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PKの科学 一流選手でも失敗する理由は? サッカーワールドカップ2026

PKの科学 一流選手でも失敗する理由は? サッカーワールドカップ2026

サッカー世界一(せかいいち)(くに)()める4(ねん)一度(いちど)(だい)舞台(ぶたい)、ワールドカップ。2026(ねん)6~7(がつ)、カナダ、アメリカ、メキシコの3か(こく)(ひら)かれ、日本(にほん)も8大会(たいかい)連続(れんぞく)出場(しゅつじょう)します。日本(にほん)前回(ぜんかい)2022(ねん)カタール大会(たいかい)では、決勝(けっしょう)トーナメント1(かい)(せん)で、ペナルティキック(PK)(せん)(すえ)(やぶ)れました。このとき話題(わだい)になったのが、日本人(にほんじん)選手(せんしゅ)(にん)(ちゅう)(にん)失敗(しっぱい)してしまうPK(せん)(むずか)しさ。技術(ぎじゅつ)のある一流(いちりゅう)選手(せんしゅ)でもどうして失敗(しっぱい)してしまうのか。この記事(きじ)では、これまでに実際(じっさい)のPK(せん)のデータや実験(じっけん)などを(つう)じて()()かされてきた「PKの科学(かがく)」を紹介(しょうかい)します。

キッカーとキーパーの1(たい)1、11メートル(かん)勝負(しょうぶ)

PK戦の決着例の図解
PK(せん)決着(けっちゃく)(れい)

PK(せん)は、延長(えんちょう)(せん)(ふく)めて通常(つうじょう)試合(しあい)時間(じかん)勝敗(しょうはい)()まらない場合(ばあい)(おこな)われる決着(けっちゃく)方法(ほうほう)です。キッカーが、キーパーの(まも)るゴールに()けて、12ヤード((やく)11メートル)(はな)れたペナルティマークからボールをキックします。通常(つうじょう)(りょう)チームが交互(こうご)に5(にん)ずつ、(けい)10(かい)キックして、ゴールした(かず)(おお)(ほう)()ちです。ただし、(たと)えば、(りょう)チーム3(にん)()()えてAチーム3(にん)成功(せいこう)、Bチーム3(にん)失敗(しっぱい)のように、途中(とちゅう)勝敗(しょうはい)()まった場合(ばあい)は、5(にん)()まで(すす)まずにその時点(じてん)終了(しゅうりょう)します。一方(いっぽう)で、(りょう)チーム5(にん)()()えてゴール(すう)(おな)場合(ばあい)は、決着(けっちゃく)がつくまで1人(ひとり)ずつ交互(こうご)にキックを(つづ)けるサドンデス方式(ほうしき)になります。

今回(こんかい)北中米(ほくちゅうべい)大会(たいかい)からワールドカップの出場(しゅつじょう)(こく)がこれまでの32か(こく)から48か(こく)()えました。決勝(けっしょう)トーナメントに(すす)めるのは16か(こく)から32か(こく)となり、PK(せん)対象(たいしょう)となる試合(しあい)()え、PK(せん)()える可能性(かのうせい)があります。

ワールドカップでの成功(せいこう)(りつ)(ひく)め、でも(さき)失敗(しっぱい)したら逆転(ぎゃくてん)困難(こんなん)

ワールドカップでPK(せん)採用(さいよう)されたのは1978(ねん)アルゼンチン大会(たいかい)から。ただ、この大会(たいかい)ではPK(せん)までもつれた試合(しあい)はなく、実際(じっさい)にPK(せん)(はじ)めて(おこな)われたのは1982(ねん)スペイン大会(たいかい)準決勝(じゅんけっしょう)西(にし)ドイツ(たい)フランスで、西(にし)ドイツが5(たい)4で勝利(しょうり)しました。それ以降(いこう)2022(ねん)カタール大会(たいかい)までに35試合(しあい)320(ぽん)のキックが(おこな)われています。インターネット(じょう)試合(しあい)映像(えいぞう)から編集(へんしゅう)()集計(しゅうけい)したデータを紹介(しょうかい)します。

成功(せいこう)(りつ)69%、キーパー阻止(そし)22%、ゴール枠外(わくがい)9%

320(ぽん)のキックのうち、成功(せいこう)したのは222(ほん)(69%)でした。一般的(いっぱんてき)にはPKの成功(せいこう)(りつ)は70~80%とされ、ワールドカップでは(ひく)めと()えそうです。キーパーが()めたのは70(ぽん)(22%)、ゴールの枠外(わくがい)()んだものが28(ほん)(9%)でした。

ワールドカップのPK戦のコース別の本数と成功率の図解

(おお)いコースは左下(ひだりした)(つぎ)右下(みぎした)

