのは、夢です。
それぞれの持つ夢に向かって、今できる小さな目標を立て、一つひとつ達成していくことに意味があります。
だれもが目標を立てなければいけない、とい言うつもりはありませんが、「こうなりたい」という夢は持って欲しいのです。
子どもたちはだれもが、素晴らしい能力を持っています。
残念ながら、その能力を存分に発揮できずにいる子どもが大勢いることを、わたしは教育現場で知りました。
発揮できないのは、自分を過小評価しているからです。
やれることを、やる前からあきらめてしまうからです。
どんな子どもも、もともとは夢を持っていた
どんな子も、小さいころには「サッカー選手になりたい」「歌手になりたい」「世界で活躍する学者になりたい」などの夢があったはずです。
夢というのはなりたい職業に就く、ということばかりではありません。
「世界一周旅行をしてみたい」「珍しい動物を見てみたい」「おいしいケーキを作れるようになりたい」など、「こうしたい」と思ったことも夢なのです。
わたしたち親は子どもを心配するあまり、無意識のうちに「あなたにそんな才能があるのかしら」とか「無理なんじゃないの?」とか「うちにはお金がないからできない」などと言ってしまいがちです。
子どもの夢をつぶす気などまったくないのに、それが子どもたちの夢を信じる気持ちをくじいているのかもしれません。
子どもの夢を応援するために
子どもの「あきらめない心」を育てるために、わたしたち親は一体何をすれば良いのでしょうか?
まずは、上にあげたような、子どものやる気をなくすような勇気くじきの言葉を使わないことが大切です。
例えば、立てた目標を達成できなかった我が子に向かって、
「だから、言ったでしょう! あれだけお母さんが言ったのに、あなたがちゃんとやらないからできなかったのよ。もっと頑張りなさい。」
このような言葉かけでは、今まであったやる気は、みるみるうちにしぼんでしまいます。
そうではなく、アドラー流ではこのようにします。
まずは、子どもの気持ちに共感し
「頑張ったね。でも、達成できなかったのは悔しかったね。」
このように声かけをします。
そして、「今度、目標を達成するために、あなたがこれからできることって何だと思う?」「目標達成のために、お母さんに協力できることはある?」のように、質問するのです。
このセリフをそのまま言えば良いというわけではありません。
言い方は人それぞれですし、どの言い方が正しいというわけでもありません。大切なのは、目の前にいる子どもにしっかりと関心を向け、子どもの気持ちに寄り添うことです。
ドリームキラーではなく、ドリームサポーターに
そうは言うけれど現実を知ることも子どもにとって大切なのでは? と考える方もいるでしょう。どうせかなわないのなら、早めに現実を知らせた方が本人のためになるのでは? と思う気持ちもわからなくはありません。
でも、子どもにその能力がない、可能性がない、と決めつけるのはまだ早いのです。時代は移り変わり、可能でないと思っていたことが可能になることだって、この先ないとは言えません。現代の常識が、未来には常識ではなくなっているかもしれないのです。
好きなことを見つけとことん追求していく、そんな生き方ができたら、どんなに幸せでしょうか。わたしたちの常識をくつがえし、未来に向かって精一杯生きる子どもたちをサポートすることが、おとなの役目であると、わたしは考えます。
子どもたちには、不可能を可能に変える力があるのです。
わたしたち親は、子どもの「こうなりたい」という夢を邪魔する「ドリームキラー」ではなく、あきらめない心を育てる「ドリームサポーター」になりたいものです。
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