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受身の学びからステップアップするには?/データで読み解く、子どもとスマホ【第48回】

受身の学びからステップアップするには?/データで読み解く、子どもとスマホ【第48回】

スマホは勉強の役に立つと考えている子どもたち。でもスマホを使った学びは、まだ発展途上です。

スマホの勉強活用、受身の姿勢が目立つ

前回にひきつづき、スマホと勉強の関係についてみていきます。

NTTドコモの調査では、スマホが勉強に有効だと思うと回答した子どもは8割以上でした。※1

先進的で堅実なスマホの使い方をしているように感じられますが、勉強するときの具体的活用法をみると、不安に思うことがあります。

上位にあげられているスマホの具体的な活用法をもう一度みてみましょう。

[勉強時のスマホ活用法]

わからないことをネットで調べる      80.2%
わからないことを友達や知人に聞く45.3%
辞書アプリを活用する 36.7%
勉強用アプリを使用する 29.0%
わからないことをネット上で不特定多数の人に聞く 15.9%
とくに勉強には活用していない 11.7%

太字にした項目に注目してみてください。子どもたちの多くは、なにかを教えてもらうために、スマホを使っていることがわかります。

Q&Aサイトで宿題の答えを聞く

とくに、15.9%の子が回答している「わからないことをネット上で不特定多数の人に聞く」という項目は気になります。

不特定多数の人にどうやって聞くの? と思ったかたは、Yahoo!知恵袋などのQ&Aサイトで、「宿題 教えて」「宿題 わからない」などの言葉で検索してみてください。

小学生、中学生、高校生それぞれの年代で、宿題の答えや解き方について教えを請う質問がずらりと並んでいるのを目にするでしょう。

ひとつひとつの質問の中身をみてみると、なかにはこれは難問だと思うようなものもありますが、多くは宿題の引き写しのようです。

自分なりに考えたうえで、わからないポイントが書いてあるものには努力のあとがうかがえますが、

「この問題、わかりません! 解答をお願いします」

とうような安易な質問も多々見受けられます。

どれも親切な人が解答をつけていますので、おそらくその子は宿題を終わらせることができたことでしょう。けれども、それがその子自身の学びに本当に役立ったのかどうかは疑問です。

過去には課題について教えを請うているのが学校に発見され、カンニングとみなされたケースも。わからなかったら答えをスマホで他人に聞けばいい、という使い方は、自分で考えることを第一とするべき学齢期の子どもにとって、むしろ危険なことだとわたしは考えます。

これからの学びとスマホ

さて、2020年の教育指導要領改訂では、それぞれの科目で

  • 個別の知識・技能
  • 思考力・判断力・表現力等
  • 学びに向かう力・人間性等

の3つの資質・能力を育成することが掲げられています。※2

出典:幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について(中央教育審議会)

スマホでなにかを調べたり教えてもらったりすることは、このなかの、知識・技能の習得として位置付けられます。

知識をおぼえるだけの学びでは、AIの発達といった環境の変化に対応することはできませんから、得た知識を自分なりにさらに考えて判断し表現したり、それを自分や社会の未来にいかしたりしていくことが、これからの学びでは大切になってきます

となると、

  • ネット上で不特定多数の人から集めた意見を集約して、自分なりにレポートをまとめる
  • 友だちや知人とグループで勉強を教えあう

というような、思考型・協働型の学びの道具として、ICTのデバイスの位置付けは変わっていくのではないでしょうか。
※ICT(Information and Communication Technology)……情報・伝達の技術全般を指す言葉。従来のIT(Informarino Tedhnology)に代わる言葉として使われる。デバイスとは、コンピューターに接続して使うハードウェアのこと(パソコンやスマホ、マウスやプリンタなど)

そのときの主役となるのは、画面面積が広く入力がしやすいタブレットやノートパソコンかもしれませんが、いまわたしたちが手にしているスマホでも、思考型・協働型の学びはもちろんできます

答えのない問について考えることや、みんなで協力してひとつの課題解決にとりくむことの入り口としてスマホを使えないか、保護者の方はぜひ考えてみてください。ヒントはネットのなかにたくさんあります。保護者も、調べて、考えて、人生や社会の役に立てるようなスマホの使い方をめざしていきましょう。

※1
NTTドコモ 親のための子どもスマホ”必修”講座
※2
文部科学省 幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について(答申)(中教審第197号)

 
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渡邉純子(コドモット)(わたなべじゅんこ)

渡邉純子(コドモット)(わたなべじゅんこ)

渡邉純子(コドモット)(わたなべじゅんこ)

株式会社コドモット代表取締役社長。
NTT在籍時代の2001年、子ども向けポータルサイト「キッズgoo」を立ち上げ、同サイトでデジタルコンテンツグランプリ・エデュテイメント賞受賞。独立後は小学生向けのコンテンツを中心に、企業の子ども向けWebサイトや公共団体の子ども向けツールなどの企画制作を数多く手がける。一男一女の母。

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