人間はいつ、サルから分かれたの?

人間はいつ、サルから分かれたの?

こたえ:700万(まん)~600万年前(まんねんまえ)にチンパンジーと枝分(えだわ)かれして進化(しんか)を始(はじ)めた、と考(かんが)えられています。

「人間(にんげん)(ヒト)はサルから進化(しんか)した」という話(はなし)を聞(き)いたことがありませんか? 確(たし)かに、動物園(どうぶつえん)でチンパンジーやゴリラなどの類人猿(るいじんえん)を見(み)ていると、仕草(しぐさ)や行動(こうどう)がヒトのようだなと感(かん)じるかもしれません。けれども、「サルから進化(しんか)した」という言(い)い方(かた)は正(ただ)しくなく、じっさいは「ヒトはチンパンジーなどの類人猿(るいじんえん)と共通(きょうつう)の祖先(そせん)から進化(しんか)した」とされています。

ヒトやチンパンジーをふくめて、すべての生物(せいぶつ)が共通(きょうつう)の祖先(そせん)から進化(しんか)したという「進化論(しんかろん)」の考(かんが)え方(かた)をはじめて発表(はっぴょう)したのは、ダーウィン(Charles Robert Darwin、1809-1882)です。それから今日(こんにち)まで、発掘(はっくつ)された骨(ほね)の化石(かせき)の形(かたち)を分析(ぶんせき)したり、遺伝子(いでんし)をヒトやチンパンジーと比較(ひかく)したり、といったさまざまな研究(けんきゅう)が進(すす)み、共通祖先(きょうつうそせん)からどのようにヒトが進化(しんか)してきたかも分(わ)かってきています。

いま地球上(ちきゅうじょう)で暮(く)らしているヒトを、祖先(そせん)と区別(くべつ)して「現生人類(げんせいじんるい)」とよびます。現生人類(げんせいじんるい)をほかの生物(せいぶつ)と同(おな)じように「界(かい)・門(もん)・綱(こう)・目(もく)・科(か)・属(ぞく)・種(しゅ)」で分類(ぶんるい)すると、動物(どうぶつ)[界(かい)]脊索(せきさく)動物(どうぶつ)[門(もん)]哺乳(ほにゅう)[綱(こう)]サル[目(もく)]ヒト[科(か)]ヒト[属(ぞく)]ヒト[種(しゅ)]と表現(ひょうげん)できます。遺伝子(いでんし)を解析(かいせき)して進化(しんか)の道筋(みちすじ)をたどる「分子(ぶんし)系統学(けいとうがく)」という学問(がくもん)で「もっとも現生人類(げんせいじんるい)に近(ちか)い」とされるチンパンジーやボノボはヒト[科(か)]チンパンジー[属(ぞく)]、その次(つぎ)に近(ちか)いゴリラはヒト[科(か)]ゴリラ[属(ぞく)]です。

分子(ぶんし)系統学(けいとうがく)では、ヒトとチンパンジー属(ぞく)の共通(きょうつう)祖先(そせん)は、600万年前(まんねんまえ)に生(い)きていた動物(どうぶつ)だと考(かんが)えられています1)*。もし800万年前(まんねんまえ)までタイムスリップできたらヒトとチンパンジー、ゴリラの共通(きょうつう)祖先(そせん)に、2000万年前(まんねんまえ)まで行(い)ければヒト、チンパンジー、チンパンジー、ゴリラ、オランウータン、テナガザルの共通(きょうつう)祖先(そせん)に会(あ)えるかもしれません。

ヒトやチンパンジーは、こうした共通(きょうつう)の祖先(そせん)から長(なが)い長(なが)い時間(じかん)をかけて少(すこ)しずつ現在(げんざい)の姿(すがた)に進化(しんか)してきました(関連(かんれん)記事(きじ)「どうしてサルから人間(にんげん)になったの」、「人間(にんげん)はどのように進化(しんか)したの?」)。ですから「ここからがヒト」と境界線(きょうかいせん)を決(き)めるのはむずかしいのですが、ヒトとチンパンジーのちがいで分(わ)かりやすいのは、ヒトがまっすぐに立(た)ち、2本(ほん)の足(あし)で歩(ある)くことです。ですから今回(こんかい)は、「直立(ちょくりつ)」して「二足歩行(にそくほこう)」するようになった祖先(そせん)を、チンパンジーから分(わ)かれて進化(しんか)を始(はじ)めた最初(さいしょ)の祖先(そせん)と考(かんが)えることにしましょう。

直立(ちょくりつ)して二足(にそく)歩行(ほこう)する祖先(そせん)でもっとも古(ふる)いのは、アフリカ中央部(ちゅうおうぶ)のチャドで発掘(はっくつ)された「サヘラントロプス・チャデンシス」で、700万(まん)~600万年前(まんねんまえ)のものと見(み)られています2)。見(み)つかったのは、ほぼ完全(かんぜん)な状態(じょうたい)の頭骨(とうこつ)。それを分析(ぶんせき)した研究(けんきゅう)チームによると、脳(のう)の大(おお)きさは360~370mL、身長(しんちょう)は105~120cmで、チンパンジーと同(おな)じくらいだとみられます。そして、サヘラントロプス・チャデンシスは直立(ちょくりつ)二足(にそく)歩行(ほこう)していた可能性(かのうせい)があるそうです。

