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被害児童のフィルタリング利用は1割未満/データで読み解く、子どもとスマホ【第53回】

被害児童のフィルタリング利用は1割未満/データで読み解く、子どもとスマホ【第53回】

データで読み解く、子どもとスマホ【第53回】も、2018年4月に警察庁が発表した資料※1にもとづき、SNSなどをきっかけとした子どもの犯罪被害についてみていきます。

18歳未満のスマホ、フィルタリングは義務

今回も、2018年4月に警察庁が発表した資料※1にもとづき、SNSなどをきっかけとした子どもの犯罪被害についてみていきます。

前回、被害児童(18歳未満)の約9割がSNSへのアクセス手段としてスマホを使っていることをお伝えしました。スマホにおける犯罪被害の予防措置として、真っ先に思い浮かぶのがフィルタリングです。

いわゆる青少年インターネット環境整備法※2により、2009年4月から、18歳未満が携帯電話やスマホを使うときには、携帯キャリア(携帯電話のサービスを提供している会社)は原則としてフィルタリングサービスを提供することが義務づけられています。

さらに2018年2月からは、18歳未満が利用する場合、販売時にフィルタリングの有効化措置をすることが義務づけられました。これによりマニュアルを渡して“ご自分でやってください”という対応はできなくなったと同時に、いわゆる格安スマホでも、フィルタリングの提供が徹底されることになりました。※4

犯罪被害児童、フィルタリング利用率は8.4%

さて、大手キャリアが提供する無償のフィルタリングサービスでは、SNSは小学生・中学生・高校生の各段階で制限されています※3。ですから、SNSをきっかけとした子どもの犯罪被害はある程度フィルタリングで防げたはず。

しかし、残念なことに、犯罪被害児童のほとんどはフィルタリングを使っていませんでした。フィルタリングを使っていなかった児童は9割以上です。

平成29年の調査からは、フィルタリングの利用状況を細かく聞いているのでみてみます。

被害児童のフィルタリングの利用状況

  • 利用あり 8.4%
  • 契約当時から利用なし 84.2%
  • 契約時は利用していたが被害当時には利用なし 7.4%

被害児童全体の8割以上が、スマホの契約当時から、つまりはじめからフィルリングを使っていなかったのです。

フィルタリングが義務化されているのに、わざわざそれをすり抜けたスマホを子どもに使わせ、そしてそのスマホを入り口に子どもが犯罪被害にあってしまった、という図式です。保護者はなぜフィルタリングをかけなかったのでしょうか。

警察庁では、被害児童の保護者に、フィルタリングを利用しなかった理由を聞いています。

【保護者がフィルタリングを利用しなかった理由】
上位3つ(契約当時から利用なし n=1,449)

  • 特に理由はない 58.6%
  • 子供を信用している 17.9%
  • 効果がわからない 5.9%

※複数回答あり

「特に理由がない」が58.6%と飛び抜けて多く、警察庁では“関心の低さ”を指摘しています。

「特に理由はない」が1位というのは、なかなかショックです。さらに、その背景分析が難しく、即応性のある施策がとりにくいため、問題の根が深いと言えるでしょう。より詳細な調査や分析がなされることを待ちたいと思います。

そして保護者には、子どもがどんなふうにスマホを使うと幸せになるのか、その1点についての関心は決して失ってほしくないと切に願います。

フィルタリングは調整可能

何回かこのコーナーでお伝えしているとおり、フィルタリングは、契約時に設定してそのままずっと使うというものではありません。

大手キャリアが提供しているフィルタリングサービス、「あんしんフィルター」では、小学生・中学生・高校生、そしてSNSの閲覧が可能な高校生プラスの各モードがあり、年齢や発達状態に応じた設定ができます。

あとからでも個別に設定を変えられるということを、保護者のみなさんにはぜひ知っておいてほしいと思います。

そして子どもが手に取るスマホには、フィルタリングがかかっていることが「あたりまえ」になるよう、保護者も意識を変えていきましょう。

※1 警察庁 子どもの性被害対策
平成29年におけるSNS等に起因する被害児童の現状と対策について
※2
正式名称は、青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律
※3 大手携帯キャリアのフィルタリング内容(無償)
NTTドコモ あんしんフィルターfor docomo > サービス詳細
au あんしんフィルター for au >サービス詳細
ソフトバンク あんしんフィルター>利用制限されるサイト/アプリカテゴリ

※4 大手キャリアのフィルタリングは無償だが、格安スマホでは会社により有償・無償が異なる
 
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渡邉純子(コドモット)(わたなべじゅんこ) 株式会社コドモット代表取締役社長。

渡邉純子(コドモット)(わたなべじゅんこ) 株式会社コドモット代表取締役社長。

渡邉純子(コドモット)(わたなべじゅんこ) 株式会社コドモット代表取締役社長。

株式会社コドモット代表取締役社長。
NTT在籍時代の2001年、子ども向けポータルサイト「キッズgoo」を立ち上げ、同サイトでデジタルコンテンツグランプリ・エデュテイメント賞受賞。独立後は小学生向けのコンテンツを中心に、企業の子ども向けWebサイトや公共団体の子ども向けツールなどの企画制作を数多く手がける。一男一女の母。

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