11月はおうし座流星群と、しし座流星群の季節。2022年は11月12日ごろがおうし座流星群の、11月18日ごろがしし座流星群のピークです。でも、天気に恵まれなかったり、街頭やビルの照明などでなかなか見えにくかったりするので、流れ星を見つけるのは至難の業。ましてや、一瞬で消える流れ星に向かって願い事を3回繰り返すなんて、夢のまた夢です。いま、この流れ星を人工的に流そうとしているプロジェクトがあるのをしっていますか。
長く光る、カラフルに光る
株式会社ALEという会社は、2011年から人工流れ星の実現に向けて着々とプロジェクトを進めています。
天然の流れ星は、宇宙空間に漂うチリや小さい石などが、地球の大気圏に突入するときに燃えて光ったものです。
では、人工流れ星は、どうやって流すのでしょうか。
人工流れ星は、人工衛星を高度400kmほどのところにまで打ち上げ、金属をベースにした直径1cmほどの球体の「人工流れ星のもと」を外に放出して、大気圏に突入させます。
©2022 ALE Co., Ltd.
「本当にそんなことできるの?」と疑問に思うかもしれませんが、地球上での実験を繰り返して「十分に技術的に可能だ」ということがわかったので、人工流れ星のもとを詰め込んだ人工衛星を打ち上げるところまで進みました。次は宇宙空間で実際に人工流れ星のもとを放出して、ちゃんと光るかどうか実験する予定です。
天然の流れ星と人工流れ星は見た目など違うところはあるのでしょうか。
まず、人工流れ星は光っている長さが少し長くなります。天然だと1秒ほどしか光りませんが、人工は数秒は光るため、短い言葉なら願い事を3回唱えることができるかもしれません。また、人工流れ星では花火と同じ仕組みを使って色のついた流れ星を流すこともできます。将来はカラフルな人工流れ星が空を彩る日が来るかもしれません。
ALEによると、イベントの演出や、オーロラのような観光の目玉として実際に人工流れ星を流すことを考えており、今はおもに世界中の政府観光局に向けて「人工流れ星を流してみませんか?」と提案を行っているところだそうです。
大気の観測にも役立つ
実は、人工流れ星が実現すると、「きれい」「空を眺めるのが楽しくなる」以外にもいいことがあります。
人工流れ星が流れる地上60~80kmという高度は、大気圏のなかでもちょうど成層圏の上にある中間圏と呼ばれる場所です。ここは地上からも気象衛星からも観測することが難しく、今まで大気の様子が明らかになっていませんでした。しかし、流れ星を流せばこの高度の大気のデータが取れる可能性があります。そうすれば、今後は台風や豪雨などの災害をもたらす気象現象のしくみをもっと明らかにすることができるかもしれません。
人工流れ星は2024年の実現を目指しています。あともう少しで空に流れるのだと思うと、ワクワクしますね!
ALE最高経営責任者(CEO)岡島礼奈さんからのメッセージ
私が大学で天文学を学んでいた時、まわりからはさんざん「天文学は何の役に立つの?」と言われてきました。人工流れ星事業を始めたのは、「私のような科学者ではない人間が、天文学のような基礎科学を応援したい」と思ったことがきっかけです。もし、人工流れ星が実現できれば、たくさんの人が宇宙に興味を持ってくれて、科学への貢献にもつながると考えました。私はたった一人でALEという会社を立ち上げ、人工流れ星のプロジェクトを進めてきました。今は約30人の仲間に恵まれ、実現まであともう少しです。みんなには、「科学ってすごく楽しいよ。ワクワクする好奇心を大切にして、なんでもトライしてね」と伝えたいです。
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