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Case 24 「作文」≠「論文」/わが家のSNSトラブル ~ユカの事件簿~

Case 24 「作文」≠「論文」/わが家のSNSトラブル ~ユカの事件簿~

大学のレポートに押し寄せる「作文」の影響。ユカの意見を聞くとまた別の面が見えてきます。

大学生が、作文のようなレポートを出している

Twitterで最近面白かったのは、ある大学教授のツイートでした。
最近の学生のレポートが『○○について、さらに調べてみようと思います。』で締められていることが多いという感想で、「それなら調べて書けばいいのに」とつぶやいています。

その大学教授は小学校の作文の授業の影響かなと述べていましたが、これに賛成するツイートで、日本では大学に入るまで科学文章を書く訓練がされないのが問題だという意見もありました。

わたしはこのツイートで、2015年の夏にネットで話題になった”小学生の読書感想文用のテンプレート”を思い出しました。
このテンプレートは、あらかじめ決められている文章のところどころが空欄になっていて、指示通りに本のタイトルや感想を書きこむと、模範的な読書感想文が完成するようになっています。

この指導の是非はともかく、そのテンプレートの締めも
「これから 、[ ○○したい ]と思います。」
でした。

どうして大学生が読書感想文テンプレートそのままのレポートを出してしまうのか、今回はその理由をわたしなりに考えてみます。

当事者に聞いてみよう

娘のユカも大学生です。レポートを「さらに調べようと思います」で締めたことはあるのでしょうか? 聞いてみました。

「やってるような気がするなあ……。こういう結論をボカした終わり方が便利だよね。ツッコミの回避になるの」

「ツッコミ回避」!
思いがけない方向の答えでした。

SNSでのコミュニケーションが長いユカは、断言することが炎上(友人との小さなものでも)の元になると身にしみているようです。
もちろん面と向かってでも同じですが、何百という人に等しく届く可能性のあるSNSはより慎重さが必要で、断言しないのは自分の身を守る技術ともいえます。

大学教授に嘆かれるような「作文」の大量発生は、ユカと同世代の大学生たちが、無意識にせよ断言を避けていることが一因かもしれません。

しかし自分の意見を述べるのが論文です。結論をスルーするわけにはいきません。断言もツッコミ(=反論)も避けられないのです。SNSからの頭の切り替えが必要です。

調べても調べても深いネット

もうひとつ、大学生が「さらに調べようと思います」とテンプレートを埋めるのには、調べても調べても終わりの来ないネットとの格闘を強制終了できるという側面もあるように思えます。

いまやネットの発達で、人がそのまま図書館につながったような世界になりました。海外まで届くまさに大海のような情報量が、スマホからでも手に入ります。それが膨大すぎて、どこまで調べてもまだ先があるのかもしれません。

情報が集まりすぎて、他人の説をずらっと並べた”まとめサイト”のようなレポートを、結論を出せぬまま「さらに調べようと思います」でなんとか締めくくっても、それなりに見栄えするレポートにはなるでしょう。
しかしレポートの本来の目的は、見失われてしまいます。

なんのために「調べる」のか

「自分の頭で考え、論拠をさがし、論を組み立て、結論を導く」ことを避けて、レポートや論文を書いたつもりでいると、そのレポートは検索結果画面と変わらない価値になってしまいます。

もはや情報量が多いことはあたりまえで、そこに自分の頭で考えた意見をどうプラスしていくかが大事なのです。そのことを、子どもたちも、親たちも学ぶ必要があるようです。

さて、社会に出たとき、ユカたちSNS世代はどんな意見表明のしかたをするのでしょう。
これから、 [ さらに調べてみたい ]と思います!

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マリ(まり)

マリ(まり)

マリ(まり)

サラリーマンの夫・大学生の娘(ユカ)との3人暮らし。
大学の恩師の「あなたは一生文章を書きつづけなさい」という言葉を真に受けて、今も日々ものを書いている。
現在はIT系の会社で、セミナー関連の仕事に携わっている。
趣味は映画鑑賞。年に100本みることがひそかな目標。

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