フィルタリングの抜け穴 中編/データで読み解く、子どもとスマホ【第15回】
続々と発売されるスマホの新製品。新しいものに買い替えたあと、お古のスマホはどうなっていますか? 契約切れスマホ事情を読み解きます。
フィルタリングの抜け穴はゲーム機だけではありません。「契約切れのスマホ」も要注意です。契約切れのスマホについて、内閣府の「青少年のインターネット利用環境実態調査」(平成27年度)※1でみていきましょう。
前回お伝えしたとおり、子どものインターネット接続機器の利用率の1位は「スマートフォン」で、48.7%(利用率とは、単純にその機械を使っている割合のことで、ネット利用とは無関係)。
この「スマートフォン」とは、携帯キャリアと契約しているスマホのことです。そのほかのスマホの利用率は以下のようになっています。
- 携帯電話の契約が切れたスマートフォン 4.9%
- いわゆる格安スマートフォン 1.6%
- 機能限定スマートフォンや子ども向けスマートフォン 1.4%※2
契約切れのスマホ利用率は約5%と多くはありませんが、前年度より1.2ポイント増えています。
小さい子どもがおもちゃのように使っているケースもあります。フィルタリングのしにせ、(株)デジタルアーツの調査では、0歳~9歳の保護者の8.9%が「契約の切れた中古のスマートフォン」を子どもの専用端末として持たせていると答えています。※3
契約切れのスマホ、8割がネットに接続しているが9割がフィルタリングなし
ではフィルタリングはどうなっているのでしょうか。
契約切れのスマホでフィルタリングを「使っている」割合は9.7%。キャリアと契約しているスマホでは41.4%がフィルタリングを使っていますから、かなり開きがありますね。8割がネットに接続していて、フィルタリングなしが9割……というのが契約切れのスマホの使われ方の実態ということになります。
現在はまだ数が多くはありませんが、家族のだれかがスマホを新機種に買い替えると契約切れのスマホが誕生しますので、今後も広がっていくフィルタリングの抜け穴といえるでしょう。
契約切れのスマホ + Wi-Fi = 現役のスマホ
今後広がっていくフィルタリングの穴、といったのにはもう一つ理由があります。
契約切れのスマホであっても、Wi-Fi環境があれば、現役のスマホとほぼ同じように使えます。メールの送受信、サイトの閲覧、アプリの利用だけでなく、メッセージ機能、SNS、IP電話にも利用可能なものがあります。
そしていまやWi-Fiが使えるのは家の中だけではありません。駅やコンビニエンスストア、カフェなどで無料Wi-Fiが使えるところが増えていますし、2020年の東京オリンピックに向けた観光誘致のため、無料Wi-Fiスポットを大量に増やす指針も出ています。
少し前までは事実上家の中でしか使えなかった契約切れのスマホですが、これからはぐっと使える範囲が広がることになります。今後広がっていくフィルタリングの穴といえるでしょう。このような状況で、契約切れのスマホを無防備な状態で放置しておくことは、とても危険なことです。
下取りに出す方がいる一方、データ移行のため、また音楽やYouTubeの専用端末として手もとに残している方も多いのでは? もし家に契約切れのスマホがあるのなら、「大人のお古」の状態で放置するのではなく、「子どもが使うかもしれない新しい端末」として扱い、保護者は十分に対策をしておきましょう。
- ※1
- 平成27年度 青少年のインターネット利用環境実態調査
- 第2節 子供のインターネット接続機器の利用状況(1)(2)(3)
- ※2
- スマートフォンfor ジュニア2(NTTドコモ)、あんしんファミリーケータイ(ソフトバンクモバイル)など、メールの利用を制限できたり、インターネット上のサイトを見ることができない、主に子どもによる使用を想定している携帯電話
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第13回 そのスマホ、フィルタリングはかかっていますか?
第14回 フィルタリングの抜け穴 前編
第16回 フィルタリングの抜け穴 後編
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