ゴールを縦横(たてよこ)3つ、(けい)9つのエリアに()けた場合(ばあい)一番(いちばん)(おお)くけられるコースはキッカーから()左下(ひだりした)(キーパーから()ると右下(みぎした))の81(ぽん)(25%)で成功(せいこう)(りつ)は72%、()いで右下(みぎした)55(ほん)(17%)の成功(せいこう)(りつ)は69%。枠外(わくがい)(ふく)めて、ゴールの(ひだり)中央(ちゅうおう)(みぎ)の3方向(ほうこう)比較(ひかく)すると、(ひだり)155(ほん)(48%)、中央(ちゅうおう)59(ほん)(18%)、(みぎ)106(ぽん)(33%)。

上段(じょうだん)のキーパー阻止(そし)(りつ)0%

ゴール上段(じょうだん)にけり()まれたのは60(ぽん)(19%)あり、キーパーに()められたことがなく、成功(せいこう)(りつ)100%。ただし、ゴール(うえ)枠外(わくがい)(はず)したキックが14(ほん)(4%)あり、これを(ふく)めると上段(じょうだん)(ねら)ったとき全体(ぜんたい)成功(せいこう)(りつ)は81%。

先攻(せんこう)17(しょう)後攻(こうこう)18(しょう)

PK(せん)35試合(しあい)のうち、先攻(せんこう)()ったのが17試合(しあい)勝率(しょうりつ)49%。後攻(こうこう)()ったのが18試合(しあい)勝率(しょうりつ)51%。キックの順番(じゅんばん)有利(ゆうり)不利(ふり)はありません。
これまで先行(せんこう)(ほう)勝率(しょうりつ)60%ほどで有利(ゆうり)とした研究(けんきゅう)報告(ほうこく)もありましたが、7000試合(しあい)以上(いじょう)のPK(せん)分析(ぶんせき)した2025(ねん)研究(けんきゅう)報告(ほうこく)では先攻(せんこう)後攻(こうこう)有利(ゆうり)不利(ふり)はないと()かっています。
出典(しゅってん):No Evidence of First-Mover Advantage in a Large Sample of Penalty Shootouts(David Pipke、2025)

(さき)失敗(しっぱい)したら勝率(しょうりつ)17%

PK(せん)35試合(しあい)のうちで(さき)失敗(しっぱい)したチームで、その(あと)相手(あいて)チームが2(かい)以上(いじょう)失敗(しっぱい)をして、逆転(ぎゃくてん)()ちしたのは6(かい)だけ、勝率(しょうりつ)は17%。

アルゼンチン最多(さいた)(しょう)、ドイツ・クロアチア4(せん)全勝(ぜんしょう)日本(にほん)は2(せん)(はい)

ワールドカップでのPK戦の成績一覧
ワールドカップでのPK(せん)国別(くにべつ)成績(せいせき)

ワールドカップでPK(せん)(おこな)ったことがあるのは31か(こく)。アルゼンチンが最多(さいた)の7(かい)(おこな)って、勝利(しょうり)(すう)最多(さいた)の6(しょう)です。ドイツとクロアチアはそれぞれ4(かい)()って、ともに全勝(ぜんしょう)しています。このほかPK(せん)(かい)以上(いじょう)(おこな)って()()しているのはブラジル(3(しょう)(はい))です。
PK(せん)でもっとも(なみだ)()んでいるのは、1(しょう)(はい)のスペイン。日本(にほん)前回(ぜんかい)と2010(ねん)(みなみ)アフリカ大会(たいかい)(やぶ)れていて0(しょう)(はい)です。

PK失敗(しっぱい)不安(ふあん)・プレッシャーのせい

ここからは、これまでの研究(けんきゅう)報告(ほうこく)からPKについて()かっていることを紹介(しょうかい)していきます。

プレッシャーが()すキック(じゅん)(うし)ろになるほど成功(せいこう)(りつ)()がる

キック順が後ろになるほど成功率が下がるイメージ

1976~2004(ねん)のワールドカップなどのPK(せん)41試合(しあい)、409(ほん)のキックを分析(ぶんせき)。キック(じゅん)成功(せいこう)(りつ)をみると、(かく)チームの1人(ひとり)()86.6%、2人(ふたり)()81.7%、3(にん)()79.3%、4(にん)()72.5%、5(にん)()80%、サドンデス方式(ほうしき)になって6~9(にん)()64.3%で、5(にん)()(のぞ)いて()がっていく。
出典(しゅってん):Kicks from the penalty mark in soccer: The roles of stress,skill, and fatigue for kick outcomes(Geir Jordetら、2007)

失敗(しっぱい)すれば()け」の場面(ばめん)成功(せいこう)(りつ)(ひく)

