こたえ:本当は無色透明ですが、太陽の光によって色が変わって見えます。
空には、雲がさまざまに形を変えながらうかんでいます。変化していくのは、形だけでなく色も同じ。快晴の空のまっ白な雲が増えてきて灰色に変わり、まっ黒になると「今にも雨がふりだしそう」と心配になりますね。
じつは、雲には色はありません。というのも、雲は小さな水てき「雲つぶ」や氷のつぶ「氷晶」からできています。雲つぶや氷晶は、元をたどれば地面や海から蒸発した水ですから、雲は本来、無色透明なのです(関連記事「雲は何からとどのようにできるの?」)。それなのに、雲がさまざまな色に見えるのは、なぜでしょうか。
それは、雲つぶに太陽の光が当たって光があちこちに飛び散る(散乱する)からです1)。太陽からやって来る光が雲の中でどのくらい散乱して、どのくらい中を通りぬける(透過する)ことができるかが、雲の色を決めます。
太陽の光は雲つぶの表面でさまざまな方向に散乱し、あるものはそのまま雲つぶを透過し、あるものはほかの雲つぶに当たってさらに散乱します。このような散乱と透過をくりかえしながら、光は地上にいるわたしたちの目にとどくのです。このとき、わたちたちの目までとどく光の量が多ければ雲は白っぽく、少なければ黒っぽく見える、というしくみです※。
例をあげると、「巻層雲」(うす雲)などベールのような雲は、光を通しやすいため白く見えます。その一方で、「積雲」(わた雲)のようにぶ厚く発達した雲は、光が雲の中を通る間に散乱して弱まるため、黒く見えます。加えて、積雲のように雨を降らせる雲は雲つぶが大きいので、よりいっそう黒ずんで見えます。
同じ雲でも、どこから見るかによって色が変わることもあります。たとえば、遠くにある積乱雲を横から見ると、太陽の光をたくさん受けた雲はかがやくような白色に見えます。けれども、このとき雲の下にいる人には、雲はまっ黒に見えています。厚い雲が太陽の光をさえぎり、かげになった雲は黒色に見えるというわけです。
雲の色といえば白色や灰色、黒色をイメージしますが、時には虹色に見えることもあります。このふしぎな色の雲を「彩雲」とよびます。
彩雲は、太陽の光が雲つぶの間を通りぬけるときに散乱したり曲がったりして、光どうしが干渉することで起こる現象です。「巻積雲」(うろこ雲)や「高積雲」(ひつじ雲)が太陽のそばを通るときに起こることが多いようです。
仏教の彫刻や絵画には、五色にいろどられた雲が登場することがありますが、これは彩雲を表したものだと考えられています。「良いことが起きる前ぶれ」といった意味で、「慶雲」「瑞雲」などとよばれます。
冬は、気圧配置の関係で彩雲があらわれる確率が高まります。寒さに身をちぢめて、下を向いて歩きがちな季節ですが、晴れた日に空を見上げると、彩雲に出合えるかもしれません。
※ 太陽の光は赤・橙・黄・緑・青・紫などの色の可視光線が集まってできていて、これらが混ざって白く見えます。それぞれの色は波長がちがいますが、雲つぶは波長より大きいため、どの色の光も散乱します。これを「ミー散乱」といいます。
記事公開:2022年3月
参考資料
1)荒木健太郎『空のふしぎがすべてわかる! すごすぎる天気の図鑑』.2021年.KADOKAWA
2)菊池真以『ときめく雲図鑑』.2020年.山と渓谷社
監修者:大山光晴
1957年東京都生まれ。東京工業大学大学院修士課程修了。高等学校の物理教諭、千葉県教育委員会指導主事、千葉県立長生高等学校校長等を経て、現在、秀明大学学校教師学部教授として「理数探究」や「総合的な学習の時間」の指導方法について講義・演習を担当している。科学実験教室やテレビの実験番組等への出演も多数。千葉市科学館プロジェクト・アドバイザー、日本物理教育学会常務理事、日本科学教育学会及び日本理科教育学会会員、月刊『理科の教育』編集委員等も務める。