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子どもの心に届く勇気づけの声かけ/くやまない、悩まない、自分を責めない――心がラクになるアドラー流子育て【第30回】

子どもの心に届く勇気づけの声かけ/くやまない、悩まない、自分を責めない――心がラクになるアドラー流子育て【第30回】

少しずつ困難を乗り越えていくことで、自信は生まれてくるもの。わたしたち親は、子どもの心に届く勇気づけの声かけを、日頃から心がけたいものです。

「運動会」が苦手な子に対しての関わり方

今年も運動会のシーズンがやってきました。

親であるわたしたちも、運動会当日は子どもたちが自分の実力を発揮できるよう、一生懸命応援したくなるものですね。毎年楽しみにしている保護者の方も多いことでしょう。

さて、どの学校(幼稚園・保育園)でも、種目として採用されているのが「徒競走」や「かけっこ」。でも、走ることについては、得意不得意、あるいは好き嫌いが比較的はっきりと分かれるように思います。お子さんはいかがでしょうか?

もしも、お子さんが急に「運動会で走りたくない」と言い出したら、あなたはどんな声かけをしますか?

スポーツは勝敗がつくもの

いつでしたか、「順位がつくことに問題がある」と、一部の幼稚園や学校で、徒競走やリレーに順位をつけないルールを作ったという話がありました。

確かに、なんでもかんでも競争させるのは意味がないと思いますが、そこまで気にする必要もないのではないかと思います。なぜなら、スポーツは競技(ゲーム)だからです。勝敗がつくからこそ楽しい、と感じることもあります。それを認識した上で、真剣に取り組むことは決して悪いことではないのです。

ただし、ここで少し気をつけたいことがあります。

走ることが苦手、と感じている子に対して、
「頑張りなさいよ、○○ちゃんに負けちゃダメよ!」
「お兄ちゃん(お姉ちゃん)は1位だったのよ。だからきっとあなたも1位を取れるはず!」
「ちゃんと練習しないと、速く走れるようにならないよ!」
などの言葉は、避けたいものです。

勝敗や結果にこだわりすぎると子どもは力を発揮できない

勝敗は目に見えやすいものです。
「オンリーワン」よりも「ナンバーワン」の方がわかりやすいので、多くの人がそれにこだわるのもわかります。

けれども、スポーツに限らず、勉強などにおいてもそうですが、勝敗や結果だけがすべてではないはずです。

おとなが偏った価値観で育ててしまうと、子どもたちは影響を受けてしまいます。まるで、勝敗や結果がすべてであるように感じてしまうかもしれないのです。

人生は勝ち負けで決まるものでもありませんし、結果が全てではありません。
そういったことを、親であるわたしたち自身が気をつけていないと、子どもたちを苦しめることにもなりかねません。

でも、どうぞご安心ください。わたしたちが偏らないよう意識し、言葉かけを工夫することによって、子どもたちは健全に育ってくれます

アドラー流子育てでは、まず子どもの気持ちに共感します

話を元に戻しましょう。
「運動会で走りたくない」と言う子どもにどう声かけをするか。

「何でそんなことを言うの! そんなことできるわけがないじゃない! ダメに決まってるでしょ! 今さら、そんな勝手なこと言うんじゃありません!」

と言いたくもなりますが、
このような言葉を言ってしまったら、子どもは親に対して本音を言えなくなってしまいます。

そこをぐっとおさえて、
まずは、子どもの言い分をすべて聞いてあげましょう

走るのが苦手だった保護者であれば共感もしやすいですが、ご自分が得意だった場合は、子どもの気持ちはなかなか理解しにくいものかもしれません。

「やってみなければわからないじゃない! そんな弱気でどうするの! ビリになっても恥ずかしくないよ。一生懸命走ればいいんだよ!」

これはどうでしょう。
子どもは「頑張って走ってみよう!」と思い直すでしょうか?

多くの場合は違います。

親は励ましのつもりで言っているのですが、子どもの心には残念ながら届いていません

正論を語るだけでは、子どものやる気は起きない

保護者の言いたいことは、とてもよくわかりますし正論です。
でも、子どもだって、本当はよくわかっているのです。
それでも、「走りたくない」という気持ちになってしまうのです。

だったら、その気持ちに寄り添ってあげましょう。
「そうなんだ、なんだか心配になっちゃったんだね。もしもみんなより遅かったり、転んだりしたら恥ずかしくなっちゃうもんね。嫌になっちゃうね。」

このように、まずは否定せず、弱気になっているお子さんの気持ちに共感してみるのです。言いたいことを全部言わせてあげることも大切です。

そして、全部受け止めたあと、あなたが伝えたいことを伝えてほしいのです。

本当に心配だよね。でも頑張って走れるといいね。勇気を出して走ることが速く走ることよりとても大事だと、お母さんは思うよ。」
と、アイメッセージ(「わたしは」を主語にする言い方)で言ってみてください。

お子さんはきっと「お母さん(お父さん)は自分の気持ちをわかってくれた」と安心し、運動会では大いに力を発揮してくれることでしょう。

走り終わってからのフォローも忘れずに

運動会が終わったあとの子どもへの声かけにも、注意したいものです。
やはりここでも、人と比較しないこと。そして、勝敗や結果だけに注目しないことが重要です。

「やったね! ○○ちゃんより早く走れたね!」
「○位が取れたね! すごいね! 速かったね!」ではなく、
「頑張ったね! (あなたが)勇気を出して走れたこと、お母さん(お父さん)、とってもうれしかったよ。」と伝えます。

本人が望んでいた結果が出なかった場合も、
「残念だったね、惜しかったね、悔しかったね!」と、まずは共感します。

そのあと
「でも、一生懸命走ったあなたを、お母さん(お父さん)は誇りに思うよ。」と言ってあげてください。

お子さんはきっと、勇気を出して走ったことで、少しずつ自分に自信をつけていくことでしょう。

苦手なことは誰にでもあるものです。
でも、こうして少しずつ困難を乗り越えていくことで、自信は生まれてくるもの。走ることに限らず、わたしたち親は、子どもの心に届く勇気づけの声かけを、日頃から心がけたいものです。

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松井美香(まついみか)

松井美香(まついみか)

松井美香(まついみか)

東京音楽大学ピアノ専攻卒業。「勇気づけの音楽家」。大学卒業後約10年間公立中学校に勤務。その頃偶然、教員研修でアドラー心理学に出会い、岩井俊憲氏の元で学び約25年が経過。自身のピアノ教室や子育てにおいてアドラー心理学を実践する中、子どもたちが音楽や部活動を続けながらも有名大学に続々と合格し夢を叶えている。長男(21歳)と双子(18歳)三人の男子の母。現在、保護者や音楽指導者に向け、執筆やセミナーを通して「勇気づけの指導法」を広める活動をしている。

*学研「おんがく通信」にて、コラム「勇気づけのピアノレッスン」連載中

*学研プラス出版「あなたの想いが届く愛のピアノレッスン」にて、手記「ある教室のささやかなサクセスストーリー」を執筆

松井美香公式ホームページ:

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