子どもが伸びる親力

直接子どもを変えることはできない。親が変われば子どもも変わる

直接子どもを変えることはできない。親が変われば子どもも変わる

まず自分を変えて、それによって間接的に相手に良い影響を及ぼす

私はただ今58歳です。
今までそれなりにいろいろな人と接してきました。
家族、友人、仕事の上司・同僚・部下…。

教師生活で担任として教えた子どもの数は650人です。
その親たちはそれ以上の数です。
その他にもいろいろな人間関係を経験してきました。

そんな中で1つわかったことは、人を変えることはできないということです。
変えることができるのは自分だけです。
それも簡単なことではありませんが、自分なら変えられる可能性があります。
変える権利も自由もあります。

自分がよりよく変われば、その影響によって、相手も変わってくれるかも知れません。相手を直接的に変えるのではなく、まず自分を変えて、それによって間接的に相手に良い影響を及ぼす、この道しかありません。

相手を変えようとするのは自分が正しいと思っているから

直接、相手を変えようとすると必ず失敗します。
なぜなら、叱ることが増えるからです。
相手をとがめ、今のあなたではいけないと否定し、自分が正しいと主張するようになるのです。

これらの行為は、相手にとっては受け入れがたいものであり、とてつもなく不快なことです。相手は素直に受け入れてくれるはずがなく、逆に反発してきます。

あなただって、誰か他人に無理矢理変わるように迫られたら嫌なはずです。
自分がされて嫌なことは人にもしてはいけません。
これは人間関係における基本原則の一つです。

あなたは、自分が正しいと思っているから相手を変えようとするのです。
それがそもそも僭越なことです。
あなたが正しいとは限らないのです。

発達段階のステップを踏むということ

例えば、今あなたの目の前にいる子どもは、ぼうっとしていることが多くてだらだらしているかも知れません。
マイペースで行動が遅いかも知れません。

自分がやりたいことばかりやって、やるべきこと、つまり親がやって欲しいことをやろうとしないかも知れません。

勉強よりも遊びに夢中かも知れません。

でも、それは今のその子に必要な状態なのです。
発達段階のステップを踏んでいるのであって、今はそういう状態でじっくり時間をかけて、土台を踏み固める必要があるのです。

発達のプログラムは生まれもったものであり、どの子もみんな人それぞれ違っています。

身体の成長を見てみればわかります。
ずっと身体が小さかった子が、ある時期に一気にぐんと大きくなることがあります。
身体が小さい状態でいるとき、実は次に伸びるための準備をしていたのです。
その準備は人間には認識できません。
なぜなら、外から見たら何の変化もないからです。

外から見たら何の変化もなくても、着実に準備は進んでいるのです。
そして、そのときが来れば一気に表面化します。

親にできることは、美味しくて栄養のある食事を取ったり適切な運動などができたりするように、よい環境を整えることです。

後は待つだけです。

無理に頭と足を引っ張って伸ばす親はいない

これは身体のことだけではなく、人間の内面的な成長、つまり心と頭の成長についても言えることです。

ぼうっとしている子、ダラダラしている子、マイペースな子、やりたいことしかやらない子、やるべきことをやらない子、みんな今はそういう状態でいる必要があるのです。

身体が小さいからといって、無理に頭と足を引っ張って伸ばす親はいません。
そんなことをすれば、身体がおかしくなってしまい成長のペースを乱すだけです。

でも、内面的なことだと、このような無理なことを親たちは平気でやっています。
子どもをいたずらに叱り、とがめ、今のあなたではいけないと否定しています。

それで、子どもは自分に自信が持てなくなり、何事も自分にはできそうだと思えなくなり、結局はよけいにできなくなります。
親の愛情を疑うようにもなり、精神的に不安定になり成長のペースが乱れます。

ですから、親であるあなたが「自分は正しい。子どもは間違っている」などと考えるのは僭越なことなのです。

合理的な工夫と言葉の工夫が大事

もちろん、親としてできることはしてあげてください。
子どもが苦手なことがあるなら、やりやすいように合理的な工夫をしてあげてください。
子どもがやる気の出るような言葉も工夫してあげてください。

ちょっとでもできたらほめて、自信をつけてあげましょう。
そして、様子を見ながら少しずつ手を離していきます。
もちろんこれも大事で、子どもができることまでやってあげると、これもまた成長のペースを乱すことにつながります。

工夫してもできないときは、一緒にやってあげたり、大いに手伝ったりしてあげてください。それが自立を妨げるなどということはありませんから、やってあげて大丈夫です。

とにかく大事なのは、子どもを否定的に叱ったりとがめたりするのは一切やめるということです。こういうことをしていると真の自立が妨げられるからです。

必要なのは北風でなく太陽

このようにしながら、待ってあげてください。
親にできることをやりながら、後は気長に待つことが大事です。
待てる親なら、子どもは自分のペースを乱さなくて済みますので、しかるべき時期が来ればできるようになります。

これらのことは子どもだけではなく、大人についても言えることです。
あなたの旦那はしょうもないことをしているかも知れません。
上司・同僚・部下の中にもしょうもない人がいるかも知れません。
自己中で被害妄想的な人がいるかも知れません。

でも、そういう人はそういう状態である理由があるのです。
もしかしたら、成長過程で愛よりも否定を多く受け取ってきたのかも知れません。

そういう相手を直接変えようとしてとがめ続けても、決してよい結果はもたらされません。相手に必要なのは北風でなく太陽です。
相手があなたの愛情を実感すれば、素直な気持ちになってくれます。

自分にできることをやりつつ、後は待つだけ

このように、まずはあなたが変わることが大事です。
その影響を受けてやがて相手も変わります。
相手が子どもであろうが大人であろうが、同じです。

相手を変える権利はあなたにはありません。
一人の人間同士なのですから、相手を変えようとするとこと自体が僭越なことです。
自分が変わるかどうかを決めるのはその人自身であり、相手には今のまま変わらないでいる権利と自由があるのです。

あなたが変わってください。
その影響が自然に周りを変えます。

でも、「自分は変わったのになんで周りは変わらないの」と言ってはいけません。
そんなことを言うあなたはちっとも変わっていないのです。

相手に対しては待つことしかできません。
自分にできることをやりつつ、後は待つだけです。
待てない親は必ず子どもを傷つけます。
待てる親であってください。

親野智可等(おやのちから)
教育評論家。1958年生まれ。本名 杉山 桂一。
公立小学校で23年間教師を務めた。教師としての経験と知識を少しでも子育てに役立ててもらいたいと、メールマガジン「親力で決まる子供の将来」を発行。具体的ですぐできるアイデアが多いとたちまち評判を呼び、新聞、雑誌、テレビ、ラジオなど各メディアで絶賛される。また、子育て中の親たちの圧倒的な支持を得てメルマガ大賞の教育・研究部門で5年連続第1位に輝いた。読者数も4万5千人を越え、教育系メルマガとして最大規模を誇る。『「親力」で決まる!』(宝島社)、『「叱らない」しつけ』(PHP研究所)などベストセラー多数。人気マンガ「ドラゴン桜」の指南役としても知られる。長年の教師経験に基づく話が、全国の小学校や幼稚園・保育園のPTA、市町村の教育講演会で大人気となっている。
著書多数。
Webサイト http://www.oyaryoku.jp/