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宿題の間違いを指摘しても聞かない小2の娘/教えて! 陰山先生【第33回】

宿題の間違いを指摘しても聞かない小2の娘/教えて! 陰山先生【第33回】

小2の娘の宿題のことで困っています。娘が「宿題が分からないので教えてほしい」というので教えると「先生が言ったんだからこれでいいの!」といって、それが明らかに間違っていても聞く耳を持たない状態です。

質問

小2の娘の宿題のことで困っています。

娘が「宿題が分からないので教えてほしい」というので教えると
「先生が言ったんだからこれでいいの!」といって、
それが明らかに間違っていても聞く耳を持たない状態です。

たとえば、昨日の宿題の内容は、
〈最初に計算するほうをカッコでくくる〉というもの。
その中のひとつはこんな感じの問題でした。

27+20+10=

この問題を娘は、最初に数字を分解しようとしたので、
「それは分解する意味ないよと」教えても、
「違う! それでは先生に怒られる!」と言います。
でも、途中で「分解する問題」ではなく
「最初に足すほうにカッコをつける問題」ということに気がつき、

(27+20)+10=

と前のほうの数字にカッコをつけていました。

「後ろの方の数字につけた方が簡単だよ?」と言うと、
意地を張っているのか「いいの!」と言って、
その後の問題もすべて前のほうの数字にカッコをつけていました。
たぶん、〈最初に足す方〉の意味を
「足し算の最初に書いてある方(の数字にカッコをつける)」だと
勘違いしたのだと思います。

こんな風に、親がアドバイスをしても
聞いてもらえない場合は、どうしたら良いのでしょうか。

回答

こういう事例は一般的によくあることですね。
実はわが家でも学校の宿題について、わたしが助言しようとすると子どもが「先生の言ってることと違うから」、といって助言を受けつけなかったことがありました。
「お父さんの指導の方が絶対正しいよ」と言っても、「これでいい」と言い張ります。そのとき、わたしは「あ、そう」と言ってそのままにしておきました。
なぜなら、そのことによって子どもが先生のことを信頼しているのがわかったからです。

自分で間違いに気づく体験をさせましょう

たとえば、親の方から「先生のやり方が違う」と言うのは、先生に対する不信を親が持っているということを子どもに伝えてしまうことになるので、あまり望ましいことにもなりません。また、先生の指導を子どもが間違って受け取っているのならば、学校に行き学習をするなかでその間違いに気がつくはずです。その「自分で気がつく」という体験の方が、意味があると思います。

学習において、間違いというのは日常的に起きてきます。それがどのような形で修正されてくるかというのは大事な問題です。
今回の場合は、おそらくお子さんの理解が間違っていると感じられます。しかし、学校で答え合わせをするなかで、お母さんの指摘が正しかったということを自然に知るでしょうから、それでいいのではないかと思います。どうしても親の方は心配をし、いつも正しく答えてほしいと願いがちですが、むしろどんな間違いをし、それがなぜ違うのか、どう修正すればよいのかということを知ることはもっと重要です。

なぜならば、子どもたちは今後も数多くの間違いをしていくことになるからです。それを自分や先生との学習のなかで、自然に修正していくことがもっとも望ましいのです。

今回の場合には、その日は「お母さんの言ったことが正しいんだけどな」、と言うくらいにしておいて、翌日「どうだった?」と聞いてみてもいいでしょう。お子さんは「お母さんの方が正しかったみたい」と、言うかもしれません。そのときには「やっぱりね」と言わずに、「自分で間違いがわかったのなら、よかったね」と、ポジティブな言葉をかけるのが良いでしょう。

「先生への信頼」が、学習の基盤になる

一般的にはこのように、自然な形で対応すればいいのですが、ごくまれに明らかに先生の指導が間違っているというような場合もあります。そのことで子どもの表情が暗く、神経質になるようなときには、いくつかの事例を確認しながら、機会をみて担任の先生に適切な指導をお願いされるというのもひとつの方法です。
わたしの同業者である教師の問題点を指摘するのは、正直気が重いのですが、わたし自身の子育てのなかにも、そういう事例はわずかですがありました。

この場合に注意してほしいのは、子どもの前では学校の先生に対する批判を控えるということです。なぜなら、子どもというのは先生への信頼を基盤として学習を進めていくものだからです。当然、その土台には、保護者が教師を信頼しているということが必要です。

今回の質問の内容を見て気になったのは、ひょっとしたら「お母さんの、先生に対する信頼感が弱く、だからこそお子さんの宿題のことを気にされたのかもしれない」ということでした。

もし、明らかに先生の間違った指導や、子どもに伝わりにくい言い方が原因でお子さんが誤った理解をしていると思われるような場合は、似たようなことが何度も起きることがないように、子どもたちの学習状況に注意しながら先生の指導方法にも気を配る必要が出てきます。

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陰山英男(かげやまひでお)

陰山英男(かげやまひでお)

陰山英男(かげやまひでお)

1958年兵庫県生まれ。岡山大学法学部卒。
兵庫県朝来町立(現朝来市立)山口小学校教師時代から、反復学習や規則正しい生活習慣の定着で基礎学力の向上を目指す「隂山メソッド」を確立し、脚光を浴びる。
2003年4月尾道市立土堂小学校校長に全国公募により就任。百ます計算や漢字練習の反復学習を続け基礎学力の向上に取り組む一方、そろばん指導やICT機器の活用など新旧を問わず積極的に導入する教育法によって子どもたちの学力向上を実現している。近年は、ネットなどを使った個別の小学生英語など、グローバル人材の育成に向けて提案や実践などに取り組んでいる。
2006年4月から立命館大学 教授(立命館小学校副校長 兼任)に就任。現在は、立命館大学 教育開発推進機構 教授(立命館小学校校長顧問 兼任) 。全国各地で学力向上アドバイザーなどにも就任し、学力向上で成果をあげている。また、北は北海道,南は沖縄まで、全国各地で講演会を実施している。
過去には、文部科学省 中央教育審議会教育課程部会委員,内閣官房 教育再生会議委員,大阪府教育委員会委員長などを歴任。
著書多数。
Webサイト http://kageyamahideo.com/

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