1982~2018(ねん)のワールドカップ10大会(たいかい)でのPK(せん)30試合(しあい)、279(ほん)分析(ぶんせき)全体(ぜんたい)成功(せいこう)(りつ)は70.3%だが、「成功(せいこう)すれば()ち」という場面(ばめん)では成功(せいこう)(りつ)94.7%(19(ほん)(ちゅう)18(ほん))、「失敗(しっぱい)すれば()け」という場面(ばめん)では成功(せいこう)(りつ)42.9%(21(ほん)(ちゅう)(ほん))だった。
出典(しゅってん)心理的(しんりてき)プレッシャーがパフォーマンスに(およ)ぼす影響(えいきょう)-サッカーPK(せん)のキック成功(せいこう)(りつ)分析(ぶんせき)(とお)してー(岩田(いわた)真一(しんいち)、2021)

不安(ふあん)審判(しんぱん)合図(あいず)からすぐキック→失敗(しっぱい)(おお)くなる

1974~2006(ねん)のワールドカップなどのPK(せん)36試合(しあい)分析(ぶんせき)。「失敗(しっぱい)すれば()け」という状況(じょうきょう)では、キッカーは、ボールをセットした(あと)助走(じょそう)位置(いち)までキーパーに()()けて移動(いどう)すること、審判(しんぱん)合図(あいず)()すぐに助走(じょそう)(はじ)めてキックすることが(おお)くなった。これは「(はや)()わらせたい」という消極的(しょうきょくてき)気持(きも)ちの(あらわ)れ。また、審判(しんぱん)合図(あいず)からすぐにキックを(はじ)めると失敗(しっぱい)(おお)くなった。
出典(しゅってん):Avoidance Motivation and Choking Under Pressure in Soccer Penalty Shootouts(Geir Jordet、Esther Hartman、2008)

不安(ふあん)→キーパーへ視線(しせん)→コースもキーパーへ(ちか)づく

キーパーへの視線とコースの関係のイメージ

PKのキック()視線(しせん)実験(じっけん)分析(ぶんせき)不安(ふあん)(おお)きいときは(おお)きな刺激(しげき)脅威(きょうい)(かん)じるものに注意(ちゅうい)()られることが()かっていて、PKではキーパーを(はや)く、(なが)()ることが()かった。通常(つうじょう)キッカーは(ねら)場所(ばしょ)()てキックし、その視線(しせん)(さき)へボールも()ぶため、キーパーを()てしまうと、不安(ふあん)のないときと(くら)べてコースが中央(ちゅうおう)・キーパーへ平均(へいきん)14cm(ちか)づいた。
出典(しゅってん):Anxiety, Attentional Control, and Performance Impairment in Penalty Kicks(Mark R Wilsonら、2009)

プレッシャー→キーパーにつられて(うご)いた方向(ほうこう)へキックすることも

キッカーが、キーパーの(うご)きを()て、その(ぎゃく)をつくPKのシミュレーション実験(じっけん)分析(ぶんせき)。プレッシャーを(かん)じているときは、プレッシャーのないときよりも判断(はんだん)時間(じかん)がかかり、より(はや)くキーパーが(うご)いてくれないと(ぎゃく)をつけなかった。また、プレッシャーを(かん)じている(とき)は、キック直前(ちょくぜん)にキーパーが(うご)くと、それにつられて、キーパーが(うご)いた方向(ほうこう)へキックすることもあった。PKでは、キーパーの(ぎゃく)をつく作戦(さくせん)よりも、キーパーを無視(むし)して自分(じぶん)()めたコースにキックする作戦(さくせん)()るべきだ。
出典(しゅってん):The Effects of High Pressure on the Point of No Return in Simulated Penalty Kicks(Martina Navarroら、2012)

プレッシャー→(のう)(かんが)えすぎて、運動(うんどう)(みだ)れる

プレッシャーがあるときのキック()に、(のう)(はたら)きがどうなっているかを実験(じっけん)測定(そくてい)して分析(ぶんせき)。プレッシャーがあると、(のう)のうち(からだ)(うご)きに関係(かんけい)する運動(うんどう)皮質(ひしつ)(はたら)きが(おさ)えられ、(かんが)えることに関係(かんけい)する前頭(ぜんとう)前野(ぜんや)(はたら)きが活発(かっぱつ)になった。サッカー経験者(けいけんしゃ)場合(ばあい)、キックのフォームや結果(けっか)などについて(かんが)えすぎてしまうことで、普段(ふだん)(かんが)えなくても自然(しぜん)にできていたキックの運動(うんどう)(みだ)れ、(おも)ったコースにけれずに失敗(しっぱい)すると(かんが)えられる。
出典(しゅってん):Exploring the Brain Activity Related to Missing Penalty Kicks: An fNIRS Study(Max W. J. Slutterら、2021)

