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Case 25 スマホ時代のひとり旅/わが家のSNSトラブル ~ユカの事件簿~

Case 25 スマホ時代のひとり旅/わが家のSNSトラブル ~ユカの事件簿~

ユカがひとり旅に出ました。でもおどろくほど大勢でにぎやかなひとり旅です。

ユカ、ひとり旅に行く

先日娘のユカはひとりで京都に行きました。いっしょに行くはずだった友だちとバイトの休みが合わなかったのです。ユカはもう大学生なので、わたしは安全に気をつけるようにだけ言って見送りました。

……1日中、わたしのスマホのにぎやかだったこと!

ユカから、新幹線、お昼ごはん、お寺、にわか雨でずぶぬれの姿……と次々と画像が送られてきます。最後に「充電キレる!」とLINEが来て、ホテルからまた画像が来るまでの数時間、ようやくわたしのスマホは静かになりました。

旅行から帰ってきたら、スマホのたくさんの画像で、ユカの旅自慢大会です。
「これはインスタとTwitterでいいね! をいっぱいもらったよ」
「●●ちゃんのリプ、『わたしのランチは菓子パンだよ、うらやましい!』だって」

ひとりで旅をしながら、ユカはいそがしくLINEを送り、Twitterでつぶやき、Instagramに画像を上げ、友だちからのリプライやいいね! をリアルタイムで受け取っていました。予備バッテリーまで充電ギレになってしまうのも当然です。

スマホ時代のひとり旅は、みんなといっしょ

どうやらスマホ時代のひとり旅は、わたしの時代とはずいぶん様変わりしたようです。

わたしの時代、前情報はガイドブックくらいで、紙の地図は必須。友だちに遠距離電話をかけても相手が電話(固定電話!)のそばにいなければ出てくれません。いったん旅に出たら、便利な日常生活やふだんの人間関係から切りはなされる孤独感がありました。

いま、スマホがあれば、ガイドブックにも、地図にも、カメラにも、電話にもなります。そして、いつもの仲間もつながったままです。おなじひとり旅でも心細さがぜんぜんちがうのです。

同行二人(どうぎょうににん)という言葉があります。

お遍路さんの言葉で、ひとりでお遍路していても常にお大師さまとふたり連れなのだという意味ですが、いまのひとり旅は常にSNS仲間と連れだっている「同行いいね10コ」と言えそうです。

ひとり旅は、孤独を感じて自分と向きあうことに意味がある、などとお説教するのは無粋でしょう。むしろ、特に女性にはハードルの高かったひとり旅を、安全・快適に楽しめる時代になったことをわたしは喜びたいです。

修学旅行こそ日常をはなれた旅へのビッグチャンス!?

考えてみると、いまの時代で孤独な旅をしたいなら、スマホなしで旅するしかないかもしれません。そして、通信事情が悪くて「つながれない」場所でもないかぎり、スマホなしの旅なんてわたしにはもう考えられません。

でもこのスマホなし旅、多くの子どもは経験します。そう、修学旅行です。

時代の流れでやがて修学旅行もスマホ解禁になるとしても、現時点ではスマホなしでの修学旅行は健在のようです。ちょっとググれば、スマホを修学旅行に隠し持っていく方法を質問する子どもが次々出てくるのですから。

いまの子どもにとって、ネットの仲間と切りはなされて未知の土地で行動することは、たとえクラスの友だちとグループでいても、ひとり旅よりもずっと孤独を感じられる経験になるでしょう。でも、スマホ画面を見ている時間の分まで清水の舞台の高さをじっくり味わえるし、SNSがなくても、ジェットコースターの感想をシェアしたいならいっしょに乗った友だちこそ最適です。

子どもには「大切な思い出なのに写真がスマホに残せない」「不便、つまらない」と嘆いてばかりいないで、SNSにつながらない旅をたっぷり楽しんでもらいたいものです。だってこの先、スマホなしで旅することなんて、きっとないでしょうから。

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マリ(まり)

マリ(まり)

マリ(まり)

サラリーマンの夫・大学生の娘(ユカ)との3人暮らし。
大学の恩師の「あなたは一生文章を書きつづけなさい」という言葉を真に受けて、今も日々ものを書いている。
現在はIT系の会社で、セミナー関連の仕事に携わっている。
趣味は映画鑑賞。年に100本みることがひそかな目標。

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