学研 × 朝日新聞 キッズネット

学校の視力検査B・C判定から近視のサインを見逃さない!  眼科専門医に聞く、子どもの近視の進行を抑制する生活習慣&最新の治療法

学校の視力検査B・C判定から近視のサインを見逃さない!  眼科専門医に聞く、子どもの近視の進行を抑制する生活習慣&最新の治療法

新年度がはじまると学校健診で視力検査が行われ、結果のお便りが届きますね。「B」「C」判定で眼科の受診をすすめられ、「もしかして近視? 視力低下が進んだらどうしよう」「子どもがスポーツをしているからメガネはイヤがるかも」など、お子さんの目の健康が心配になっていませんか?

実は最近、子どもの近視治療にとって明るい変化が! 従来のメガネなどでの「視力補正」だけではなく、ソフトコンタクトレンズ、点眼液などで「近視の進行抑制」ができるようになり、2026年に入って治療法の選択肢がさらに広がっています。

子どもの近視の進行抑制の研究を行う眼科専門医の五十嵐多恵先生(東京都立広尾病院 眼科医長)に、子どもの今と将来の視力を守る方法についてお聞きしました。

視力検査
小学校の視力検査は、ランドルト環(切れ目の空いた輪)を用いた370(サンナナマル)方式(1.0、0.7、0.3の指標)で実施され、A〜Dの4段階で評価される。

学校の視力検査B・C判定は、視力の異常に気づくチャンス

――――学校の視力検査やA~Dの判定結果には、どのような意味があるのでしょうか?

五十嵐先生:多くの目の異常は見た目ではわかりにくく、子どもは自分で見えづらくなったと気づかないこともあります。だから、学校で年1回行われる視力検査は、お子さんの視力低下や目の異常に気づくチャンスです。

学校での視力検査は、学習など学校生活に支障がない見え方かどうかを「A・B・C・D」の4段階で判定されます(下記参照・数値は視力の目安)。

A(1.0以上)…教室の後ろの席からほとんどの文字が読める。

B(0.7~0.9)…教室の後ろの席から黒板のほとんどの文字が読めるが、小さな文字が見えづらいことがある。

C(0.3~0.6)…教室の後ろの席から黒板の文字が見えづらいことがある。

D(0.2以下)…前の席からでも黒板の文字が見えづらい。

ただし、学校での視力検査はスクリーニング(異常を見つける選別)が目的の簡易的な測定法です。
小さい学年のお子さんだと0.3程度しか見えていなくても、先生たちの黒板の字が大きいため「ちゃんと見えているよ」と親御さんに言ってしまうことがあります。

また、B判定でも本人に聞いてみたら「見える」「大丈夫」と言うかもしれませんが、すでに近視が発症していたり、もうすぐ発症しそうな前段階の可能性もあります。

発症する前から発症直後が、進行がかなり速い時期になります。B判定でよく見えているんだなと思っていたら、あっという間にC判定やD判定になってしまうこともあります。

結果がB~D判定(視力1.0未満)の場合は、お子さんの目に近視や他の病気、異常が隠れていないか、早めに眼科を受診して詳しい検査を受けることが重要です。

令和6年度の学校保健統計調査(文部科学省)によると、日本では約40年前から視力1.0未満の子どもの割合が増加し、小学校で3割を超え、中学校では6割程度となっています※1。裸眼視力1.0未満の子どもの全てが近視ではありませんが、そのうち約8割が近視という報告もあります※2。

最新調査で子どもの近視の発症数のピークは8歳に

――――そもそも、「近視」とはどのような状態なのでしょうか?

五十嵐先生:近視は、眼球の奥行の長さである「眼軸長」(がんじくちょう)が正常よりも過剰に伸び、網膜の手前で焦点が合って遠くが見えづらくなる状態のこと。眼軸長は一度伸びてしまうと正常な長さに戻すことができません

正視と軸性近視
正視(イラスト左)は網膜上で焦点が合っており、ハッキリと見える。近視(軸性近視・イラスト右)は眼軸長が伸び、網膜の手前に焦点が合ってしまい、遠くが見えづらい。

私たち親世代は中学生になってから近視になる子どもが多かったのですが、最新の調査で日本の子どもの近視の発症数のピークは8歳まで下がっており※3、8~12歳の5年間に近視が悪化しやすくなることもわかっています。だから、幼児期~学童期の近視の予防と進行抑制が大切なのです。

――――なぜ、子どもが近視になってしまうのでしょうか?

