すぐに答えを求めない子に ‐イグ・ノーベル賞の伝道師にきく「不思議がる学び」の育み方‐
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笑えるけれど実は奥が深い研究に贈られる「イグ・ノーベル賞」。立教大学特任准教授として、科学の面白さや科学技術を伝える「サイエンスコミュニケーション」を教える古澤輝由先生は、イグ・ノーベル賞の解説や展示監修に取り組む「イグおじさん」としても知られています。ものごとを面白がりながら考える——イグ・ノーベル賞の研究に通じるような「学び」には何が必要か、語っていただきました。
”面白い!”を突き詰めるイグ・ノーベル賞は子どもたちに必要な発見力に
イグ・ノーベル賞は、人を笑わせるようなものでありながら、独創的で考えさせる研究に与えられる賞です。一見ユーモラスに見える研究もありますが、決してふざけているのではなく、極めてまじめな科学研究です。
私はそんなイグ・ノーベル賞の面白さを広く伝える活動について、広く分かりやすく伝える活動に携わっています。
大学卒業後は高校の生物教員として勤めたり、青年海外協力隊で過ごしたアフリカのマラウイ共和国では、科学に興味を持ってもらおうと、科学実験を組み込んだ劇団を作ってマラウイ国内を回ったりしました。
そうした経験を経て、イグ・ノーベル賞の運営にも関わるようになり、また、サイエンス・コミュニケーターとして科学の面白さを伝える活動を続けています。
自分が興味を持ち面白いと思ったことを真摯に突き詰めた先に発見がある。イグ・ノーベル賞的な考え方は、子どもが成長するうえでとても大切だと考えています。

我が子の深い問いに、親がすぐに答えを出さなくていい理由
小さいころは感受性が強くて、泣き虫でした。悲しいことだけではなく、特定の音楽を聴いては泣き、特定の道を通っては泣く。喜怒哀楽がすべて涙となって出てくるような子どもでした。小学校に上がると今度は考えることに熱中しました。「なんで人間は生きているんだろう」といったことを考え込むと、眠れなくなってしまうんです。
母はそんな悶々と悩んでいる私をあたたかく見守ってくれましたが、でもある時、「もう生きちゃってるんだから、しょうがないのよ」と言ったのです。
その言葉で、その意義を探し続けても仕方がないのかもしれない、と肩の力が抜けました。自分が今いる地点から考えてみようと、視界がぱっと開けた記憶があります。
子ども時代で心に残っているのは、横浜こども科学館(はまぎん こども宇宙科学館)に連れていってもらったときの体験です。展示やワークショップなどがすごく充実していて、衝撃を受けました。
車輪を持って回転いすに座り、車輪を回して傾けると、回転いすが自然と動いていく体験(ジャイロ効果)なんかを鮮明に覚えています。いまでは多くの施設に同じようなものがあると思いますが、見えない力の不思議さを実感できました。
横浜こども科学館での体験は、「身近にあふれる科学の楽しさ」を教えてくれました。自分の中にある様々な興味を引き出してくれて、のちのち、アフリカでの活動やイグ・ノーベル賞への関心など、私自身の科学に対する興味の土台になったと思っています。
知識が多方面に広がることが思いがけない「出会い」に
私の子ども時代は、今のようにインターネットのない時代だったので、疑問に思ったことは親や先生に聞いたり、図書館に行って辞典や図鑑で調べたりしました。
「これを知りたいならこういう調べ方がある」という選択肢も今ほどありませんでした。だから自分の気になったところは本で調べて、多方面に幅広くインプットする、というやり方でした。

その分、いろいろな情報が入ってくるのでどんどん興味関心が広がっていったのですが、それがかえってよかったのではないかと思います。いろんな本を読んで様々なことを広く知ることができたからです。
本をぱらぱらめくることで、目的外の知識が目に飛び込んでくる「偶然の発見や出会い」、これがとても重要だと感じています。
今は自分の知りたいことを検索していると次々と「おすすめ」が出てきますが、その分思いがけない出会いは減っているのかもしれませんね。
「安全な枠」のなかで、子どもに無理をさせる重要性
中学受験では国立大の附属中を受けたのですが、学力テストは受かったものの二次の抽選で外れるという経験をしました。受験など、子ども時代はそんな挫折や失敗がつきものです。
高校は地元の公立伝統校に進学しました。伝統行事として、夜通し歩いて105キロを踏破する「強行遠足」が毎年あるんです。
3年間完歩しました。この行事で、「誰かが見守るなかで無理をする」という経験が、自分を成長させたと思っています。
失敗しても、誰かが見守ってくれているという安心感は非常に大きかったです。
自分のキャパシティーが分かったことも大きかった。研究や日々の活動の中で、どこまで無理が利いて、この辺までだったら大丈夫、という目安がわかるようになったんです。その意味でとても意義のある経験でした。
親も、安全な枠の中で子どもが無理をしたり失敗や挫折したりするのを見守ることが大切なのではないかと思います。
答えが出ないと不安?AI時代を生き抜く学び方
今はネットやAIなどが、疑問に対してすぐに答えを出してくれる時代。子どもたちもそれに慣れてしまっているように感じます。
探究学習が重視される時代にもなっていますが、大学で学生たちを見ていると、答えがすぐに出ないことをすごく不安がっているように感じます。
でも、子どもにとって大事なのは、すぐに答えは出ないことに対して面白がったり不思議に思ったりすること。「これをもっと知りたい」と追求する体験です。
子どものころ、偉人の漫画伝記シリーズに没頭しました。本の巻末に書かれていたクイズを親と一緒に解いたりするのがすごく好きでした。遊びと学びが一緒になったようなもので、これもイグ・ノーベル賞について関心を持つようになった今につながっていると感じています。

イグ・ノーベル賞受賞者たちも、周囲の目を気にせず自分自身の問いを突き詰めた人たちです。
子どもが何かに疑問を持ち、親に尋ねてきたとき、すぐに答えを与えるのではなく、一緒に考えて楽しむことが、子どもの「学ぶ力」を育てるなかでとても重要なのではないでしょうか。
そして、自分が納得できる答えを出せるかどうか。それを親も一緒になって考えることがとても大事です。
興味を持つ分野は科学であってもそれ以外でもいい。大切なのは、自分が納得できる答えを出せるようなマインドを、子どもと一緒になって育むこと。そう感じています。
【韓国でシリーズ累計10万部突破】なぜ?を楽しく、でも本気で考えるイグ・ノーベル賞の世界!
世界には、奇想天外な研究がたくさん! 「巨大なゾウと小さなネコ、おしっこにかかる時間は同じ?!」など、イグ・ノーベル賞を受賞した、変だけど実はまじめな研究をおもしろおかしく紹介しています。
韓国でシリーズ累計10万部を突破した人気シリーズが日本語版として発売。古澤先生が監修をつとめています。

『おかしいけど科学です 1巻 身の回りの楽しい物理 犬はどっち向きでうんちをする?』
- 発売日2026年02月19日
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- 判型A5
- ページ数96頁
- ISBN978-4-05-206230-8

『おかしいけど科学です 2巻 身の回りの楽しい化学 足のにおいの正体をつきとめろ!』
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取材・文/芳垣文子 編集/高須賀里緒菜(キッズネット)











