全国の港や空港にある税関で関税を取り立てたり、持ちこみ禁止の品物を取りしまったりする。
こんな人にピッタリ!
法律や貿易に関心がある人、正義感・責任感が強い人、観察力がするどい人、外国語が得意な人。
どんな仕事?
輸入品の税金を取り立てて日本の産業を守る
「税関」は、全国の港や空港に置かれている財務省の機関。税関の「税」は「税金」の意味、「関」は交通の要所で人や荷物の行き来を取りしまる「関所」の意味だ。そこで働く税関職員の仕事のひとつは、輸入品に課せられる「関税」と呼ばれる税金を適切・公平に取り立てること。ちなみに関税は、国の収入である国税の約1割になる重要な財源。関税を課した輸入品はその分の価格が上がるので、国産品に対する競争力が下がる。それによって国内産業を守ることが関税の大切な目的だ。また、輸出入者の申告や手続きが正しく行われているか、関税の税率が正しいかなどを確認して税関を通過する許可を与える「通関手続き」も税関職員の仕事。税関を通さずに輸出入すると「密輸」という犯罪になってしまう。そうした保安対策を確保しつつ、通関手続きをよりスムーズに行える方法を考えて実行するのも税関の役目だ。
持ち込み禁止物を検査して日本の安全を守る
税関職員のもうひとつの重要な仕事は、輸出入する品物を検査すること。持ち込み・持ち出しが禁止された品物を見つければ取り上げる。日本国内への持ち込みが禁止されているのは、麻薬などの不正薬物・けん銃・爆発物・化学兵器・病原体・にせ札・有害な図書・コピー商品・国際的に売買が禁止された動物や植物ほか、多数。また、一部の食品(肉類・フルーツ・乳製品など)にも持ち込み制限があり、海外から帰国した日本人や来日した外国人旅行客は、たとえお土産であっても国内へ持ち込むことはできない。また不正薬物などを見つけるために、麻薬探知犬や大型X線検査装置を使って化学的な成分を検査することもある。水際で日本の産業や安全を守る税関職員は、とてもやりがいの大きい仕事だろう。
これがポイント!
税関職員になるには「国家公務員」の「一般職」か「総合職」を目指す
全国に9つある税関は国の行政機関のひとつである財務省に属する組織なので、そこで働く職員は国家公務員。そのため、税関職員になるには国家公務員試験を受験する。1次試験・2次試験・各税関で仕事の説明や面接を受ける「官庁訪問」を経て、最終合格した後で採用が決まる。
税関職員は、検査の現場などで働く「一般職」と、各地の税関をまとめる幹部候補である「総合職」に分かれている。一般職になるには国家公務員一般職試験を受ける必要があり、その受験資格は高校卒業者と大学卒業者。一方、総合職を目指すには国家公務員総合職試験を受ける必要があり、受験資格は大学卒業者と大学院卒業者だ。総合職の官庁訪問先は、各税関ではなく、財務省関税局になる。
国家公務員試験そのものが難関であり、税関も財務省も採用人数が少ないので、倍率が高い。早めに試験勉強を始めるといいだろう。また、税関職員は外国人とコミュニケーションを取らなくてはならないので、英語などの語学をしっかり身に付ける必要がありそうだ。
税関職員とは異なる役目で輸出入に関わる「通関士」もいる
輸出入に関わる仕事には「通関士」もある。しかし、税関職員の主な役割が「申告された内容を判定して通関許可を出す」に対して、通関士の役割は「通関の許可を得るために申告する」ことで、それぞれ異なる。
通関士は、輸出入する人に代わって通関に必要な書類を作ったり、申告の手続きをしたり、通関の仕事を代行する専門家だ。通関士になるには、国(財務省・税関)が行う「通関士試験」に合格して得られる国家資格が必要。受験資格は特になく、誰でも受けることができる。ただし、通関業務の書類は英語で書かれているので、英語力が必要だ。
通関士の多くは、財務大臣の許可を受けた「通関業」と呼ばれる会社のほか、貿易や流通に関わる会社(海運会社・航空会社・運輸会社・倉庫会社・商社など)で働いている。輸出入に関わる会社にとって、通関業務のプロである通関士も欠かせない存在だ。
将来はこうなる
日本を訪れる外国人が増えて、より必要とされる仕事に
日本は、世界の中で有数の貿易大国。自動車や電子部品などの輸出品や原油などの燃料・鉱物資源・食料品・衣類などの輸入品によって経済や生活が支えられている。今後も、輸出入の許可を出す税関の仕事が増えることはあっても、減ることは考えにくいだろう。
また、日本は、国内外の観光客が使うお金で国の経済を支える「観光立国」を目指している。これからも、観光や仕事で日本を訪れる外国人は増えていくだろう。同時に、こっそり危険物や不正薬物などを持ちこもうとする人、うっかり禁止された品物を持ってくる人も増加することが考えられる。それらを港や空港の水際で止める税関職員の仕事は、より重要になるだろう。今後ますます必要とされる仕事と言えそうだ。
データボックス
収入は?
国家公務員全体の平均年収は、約680万円。総合職は、勤務年数によっては平均年収より高めになると言われる。一般職の平均年収は666万円だが、勤務する税関と勤務年数によって異なる。
休暇は?
基本的に週休2日制。港や空港で旅客の荷物検査などを行う当直勤務の場合は、週によって休む曜日が不規則に変わる「4週8休」で交代する。
職場は?
一般職は、全国9か所の税関、68か所の支署、80か所の支署出張所、25か所の出張所などで事務や検査の業務を行う。総合職は、財務省関税局、各地の税関、各国の日本大使館、国際機関などで働く。また、公務員は2~3年で別の部署に異動する。総合職は各地の税関や各国の日本大使館などを異動するが、一般職は各税関が担当する区域内を異動する。
なるためチャート
税関職員の仕事につくための主なルートが一目で分かるチャートだよ!
役立つ資格
税関職員の仕事につくために役立つ資格を紹介しているよ。
TOEFL(R)
TOEIC(R)
実用英語技能検定(英検(R))