大人の知らない共同アカの世界/データで読み解く、子どもとスマホ【第23回】
IDとパスワードはセキュリティのために秘密にするべきもの……。子どもたちはそんな保護者世代の常識では考えられないようなSNSの使い方をしています。
共同アカ、知っていますか?
「共同アカウント」という言葉を聞いたことがありますか?
この共同アカウントとは、主にTwitterで、恋人どうしや仲のいい友だちどうしで1つのアカウントのIDとパスワードを使いまわし、共同で運用しているアカウントのことです。Twitterのキーワード検索で「共同垢」(垢はアカウントの隠語)と入力して検索してみてください。共同アカウントでの発信がずらりと並びます。
共同アカウントのなかでとくに目立つのが「カップル垢」と呼ばれる、恋人どうしが共同で発信するアカウントです。
友だちどうしの共同アカウントでは、学校の友だち、趣味の友だち、バンド仲間など、リアルにつながった間がらで共同発信しているつぶやきがたくさん出てきます。
これらの共同アカウントには顔出しツイートがとても多いことに驚かされます。もともと10代の若いSNSユーザはSNSにプライベートな写真を投稿していることが多いのです。
MMD研究所がインテルセキュリティと共同で2016年8月に実施した「高校生のスマートフォン利用実態調査」では、SNS・掲示板を利用している高校生の41.1%が「友達や恋人の写真や動画」をSNSに載せていると回答しています。※1
これらの共同アカウントでは、自分たちの仲の良さをアピールしたいという承認欲求がより強く反映されているのでしょうか、プライベートな写真がアップされている割合がさらに高いように感じられます。
共同アカウント、人間関係がこわれたらどうなるの?
さて、そもそもこれは不正アクセスなのでは? と疑問を持った方もいるでしょう。
Twitterで1つのアカウントを複数の人が使うこと自体は、企業や組織、著名人の公式アカウントでもなされています。(ちなみに、Twitterは複数の人が安全にアカウントを共有するためのサービス「TweetDeck Teams」を提供しています。※2)
この運用は正当なIDの持ち主から「承諾を得て」行なっていることを大前提としています。
不正アクセス禁止法では、承諾を得ずに他人のIDやパスワードでサービスにアクセスすれば不正アクセスとなり、3年以下の懲役または100万円以下の罰金の対象となってしまうからです。※3
ですから、カップルが別れてしまったり、友だち関係が終わってしまったりして、IDの持ち主から正当な承諾を得られなくなったら、これらの共同アカウントを合法に運用することはできなくなってしまいます。
共有アカウントがきれいに終わらせられるとは限らない
IDとパスワードを共有するのは、とても怖いことです。悪意が加われば、アカウントをのっとって相手の信用を損なうようなこともできるからです。
ID削除に応じず、一方的な悪口を書かれたら? 見られたくない写真が削除されないままだったら? 自分になりすまして、評判を落とすような書き込みをくり返し書かれたら?
だれかのIDとパスワードを自分が知っているという場合でも、上記のことを絶対にしないという保証はありませんよね。さらに、別れたあとで放置していた共同アカウントを第三者にのっとられ、スパムや爆破予告のような行為をされたら?
心配はつきません。
共同アカウントは、始めるのは簡単だけれど、きれいに終わらせるのは難しいもの。子どもは手を出さないにこしたことはありません。
そして、もしお子さんが既に共同アカウントを使っているようであれば、保護者は嫌われ役になってでも、どう終わらせる予定なのか、お子さんとよくよく話し合っていただきたいと思います。
※1 MMD研究所 「高校生のスマートフォン所有率は93.0%、2014年より13.5ポイントアップ」
※2 Twitter 「TweetDeck活用法:アカウントを共同で管理しましょう」
Tweet Deck(英語版のみ)
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