子どもの健全な成長を蝕む2大害悪/「賢い子ども」の育て方【第7回】
人は何かに没頭することによって成長します。没頭できるものを持っていない人は、そういうものが早く見つかるといいですね。
2014年3月9日、フジテレビの「全力教室」という番組に出ました。
わたしが先生で、15人の芸能人を相手に授業を行いました。
2時間撮影したものを45分くらいに編集して放送します。
今までテレビには10回以上出ていますが、芸能人と接することはほとんどありませんでした。
台本を持っているのはわたしだけで、わたし以外の出演者はこの日のテーマが「教えない教育法」ということしか知らされていません。
うるさいお笑い芸人が暴走したらどうしようと心配しながら、収録に臨みましたが、みんな礼儀正しくて驚きました。
それで彼らは台本に従って騒いでいるだけだということが理解できました。
みなさん、とても真面目でした。
最初のテーマ「学習は本能である」に異論が続出しました。
こんなやりとりがありました。
「うちの子はぜんぜん勉強しません。やれと言ってもちっともやりません。」
「どんな勉強をいやがりますか?」
「宿題とか。」
「宿題はやらなくていいんです。」
会場が騒然としました。
「えー! 宿題やらなくていいんですか?!」
「うちの子、この番組、見てるんですよ。」
「先生はなぜ宿題を出すと思いますか?」
「授業でやりきれない部分があるから。」
「もっと伸びてほしいから。」
「それは言い換えると、授業で学力を高めることができない。学習内容に興味を持たせることもできない――ということです。
つまり、宿題を出す先生は無能なんです!」
会場の空気が凍りつきました。
収録前に制作スタッフからこう言われました。
「先生、何があっても芸能人に負けないでください。思い切り過激にいってください!」
静まりかえった教室内を見渡し、心の中でガッツポーズをしました。
「よし! いい絵が撮れたぞ! 番組を見る人もびっくりするだろうなあ。」
と、放送当日、この場面が映るのをわくわくしながら待ちましたが、結局、使われませんでした。
スタッフも悩んだようです。
「これは面白い! めちゃくちゃ面白い! でも、苦情が来る! めちゃくちゃたくさん来る!」
と苦渋の決断の末、ボツになりました。
さて、長い前ふりになりましたが、宿題は子どもの学習意欲をはぎ取る害悪です。
おいしそうなラーメンが目の前にあるとします。
「おいしそう! 早く食べたい!」
でも、そのおいしそうなラーメンに消しゴムのカスを大量にふりかけられたらどうなるでしょうか?
さっきまでの食欲が一気に失せますよね。
宿題にはそういう魔力があります。
どんなに面白い問題でも、「宿題」という名前がつくと一気にやる気も興味も失せるのです。
だから、宿題はやらなくてもいいのです。
どうしてもやらなくてはいけない場合は登校の30分前に始めましょう。
集中して片づけることができます。
「この宿題、楽しい!」
と言う子はまずいないでしょう。
「今日はこの問題をやってみようかな。」
と自分で選ぶことはとても大切です。
自分で決めたことは頑張れますが、他人に押しつけられたことは頑張れません。
もうひとつの害悪はテストです。
範囲指定のあるテストの勉強をするとき、考える学習より、なんでもかんでも詰め込んでしまう学習(これは学習ではなく、単純作業だと思います。)の方が点数が取れる場合が多いです。
でも、考えずに詰め込む作業を勉強だと思っている人は、はじめて見る問題は解けません。
「この問題、見たことがない。答えの出し方を教えて!」
と質問し、習ったことを理解を伴うことなく、ただ暗記する。
初見の問題が解けない、解くための糸口をさぐろうとさえしない人は、未体験のものに自力で対応することができません。
つまり、自分の人生を切り拓くことができず、だれかがたどったあとをついていくしかありません。
それで、充実した人生になるのでしょうか?
すべてのテストを否定しているわけではありません。
麻布中学の入試問題や算数オリンピックの問題のように、高度で面白い問題を解くことは頭脳開発にとても役立ちます。
でも、頭脳開発のために問題を解くのではなく、面白くて止められないから解くのです。
宿題や範囲指定のあるテストで点数を取るための作業が面白くて止められないということはほとんどないでしょう。
人は何かに没頭することによって成長します。
没頭できるものを持っていない人は、そういうものが早く見つかるといいですね。
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