サヘラントロプス・チャデンシスに近(ちか)い年代(ねんだい)の化石(かせき)としては、ほかに「オロリン・ツゲネンシス」(600万年前(まんねんまえ))や「アルディピテクス・カダバ」(580万年前(まんねんまえ))も見(み)つかっています。オロリン・ツゲネンシスも直立(ちょくりつ)二足(にそく)歩行(ほこう)していた可能性(かのうせい)があると考(かんが)えられています。

サヘラントロプス・チャデンシスは頭骨(とうこつ)しか見(み)つかっていないのに、なぜ「直立(ちょくりつ)二足(にそく)歩行(ほこう)していた」と言(い)えるのでしょうか。

それは、頭骨(とうこつ)と首(くび)の骨(ほね)のつながり方(かた)から推測(すいそく)できます。首(くび)の骨(ほね)は頭骨(とうこつ)にあいた穴(あな)に入(はい)りこんでつながっていて、首(くび)の骨(ほね)が頭骨(とうこつ)の穴(あな)に真下(ました)から入(はい)りこまなければ直立(ちょくりつ)二足(にそく)歩行(ほこう)できません。現生人類(げんせいじんるい)と類人猿(るいじんえん)で穴(あな)の位置(いち)を比(くら)べると、現生人類(げんせいじんるい)では頭骨(とうこつ)のほぼ中央(ちゅうおう)に穴(あな)があいているのに対(たい)して、類人猿(るいじんえん)は後(うし)ろの方(ほう)にあいています。サヘラントロプス・チャデンシスの頭骨(とうこつ)を調(しら)べると、類人猿(るいじんえん)に比(くら)べて前(まえ)の方(ほう)に穴(あな)があいていて、首(くび)の穴(あな)が真下(ました)から入(はい)りこめるようになっています。したがって、直立(ちょくりつ)二足(にそく)歩行(ほこう)ができた可能性(かのうせい)があるのです。

* ヒトがチンパンジーと分(わ)かれて進化(しんか)を始(はじ)めたとされる年代(ねんだい)は、学問(がくもん)の分野(ぶんや)によって異(こと)なります。この記事(きじ)の後半(こうはん)では、700万(まん)~600万年前(まんねんまえ)の「サヘラントロプス・チャデンシス」を「チンパンジーから分(わ)かれて進化(しんか)を始(はじ)めた最初(さいしょ)の祖先(そせん)」という意見(いけん)を取(と)り上(あ)げていますが、こちらは、化石(かせき)の研究(けんきゅう)からみちびき出(だ)された年代(ねんだい)です。研究者(けんきゅうしゃ)たちは、このような分野(ぶんや)ごとのちがいにも注意(ちゅうい)をはらい、自分(じぶん)たちの研究(けんきゅう)結果(けっか)にまちがいがないかを追求(ついきゅう)しています。

記事(きじ)公開(こうかい):2021年(ねん)10月(がつ)

参考(さんこう)資料(しりょう)

1)長谷川(はせがわ)政美(まさみ)『系統樹(けいとうじゅ)をさかのぼって見(み)えてくる進化(しんか)の歴史(れきし)』.2014年(ねん).ベレ出版(しゅっぱん)

※『科学(かがく)バー』の連載(れんさい)「僕(ぼく)たちの祖先(そせん)をめぐる15億(おく)年(ねん)の旅(たび)」
(https://kagakubar.com/mandala/mandala02.html)でも、書籍(しょせき)の元(もと)になった話(はなし)を読(よ)めます。

2)三井誠(みついまこと)『人類(じんるい)進化(しんか)の700万(まん)年(ねん)ーー書(か)き換(か)えられる「ヒト」の起源(きげん)』.2005年(ねん).講談社(こうだんしゃ)

監修者(かんしゅうしゃ):大山(おおやま)光晴(みつはる)

1957年(ねん)東京都(とうきょうと)生(う)まれ。東京(とうきょう)工業(こうぎょう)大学(だいがく)大学院(だいがくいん)修士(しゅうし)課程(かてい)修了(しゅうりょう)。高等(こうとう)学校(がっこう)の物理(ぶつり)教諭(きょうゆ)、千葉県(ちばけん)教育(きょういく)委員会(いいんかい)指導(しどう)主事(しゅじ)、千葉(ちば)県立(けんりつ)長生(ちょうせい)高等(こうとう)学校(がっこう)校長(こうちょう)等(など)を経(へ)て、現在(げんざい)、秀明大学(しゅうめいだいがく)学校(がっこう)教師(きょうし)学部(がくぶ)教授(きょうじゅ)として「理数(りすう)探究(たんきゅう)」や「総合的(そうごうてき)な学習(がくしゅう)の時間(じかん)」の指導(しどう)方法(ほうほう)について講義(こうぎ)・演習(えんしゅう)を担当(たんとう)している。科学(かがく)実験(じっけん)教室(きょうしつ)やテレビの実験(じっけん)番組等(ばんぐみなど)への出演(しゅつえん)も多数(たすう)。千葉市(ちばし)科学館(かがくかん)プロジェクト・アドバイザー、日本(にほん)物理(ぶつり)教育(きょういく)学会(がっかい)常務(じょうむ)理事(りじ)、日本(にほん)科学(かがく)教育(きょういく)学会(がっかい)及(およ)び日本(にほん)理科(りか)教育(きょういく)学会(がっかい)会員(かいいん)、月刊(げっかん)『理科(りか)の教育(きょういく)』編集(へんしゅう)委員(いいん)等(など)も務(つと)める。

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