コミュニティサイトがきっかけの犯罪被害 その1/データで読み解く、子どもとスマホ【第11回】
警察庁の調査資料から、18歳未満の子どもの犯罪被害の状況とスマホとの関係を読み解きます。
今回と次回の2回にわたり、少しおそろしいデータを皆さんにお伝えします。
警察庁が半年ごとに発表している「出会い系サイト及びコミュニティサイトに起因する事犯の現状と対策について」という調査分析資料があります。※1
これは、出会い系サイトやコミュニティサイトがきっかけで犯罪被害にあってしまった18歳未満の児童の数や被害内容などをとりまとめた資料です。数字や内容をみていくと、こんなに多くの子どもが犯罪被害にあっているのか……とがく然としてしまいます。
はじめに、出会い系サイト・コミュニティサイトがきっかけで事件の被害者となった児童の数をみてみます。
平成20年、いわゆる「出会い系サイト規制法」 ※2の改正によって、出会い系サイトでの犯罪被害児童は減少しましたが、コミュニティサイトでの被害は現在も拡大中です。
いまや出会い系サイトがきっかけの犯罪被害児童の数は被害全体のわずか5%程度。犯罪被害の入り口となる割合は、圧倒的にコミュニティサイトが多い状態です。
最新の平成27年データでは、コミュニティサイトの利用がきっかけで犯罪の被害にあった児童は1652人(前年より231人増加)。平成20年以降で最多です。被害の内容の多くが性的なものですが、殺人、強盗、誘拐なども含まれています。子ども本人や保護者の方のことを思うと本当に心が痛みます。
また、コミュニティサイトがきっかけで被害を受けた児童には低年齢層の割合が高く、15歳以下の割合が約5割となっています。
犯罪被害の入り口はSNSとチャット
この資料では、コミュニティサイトを次のように分類しています。
- ミニメール型:面識のない利用者同士がミニメール等により交流するもの(グラフの赤い線)
- チャット型:面識のない利用者同士が1対1のチャットにより交流するもの(グラフの青い線)
- ID交換掲示板:面識のない利用者同士が無料通話アプリのIDを交換することにより交流するもの(グラフの黄色い線)
- 複数交流型:上記以外で広く情報発信や同時に複数の友人等と交流する際に利用されるもの。いわゆるSNSです。(グラフの緑の線)
平成27年に被害児童数が多かったのは2のチャット型と4のSNSです。
2にあげたチャット型コミュニティサイトは、おそらく保護者の皆さんにはなじみがないかと思います。試しに検索サイトで「出会い チャット」といったキーワードで検索してみてください。たくさんのアプリやサイトが表示されることに驚かれるでしょう。なかには、GPS情報を利用して近くにいる相手を探しだすものもあります。利用規約には年齢制限が設けられていますが、児童の側がこれを守らなければ意味がないという側面があります。
4のSNSについてみてみると、SNSが発端となった犯罪被害児童の数が右肩上がりで増えていることがわかります。「友だち」とつながるはずが犯罪加害者ともつながってしまっている現状があります。
やっかいなことに、SNSでは最初は悪意を隠して子どもに近づき、悩みを聞くなどしてかりそめの信頼関係をつくったうえで、しだいに性的な要求(裸の写真を送らせるなど)をしてくる、というような長期型の犯罪もあります。
そしてこれらのコミュニティサイトに子どもたちがアクセスしている端末は、そう、スマホなのです。被害児童の実に9割がスマホからコミュニティサイトにアクセスしていました。
スマホは幅広い情報への入り口ですが、その情報には児童の心身に被害が及ぶようなものも含まれてしまっているのです。
(次回へ続く)
- 「平成27年における出会い系サイト及びコミュニティサイトに起因する事犯の現状と対策について」
- ※2
- 正式名称は「インターネット異性紹介事業を利用して児童を誘引する行為の規制等に関する法律」
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