失敗を恐れずチャレンジする心を大切に/くやまない、悩まない、自分を責めない――心がラクになるアドラー流子育て【第14回】
あえて失敗させる必要はありませんが、子ども自身が困難に挑戦することを決意したとき、子どもの力を信頼し支えることが、親のつとめなのではないか。三人息子全ての受験を終えた今、わたしはあらためて、そう考えています。
わが子の大学受験が終わって
待ちに待った新学年がスタートし、期待に胸をふくらませている子どもや保護者の方も多いことと思います。この「心がラクになるアドラー流子育て」の連載が始まって、早いもので1年がたちました。今、1年前に書いたコラムをあらためて読み返し、そのころのことを思い出しています。
さて、わが家には三人の息子(22歳の長男と19歳の双子)がいるのですが、特に浪人していた双子のうちのひとりは、この冬から春にかけて、様々なことを経験しました。
わたしは、昨年春にこの連載で、彼が浪人することをはじめは反対していたこと、その後、親として何がベストなのかを考え、本人の意思を尊重したことを書きました。そしてこの1年、親子共々いろいろな経験をしてきました。
本人は親の知らないところで、悩み苦しんだ時期もあったと思います。なかでも、2月末に受けた第一希望の大学には、残念ながら手が届かず、不合格だったことは、かなりの痛手だったはずです。これまで必死に勉強してきた彼の心境を思うと、この結果は、親としてもとても辛く、悲しい気持ちでした。
アドラー流コミュニケーションでは、このような場合、「共感」をもとに勇気づけをするのですが、この時ばかりは、がっかりしている息子にどう話しかければ良いのか、言葉が見つかりませんでした。
子どもが失敗したときに、親としてできること
受験に限らず、子どもが失敗したときに、そのことを親としてどうとらえるのか、また、困難にチャレンジすると決めた子どもとどう関わるのかを、ここで考えてみましょう。
アドラー心理学では「人は失敗を通して学ぶ」と考えます。子どもが何かに挑戦しようとしたとき、親としては、それを心から応援し、支えることが必要です。
子育てにとって大切なことの一つは、子どもに失敗をさせないようにすることではなく、失敗を恐れない、強く前向きな心を育てることなのではないかと考えます。
結果より経過を重視し、失敗したら何度でもやり直せると考えるのが、アドラー流子育て。たとえ失敗したとしても、口出しをせず、子どもの力を信じ、見守ることを大切にするのです。
口出しをしないことは、放っておくのとは違います。困ったことがあったときには、いつでも援助することをしっかり伝えておくことも重要です。
一時期は落ち込んだとしても
子どもの力は、おとなが考えているよりも、はるかに大きく強いものだと思います。その後、彼は「自信がない」と言いつつも、他大学の後期受験に臨みました。そして、その結果は、なんと合格。淡い期待はしていたのですが、予想外のできごとでした。
このときの彼の喜びは、心の内側からふつふつと湧き出るものだったに違いなく、今までの苦労が報われた思いだったと思います。わたしも夫も本当にうれしく、胸をなでおろしました。
もちろん、受験ですから運もあります。それでも、やりきったことは彼の自信につながったことでしょう。本人も、一時期は落ち込んだけれど、自分の決めた道に悔いはないと言っていました。
ただ、ここで、親としては気をつけておきたいことがあります。それは、先にも書いたように、「結果だけに注目しない」ということです。
わが子の場合、合格はたしかにうれしいことでしたが、それだけを評価するのではなく、今までの努力にこそ、目を向けるよう気をつけました。
チャレンジする心を育てる
できるだけ、わが子に失敗や苦労はさせたくないという親心も、理解できないわけではありませんが、しょせん、親は本人の代わりはできません。
子どもには子どもの生き方があり、人生があるのです。本人が決めたことなら、それを親としては応援しましょう。
失敗も苦労も恐れることはありません。そこから得るものは計り知れないからです。
挑戦するからこそ失敗があります。挑戦した、そのこと自体に価値があるのです。
あえて失敗させる必要はありませんが、子ども自身が困難に挑戦することを決意したとき、子どもの力を信頼し支えることが、親のつとめなのではないか。三人息子全ての受験を終えた今、わたしはあらためて、そう考えています。
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