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お小遣い制度はメリットだらけ!子どもの金銭感覚を育む渡し方【FPが解説】

お小遣い制度はメリットだらけ!子どもの金銭感覚を育む渡し方【FPが解説】

家庭における一番身近なマネー教育が「お小遣い」。何歳から渡すべき? いくらが妥当なの? など気になることは尽きません。

「お小遣い制度は、子どもにとってメリットばかり。ぜひ導入することをおすすめします」と語るのは子どものマネー教育に詳しいファイナンシャルプランナーの八木陽子さん。

お小遣いで身につく力や上手な活用法について教えてもらいました。

将来にも役立つ! お小遣いを通して身につく「5つの力」

「自分でお金を払って買い物体験をしたり、何を買うか使い道を考えたりすることができるお小遣い制度は、子どもがこれから社会を生き抜いていくために必要なたくさんの力が身につきます。

まずは『計算力』。買い物中の合計金額や、お小遣いの残り金額を計算するなど、自然と足し算引き算に触れることができます。お小遣い帳をつけると、あとから振り返ることができるのでおすすめです。

計算のイメージ

2つ目は、『コミュニケーション力』。買い物をするときのお店の人とやりとりは、家族や友だち以外の普段接しない人たちとの会話の練習にもなります。

3つ目は、コミュニケーション力にも繋がる『交渉力』。お小遣いが足りない、あれもこれも欲しいというとき、親に相談したり交渉したりすることも必要ですよね。

4つ目は、『計画力』。次のお小遣いをもらうまでの間、どう計画的に使っていくかは子ども自身にかかっています。たとえば、1回のお小遣いでは手が届かないものが欲しい場合は、節約して貯める選択肢も考える必要があります。

最後に『判断力』。私はこれがもっとも大切な力だと考えます。限られたお小遣いの金額でやりくりするには、これまでは親にねだって買ってもらっていたものも、残りの金額や状況などさまざまな観点で考えて、自分の判断で買う・買わないを決めなくてはいけません。

たとえば、お友だちへ誕生日プレゼントを贈るとき、手作りにするのか既製品にするのか。手作りにするなら、材料にはこだわって、ラッピングは100円ショップのもので工夫しよう、とかね。決まった予算内で、子どもは取捨選択しながら知恵や工夫をこらすものですから。

ここで挙げた5つの力は、ビジネスにおいても重要なことではないでしょうか。その練習がお小遣いを通して体験できるんです」(八木さん)

子どもに「任せる」ことで生まれる“学び”

親としては、渡したお小遣いを子どもがどう使うか気になるものですが、いざお小遣いをあげると決めたら、使い方や管理方法などに口を出さず、思い切って子どもにすべて任せてしまったほうがいいと八木さん。

じつは、実際に八木さんがお子さんにお小遣いの使い道を任せたところ、こんな出来事があったそうです。

夏祭りのイメージ

「以前、お祭りのガラガラ(抽選)で、連続して1等、2等が出続ける光景を見た娘が、『ここはよく当たる! 私も欲しい!』と張り切って列に並びました。

でも、実際にやってみるとまったく当たらない(笑)。諦めきれず、もう1回もう1回……と、ついに1か月のお小遣いを全額使い果たしてしまいました。

私としては、1等2等が続けて出てしまっているんだから、その後当たらない確率の方が高いだろうなと思ったのですが、あえて止めず、本人が納得するまでやらせてみたんです。

結局、お小遣いを使い果たした娘は大泣きをしてしまって、ちょっとかわいそうでしたが、手痛い経験をしたからこそ、それ以降は『1回でやめておこう』とか、『そもそも絶対に当たるわけではないガラガラにお小遣いを使うのはどうか』とか、一度立ち止まって考えられるようになりました。失敗を通して、大切なことを学んだんですね。

そんな経験が500円や1000円でできるのは、子どもの時期ならでは。お金が減っていく感覚も身をもってわかりますし、お小遣いのありがたみ、お金の重みも実感できます」(八木さん)

金額は? 渡し方は? わが子にピッタリのお小遣いの決め方

お小遣いには、毎月の金額を設定する定額制と、お手伝いなどをしたら渡す報酬制があると八木さん。どちらの方法を選ぶかどうかや金額などは、各家庭の方針で決めていいといいます。

貯金箱

「大切にしてほしいのは、親子で話し合いながら、

・自分のために使うお金
・人のために使うお金
・貯めるお金

の3つのポイントで考えていくこと。先にざっくりした使い道を決めておくことが重要です。

話し合って決めたことをまとめておくことができる『おこづかい契約書』をつくると、迷いがちなお小遣いの金額もスムーズに決めることができます」(八木さん)

『マンガで覚える 図解 おこづかいの基本』(八木陽子著/つちや書店)
出典:『マンガで覚える 図解 おこづかいの基本』(八木陽子著/つちや書店)

「具体的なステップとしては、まず、定額制にするか報酬制にするか決めたあと、先ほどお伝えした3つのポイントで考えた使い道に応じて、1か月のお小遣いの金額を決定しましょう。

定額制の場合はその金額を渡せばいいのですが、報酬制の場合は、1か月の金額をもとに、お手伝い1回あたりの金額を考える必要があります。目安の金額に届くようにお手伝いの種類を増やすなどして調整するのもいいですね。

また、お誕生日や長期休みにおじいちゃんおばあちゃんからお小遣いをもらうなど、臨時収入がある月もあるはず。

その場合、すべてを貯金するのか、いくらまではお小遣いと一緒に使ってもいいのかなども決めておくと、お金の出入りや使い道を意識するようになるので、なんとなく使い切ってしまった、という事態を防げるはずです」(八木さん)

渡し方の工夫で「物を大切にする心」も育つ

ほかにも、「子どもが消しゴムや鉛筆をすぐになくして困っている」というよくある困りごとも、お小遣い制度をうまく導入することで解決する渡し方があると言います。

「お小遣いの渡し方を決めるとき、ぜひ学校で必要な文房具を買う分も加味した金額にしてみてください。

なくしてしまうとお小遣いから買わなくてはいけない。だからこそ、子どもの意識が変わって、名前を書いて大切に扱うようになるんです。

さらには、前日の夜に『国語のノートが残り1ページだから今日中に買ってきて』などと言われて親が慌てて買いに走ることもなくなります(笑)。

自分で購入すると決まっていれば、早めに購入しておくなど先を見通す力や、管理をするための判断力が身につくんですね。

もちろん、いきなりお小遣いを導入するには準備ができていない……という場合は、お年玉から少しずつ使ってみたり、夏のお祭りのときにいくらか渡したりといったことからスタートしてもOK。ご家庭やお子さんに合った方法でチャレンジしてみてはいかがでしょうか」(八木さん)

 

取材・文/水谷映美 編集/石橋沙織

八木 陽子(やぎ ようこ)さん

八木 陽子(やぎ ようこ)さん

八木 陽子(やぎ ようこ)さん

キッズ・マネー・ステーション代表。出版社勤務を経て独立。2001年にファイナンシャルプランナーの資格を取得し、さまざまなマネー記事の執筆やプロデュース、セミナーなどを行う。2017年、文部科学省検定の高等学校の家庭科の教科書にファイナンシャルプランナーとして初めて掲載される。『6歳からのお金入門』『10歳から知っておきたいお金の心得』など著書多数。

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