メニュー閉じる

「早く早く!」から卒業する方法/くやまない、悩まない、自分を責めない――心がラクになるアドラー流子育て【第32回(最終回)】

「早く早く!」から卒業する方法/くやまない、悩まない、自分を責めない――心がラクになるアドラー流子育て【第32回(最終回)】

ほんの少しでも努力していたら、それを見逃さずに「今日は頑張ってるね」という言葉をかけてあげましょう。わたしたち親ができることは限られていますが、どんなときも子どもへの「勇気づけ」を心がければ、子どもはやがて自分の行動を自分で管理できるようになっていくものです。

言わない方がいいとわかっていても

お母さんが常勤で働くことが当たり前の時代になってきました。仕事も家事も頑張るお母さんはいつも何かに追われていて、我が子にも「早く、早く」と言ってしまいがち。

かつてのわたしも同じです。

「早く起きなさい!」から1日が始まり、
「早く食べなさい」「早く支度しなさい」「早く行きなさい」「早く宿題しちゃいなさい」「早く手伝って」「早く片付けて」「早くお風呂に入りなさい」「早く寝なさい」などなど・・・

「早く」という言葉を使わない日はなかったと思います。言わないように気をつけていても、いつもこんな調子でした。

子どもはグズグズ・ダラダラ、親はイライラ

親であるわたしたちは、子どもが期待通りに行動するとほめ、期待通りにできないと叱るのが当たり前になっています。

早く行動すれば「えらいわね」「すごい! やればできるじゃない」「あなただけね、いつも早いのは」などとほめ、

早く行動しないと
「なんで早くしないの!」「何やってるの! 早く! って言ってるでしょ!」「早くしないと、おやつあげないわよ」などの言葉で叱るのです。

わたしたち自身、子どものときこのように育てられてきたので、もしかしたらそれ以外の方法があることを知らないからかもしれません。ですが、本当にこのような方法で、子どものグズグズやダラダラは改善されるのでしょうか? そもそも、これは親の都合を優先した対応であって、子どもには理解されないのです。

「なんで早くしないの!」と叱っても効果はありません

子どもが期待通りに行動しないと、「なんで?」と聞きたくなってしまいますが、原因を探ったところで、ほとんどの場合は解決につながりません。アドラー流子育ては、「原因」を探るよりも「目的」を考えます。つまり、子どもがグズグズ・ダラダラする目的を考えてみるのです。

このコラムで何度もお伝えしているように、

人は注目されるところが強化する、とアドラー流では考えます。

良いことも悪いことも、注目されればされるほど、その行動をしてしまうものなのです。子どもの行動の目的。そのほとんどは、親に愛されたい、認めてもらいたい、注目してほしい、無視されたくない、です。無視されるよりは、叱られたい(注目されたい)のです。

グズグズ・ダラダラしている方が親にかまってもらえる

グズグズ・ダラダラしている方が、親の気を引くことができることを、子どもたちは経験を通して学んでいます。だから、それを繰り返すのです。だとしたら、親であるわたしたちはどのように対応すれば良いのでしょうか。

そうです。
「早くしなさい」と命令したり、叱るのではなく、子ども自身が自分の行動を決め、やる気になるような環境づくりをすることが大事です。

子どものこういった行動が繰り返されるのは、親の対応が効果的ではないということを意味しています。いつもとは違う対応をしてみることで、子どもの反応も変わってきます。まずは、イライラする気持ちを深呼吸などでコントロールし、冷静になりましょう。もしかしたら、子どもがグズグズ・ダラダラしていることに過剰に反応しているだけかもしれません。

子どもに勇気を与え続けましょう

まずは、子どもの行動に振り回されないように気をつけたいものです。「同じ土俵で戦わない」ようにするのです。つまり、子どもの態度に感情的に反応せず、一貫した態度を示すことが大切なのです。

例えば、子どもがダラダラと食事をしていたら、
「お母さんは、そろそろ片付けたいんだけど、もうそろそろ食事は終わりにできるかな?」
と提案してみます。

それでも、まだダラダラとしているようなら
「じゃ、お母さんはほかの用事があるから、あとの片付けはよろしくね」と言って、その場を離れてしまうのです。叱る必要など全くありません。

また、親というものは、どこか「親が思うようにできて当然」と思っている節があります。親の目から見れば、決して早く行動しているようには見えないけれど、本人はそれなりに頑張っていることがあるものです。

ほんの少しでも努力していたら、それを見逃さずに、
「今日は頑張ってるね」という言葉をかけてあげましょう。「良いところ探し」をするのです。

わたしたち親ができることは限られていますが、どんなときも子どもへの「勇気づけ」を心がければ、子どもはやがて自分の行動を自分で管理できるようになっていくものです。

関連記事/くやまない、悩まない、自分を責めない――心がラクになるアドラー流子育て

【第31回】大丈夫! 子どもの反抗期は克服できます
シリーズ「くやまない、悩まない、自分を責めない――心がラクになるアドラー流子育て」第1回から第10回まとめ
シリーズ「くやまない、悩まない、自分を責めない――心がラクになるアドラー流子育て」第11回から第20回まとめ
シリーズ「くやまない、悩まない、自分を責めない――心がラクになるアドラー流子育て」第21回から第32回(最終回)まとめ

松井美香(まついみか)

松井美香(まついみか)

松井美香(まついみか)

東京音楽大学ピアノ専攻卒業。「勇気づけの音楽家」。大学卒業後約10年間公立中学校に勤務。その頃偶然、教員研修でアドラー心理学に出会い、岩井俊憲氏の元で学び約25年が経過。自身のピアノ教室や子育てにおいてアドラー心理学を実践する中、子どもたちが音楽や部活動を続けながらも有名大学に続々と合格し夢を叶えている。長男(21歳)と双子(18歳)三人の男子の母。現在、保護者や音楽指導者に向け、執筆やセミナーを通して「勇気づけの指導法」を広める活動をしている。

*学研「おんがく通信」にて、コラム「勇気づけのピアノレッスン」連載中

*学研プラス出版「あなたの想いが届く愛のピアノレッスン」にて、手記「ある教室のささやかなサクセスストーリー」を執筆

松井美香公式ホームページ:

PAGETOP