成功(せいこう)(おお)きく(よろこ)ぶと(つぎ)相手(あいて)失敗(しっぱい)しやすくなる

PKを成功させて喜ぶイメージ

1972(ねん)から2008(ねん)までの欧州選手権(おうしゅうせんしゅけん)とワールドカップでのPK(せん)33試合(しあい)分析(ぶんせき)同点(どうてん)場面(ばめん)で、キックを成功(せいこう)させた選手(せんしゅ)(りょう)(うで)()げるなど(おお)きく(よろこ)びを表現(ひょうげん)すると、直後(ちょくご)相手(あいて)キッカーが失敗(しっぱい)する確率(かくりつ)が2(ばい)以上(いじょう)(たか)くなった。また味方(みかた)チームも()ちやすかった。(よろこ)びを()かりやすく表現(ひょうげん)することが味方(みかた)には前向(まえむ)きな影響(えいきょう)(あた)え、相手(あいて)にはその(ぎゃく)効果(こうか)(あた)えると(かんが)えられる。
出典(しゅってん):Emotional contagion in soccer penalty shootouts: Celebration of individual success is associated with ultimate team success(TJERK MOLLら、2010)

キーパーがキッカーの()()らす作戦(さくせん)有効(ゆうこう)

腕を振るキーパーのイメージ

実験(じっけん)によるPKを分析(ぶんせき)。キーパーが(うご)いていないときと、キーパーが(うで)()っているときでは、(うで)()っているときの(ほう)がキッカーの注意(ちゅうい)がキーパーに()かれてしまい、成功(せいこう)(りつ)()がった。コースもキーパーに(ちか)中央(ちゅうおう)にけられる傾向(けいこう)があった。
出典(しゅってん):Anxiety and attentional control in football penalty kicks: A mechanistic account of performance failure under pressure(Greg Wood、2010)

軸足(じくあし)(うで)(うご)きはコース予測(よそく)()がかり

キッカーの関節(かんせつ)(うご)きから、コース予想(よそう)根拠(こんきょ)となる要素(ようそ)を、①軸足(じくあし)()()直前(ちょくぜん)左腕(ひだりうで)(みぎ)()きの場合(ばあい))と(あたま)(うご)き②軸足(じくあし)位置(いち)()き・ひざの()がり(かた)③キック直前(ちょくぜん)のけり(あし)角度(かくど)-と特定(とくてい)実際(じっさい)にこの要素(ようそ)をキーパーに(おし)えると、コース予測(よそく)()たる確率(かくりつ)()がった。
出典(しゅってん):サッカーでのキック方向(ほうこう)予測(よそく)におけるニューラルネットワークを(もち)いた判断(はんだん)根拠(こんきょ)教示(きょうじ)システム(本多(ほんだ)拓実(たくみ)ら、2022)

キーパーは()位置(いち)で、キッカーをあやつれる

キーパーの立ち位置と誘導されるコースのイメージ

ワールドカップなどの200(ぽん)のキックと、実験(じっけん)から分析(ぶんせき)。キーパーがゴールの中心(ちゅうしん)からわずかに(ひだり)または(みぎ)にずれて()つと、キッカーは無意識(むいしき)のうちに(ひろ)(ほう)へキックする傾向(けいこう)がある。キッカーに()づかれない最適(さいてき)なずれ(はば)は6~10㎝。
出典(しゅってん):Imperceptibly Off-Center Goalkeepers Influence Penalty-Kick Direction in Soccer(R.S.W. Masters、2007)

PK(せん)はキッカーとキーパーの仕草(しぐさ)注目(ちゅうもく)

これまで()かっていることから、PK(せん)不安(ふあん)やプレッシャーを(かか)えるキッカーと、その状況(じょうきょう)利用(りよう)しようとするキーパーとの心理(しんり)(せん)という一面(いちめん)があります。それを()まえて、注目(ちゅうもく)ポイントを(かんが)えてみましょう。

キッカー
助走(じょそう)位置(いち)()かう(とき)にキーパーに()()けていないか
審判(しんぱん)合図(あいず)があっても(いそ)いでキックしていないか
・キーパーの(ぎゃく)(ねら)作戦(さくせん)か、キーパーを無視(むし)する作戦(さくせん)
成功(せいこう)したとき派手(はで)(よろこ)んでいるか

キーパー
()位置(いち)中央(ちゅうおう)か、ずれているか
静止(せいし)しているか、(うご)いてキッカーの注意(ちゅうい)()こうとしているか

PK(せん)では、キッカーとキーパー以外(いがい)は、ドキドキハラハラ見守(みまも)ることしかできないのですが、こういった両者(りょうしゃ)仕草(しぐさ)注目(ちゅうもく)すると、これまでとは(ちが)った(たの)しみ(かた)ができるかもしれません。

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