五十嵐先生:近視には「環境要因」と「遺伝要因」の2つが関わっていますが、現代の子どもたちの近視の要因は外遊びなどの屋外活動の減少、スクリーンタイムなど近くを見る近業の増加といった生活習慣の影響が大きいと考えています。

また、親(両親またはどちらか)が強度の近視の場合、遺伝によってお子さんが近視になるリスクがありますので、学校の視力検査がA判定であっても眼科で検査を受けることをおすすめします

タブレット学習をする子ども
近年はタブレット学習の導入などにより、子どもが近くのものを見る時間が増えている。

近視が進むほど、生活の質の低下や目の病気のリスクが増加

――――遠くが見えづらくなると、子どもの今の生活にどんな影響がありますか?

五十嵐先生:人間は情報の約8割を視覚から得ているといわれています。遠くが見えづらくなると学習、スポーツ、コミュニケーションにも影響し、生活の質(QOL)の低下につながるかもしれません。学校の視力検査の結果から視力低下に気づき、対策して今の視力を守ってあげたいですね。

――――子どもの近視を放置すると、将来どんな目の病気にかかりやすくなるのでしょうか?

五十嵐先生:以前は「見えづらくなってからメガネで視力補正すればいい」という考え方がありました。しかし、さまざまな疫学調査から、子どもが近視になると大人になってから「緑内障」「白内障」「網膜剥離」「近視性黄斑症」といった目の病気にかかりやすくなり、軽度、中等度、高度と進行するほどリスクが高くなることがわかってきました※4。お子さんの将来の視力や目の健康を守るためにも、今から近視の予防・進行抑制をはじめましょう。

五十嵐先生インタビュー
五十嵐先生は「子どもが近視になると、大人になってから目の病気にかかりやすくなり、近視が進行するほどリスクが高くなる」と警鐘を鳴らす。

視力を守る生活習慣は、1日2時間の屋外活動がおすすめ

――――家庭でできる近視の予防や進行抑制のための生活習慣を教えてください。

五十嵐先生:屋外活動の時間を増やすことで、子どもの近視予防につながることがさまざまな研究から明らかになっており、進行抑制の効果も期待されています※4。屋外で太陽光を浴びることが有効とされていますが、強い日差しではなくても木陰や建物の影、曇りの日であっても近視予防の明るさには充分。理想は1日2時間以上の屋外活動です。外遊びや屋外スポーツ、散歩、買い物など日常の中で短時間の屋外活動を組み合わせてみましょう。

また、現代の子どもたちはゲーム機やスマホ、タブレットなどデジタルデバイスを避けるのは難しいですよね。スクリーンタイム、読書などで近くを見るときは、「30-30-30ルール」(下記参照)を親子で確認しましょう。

●1日2時間の屋外活動…学校の休み時間や休日の外遊び、屋外スポーツの部活動・習い事、親子で犬の散歩や買い物に行くなど。

●30-30-30ルール…学習、読書、スクリーンタイムなど、近くでものを見るときは30㎝以上離し、30分したら30秒(20秒)以上遠くを見る。ゲームや動画は、携帯型ゲーム機、スマホ、タブレットより、テレビ画面に映して離れて見る。

子どもの近視の「進行抑制」をする最新の治療法

――――眼科を受診して子どもが近視とわかった場合、すぐにメガネをすすめられるのでしょうか?

五十嵐先生:メガネだけではなく、ソフトコンタクトレンズ、点眼液、レッドライト治療など、近視の進行抑制治療には複数の選択肢(下記参照)がありますので、安心して眼科医に相談してください。

これまで、近視の進行抑制治療は基本的に自由診療でしたが、日本で近視の子どもが増加していることや深刻な目の病気のリスクになることから、検査・診察に保険が適用される治療法が2026年から続々と増えてきています

――――近視の進行抑制治療法には、どのような種類があるのでしょうか? メリットや注意点も教えてください。

五十嵐先生:近視の進行抑制治療の種類は、近視の進行抑制として厚生労働省から承認されているもの、されていないもの含めて、主に次の5つです。近視の程度、年齢、ライスタイル、保護者の方やお子さんの希望もふまえたうえで、治療法を医師と相談して選びましょう。

●多焦点ソフトコンタクトレンズ
子どもの近視の今の「視力補正」と将来の「進行抑制」を両立が期待されているのが、多焦点ソフトコンタクトレンズ。お子さんでも自分で装用できる製品もあり、ハードコンタクトレンズより刺激が少ないことやワンデータイプでケアする手間がなく衛生的なのもメリット。スポーツの部活動・習い事をしている活動的なお子さんに向いています。厚生労働省から承認されているものもあります※5。目の傷や感染症を起こさないよう定期的に受診をして安全に使用できているかを確認する必要があります。

