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先生に反抗して、宿題をしない息子/教えて! 陰山先生【第8回】

先生に反抗して、宿題をしない息子/教えて! 陰山先生【第8回】

小5の息子が先生への反抗心から、宿題をしなくて困っています。先生と仲良くというのは無理かもしれませんが、せめて、宿題をしていくようにさせるにはどうしたらいいでしょうか?

質問

小5の息子が先生への反抗心から、宿題をしなくて困っています。

もともと勉強が好きではない息子ですが、4年生までは宿題くらいはやっていました。最初はわたしが仕事で日中家にいないから、それをいいことに遊んでばかりいて、宿題をしないのかと思っていました。

でも、このままではいけないと思い、息子に
「なんで宿題をやらないの?」と聞くと
「やりたくないから」
「先生に怒られるでしょ?」
「怒られるけど気にしない。だって、先生嫌いだもん」
と、言うのです。

担任の先生は、40代後半の男性です。

保護者には低姿勢で、ソフトな印象がありますが、子どもたちの前では威張っていて、成績の悪い子にはきついことも言うようで、息子はそういうところが許せず、反抗して宿題をやらないようです。

ただ、宿題をやりたくなくて、先生のせいにしているのではないかとも思いましたが、
「○○君(息子と一番の仲良し)が、先生からかなりキツイことを言われているのをそばで見ていて、とても腹が立った」と話す息子の表情から、本当に息子は先生が嫌いなのだと思いました。

他にも先生を嫌っている生徒はいるようですが、徹底して反抗しているのは、息子くらいです。授業はおとなしく聞いているようですが、宿題をしないことで、抗議をしているつもりのようです。

ここまでこじらせてしまうと、先生と仲良くというのは無理かもしれませんが、せめて、宿題をしていくようにさせるにはどうしたらいいでしょうか?

回答

高校時代の知人に、英語教師に反抗して英語の授業を受けない人がいました。当然ですが、彼は大学入試をすべて失敗しました。その英語教師から見れば、「問題のある生徒が学習をせず、大学に合格しなかった」ということで終わってしまいます。

つまり宿題をしなくても、教師にその子への批判の口実を与えるだけで、教師の側はなにも困らないのです。そういう点でも、宿題をしないのは決してよいことではないことを、まずは教えてあげてください。

そして、その先生に指導上の問題があるのなら、子どもから十分に聞きとってあげてください。がまんを強制する必要はないでしょう。子どもの不満は不満として素直に受け止め、それが適切なものなのかは、親しい保護者にも問い合わせてみてください。

それでもやはり問題点が多いと感じるなら、学校に連絡するなり、直接担任に話すなり、状況に応じた改善を求めてもいいでしょう。その行動は、子どもにとっては1つの安心材料となり、宿題をしない理由をなくすことにもつながっていきます。

わたしたちが実社会に出て生きていくとき、自分にとって好ましい上司や同僚、あるいは地域の人ばかりと生活ができるでしょうか?

友人であっても、少し距離を置きたいと感じる人もいるでしょう。それを考えれば、答えは明らかです。実社会は、自分と考え方が合わない人と、いかにトラブルなく過ごしていけるかという場でもあります。

先生のことを嫌っている子も何人かいるようですが、そのような友だちばかりが周囲にいるのではないでしょうか。その先生が本当に不適切な対応ばかりしているのなら、周囲の仲のよい友だちだけではなく、その他多くの子どもたちも、その先生を嫌っているでしょう。

そして、すべての子どもたちから反発を受ける教師の学級は、間違いなく崩壊現象を起こします。そこまでいっていないのなら、たとえ嫌いなところがあっても、その気持ちはその気持ちで持ちつつ、自分のやるべきことはやっている友だちもきっといるはずなのです。実際に、その嫌いな先生との衝突を避けながら勉強し、高成績を出している子もいると思います。

このように、評価していない先生のもとで学んでいたとしても、その中からどのように学んでいくべきかを考えさせてほしいのです。

自分が学ぶということと、先生が嫌いであることは、本来次元の違う話であり、宿題をしないのは、結局は自分自身の学校生活や将来を傷つけているのだと、教えてあげる必要があるでしょう。あるいは、宿題をしないことは抗議でも何でもなく、そのような先生から逃げていると言ってもいいでしょう。なにより宿題をしないということのマイナスの影響を軽く見ていることが、とても心配です。影響は非常に大きいのです。

小学校5年生は、分数計算やこみ入った漢字学習など、中学、高校以降の学習につながっていく、もっとも重要な学習が連続して出てくる学年です。たとえ、宿題が適切なものでなかったとしても、それをしないという選択肢は学習上あってはならないことです。

先生の評価と自分自身の学習に対する姿勢を混同してしまい、今自分にとって何がもっとも大切なのかを見失っているところが不安です。

問題は、先生と仲良くするかどうかではありません。人間社会は、好き嫌いだけではなく、さまざまな人と交流していくものです。

こうした基本を土台に据えながら、それを1つ1つほぐしてあげることで学習上の問題と先生との距離感をきちんと学べるように、家庭でも応援してあげてください。

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陰山英男(かげやまひでお)

陰山英男(かげやまひでお)

陰山英男(かげやまひでお)

1958年兵庫県生まれ。岡山大学法学部卒。
兵庫県朝来町立(現朝来市立)山口小学校教師時代から、反復学習や規則正しい生活習慣の定着で基礎学力の向上を目指す「隂山メソッド」を確立し、脚光を浴びる。
2003年4月尾道市立土堂小学校校長に全国公募により就任。百ます計算や漢字練習の反復学習を続け基礎学力の向上に取り組む一方、そろばん指導やICT機器の活用など新旧を問わず積極的に導入する教育法によって子どもたちの学力向上を実現している。近年は、ネットなどを使った個別の小学生英語など、グローバル人材の育成に向けて提案や実践などに取り組んでいる。
2006年4月から立命館大学 教授(立命館小学校副校長 兼任)に就任。現在は、立命館大学 教育開発推進機構 教授(立命館小学校校長顧問 兼任) 。全国各地で学力向上アドバイザーなどにも就任し、学力向上で成果をあげている。また、北は北海道,南は沖縄まで、全国各地で講演会を実施している。
過去には、文部科学省 中央教育審議会教育課程部会委員,内閣官房 教育再生会議委員,大阪府教育委員会委員長などを歴任。
著書多数。
Webサイト http://kageyamahideo.com/

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