●低濃度アトロピン点眼液
近視の進行抑制をする点眼液として世界的に広く用いられているのが低濃度アトロピン点眼液。日本でも厚生労働省から承認されています※5。5歳から使用できる製品もあり、1日1回・就寝前に点眼をする手軽さ、メガネやコンタクトレンズが必要になる前から近視の進行抑制をはじめられるのがメリット。ただし、薬の感受性には個人差があるので、子どもがまぶしさなどを感じる場合は医師に相談しましょう。

●オルソケラトロジー※6
就寝前に特殊な形状のハードコンタクトレンズをつけ、就寝中に角膜の形を変化させて視力補正と近視の進行を抑制することが報告されているアプローチ。起床後に外してもその効果が続くので、日中は裸眼で過ごせるのがメリットです。ただし、保護者が洗浄する手間がかかること、目の傷や感染症を起こさないよう3か月に1回受診をして安全に使用できているかを確認する必要があります。

●近視管理用メガネ※6
中心部と周辺部の特殊なレンズ構造で、近視の視力補正をする近視管理用メガネ。これまで海外で販売されていましたが、近年、進行抑制の効果を目指して日本にも取り入れられるようになりました。5歳から使用できる製品もあり、まだコンタクトレンズがつけられないお子さんでも使用できるのがメリット。

●レッドライト治療
現在、日本で未承認ではありますが、眼軸長の伸びを抑制することで近視進行を抑制するアプローチであり、一部の研究では眼軸長の短縮が報告され、世界で注目されているのがレッドライトです。赤色の光を見つめる機器を借り、自宅で1日2回、1回3分間、週5日見るという使用方法です。日本では長期的な安全性が検討されている方法のため、医師に相談しましょう。

学校健診で子どもの視力低下に気づいた今こそ、近視の予防・進行抑制をはじめるチャンス。「子どもの今と将来の視力を守る」ために、屋外活動を増やすなど生活習慣を見直し、子どもに合う適切な治療法を選んでいきたいですね。

多焦点ソフトコンタクトレンズの理解が深まる TVアニメ『薬屋のひとりごと』コラボ冊子公開中

©日向夏・イマジカインフォス/「薬屋のひとりごと」製作委員会

クーパービジョンでは人気TVアニメ『薬屋のひとりごと』とコラボし、子どもの近視や対策について学べる電子冊子を期間限定で公開しています。主人公・猫猫(マオマオ)と一緒に近視の謎を解き明かしながら、近視の仕組みや生活の中で気を付けたいポイントを、クイズやイラストとともに親子で楽しく学べる内容になっています。
お子さんの目の健康について考えるきっかけとして、ぜひ親子で一緒にチェックしてみてください。

 

電子冊子「猫猫(マオマオ)の目の困りごと調査」を詳しくチェック!

取材・文/掛川ゆり 撮影/福永仲秋(ANZ) 編集/小林利行(ワン・パブリッシング) 制作協力/クーパービジョン・ジャパン

 

【参考文献】

※1:学校保健統計調査 令和6年度(確定値)の結果の概要(文部科学省)

※2:視力受診勧奨者の屈折等に関する調査(続報).日本の眼科93:1598-1605,2022.

※3:⽇本における⼩児の近視と強度近視の年次推移:全国レセプトデータベース研究(Ophthalmology Science)

※4:屋外活動時間を増やすことが子どもの近視発症を予防―ランダム化比較試験を集約したシステマティックレビューの結果―(京都大学)

※5:2026年5月時点

※6:本項目の内容は教育啓発を目的とした一般的情報であり、特定の効果・効能を保証するものではありません。また、厚生労働省により有効性・安全性が承認された医療機器ではありません。

五十嵐 多恵先生

五十嵐 多恵先生

五十嵐 多恵先生

東京都立病院機構 広尾病院 眼科医長、東京科学大学 眼科学 非常勤講師。金沢大学医学部卒業。2009年に東京医科歯科大学眼科に入局し、その後、川口市立医療センター眼科医長、東京医科歯科大学眼科助教、米国ハーバード大学マサチューセッツ眼科耳鼻科フェロー、東京医科歯科大学眼科 講師(キャリアアップ)を経て、2024年より現職。成人の強度近視、子どもの近視予防、進行抑制治療などの研究を行っている。

PAGETOP