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勉強嫌いの中2の息子をやる気にさせたい/教えて! 陰山先生【第19回】

勉強嫌いの中2の息子をやる気にさせたい/教えて! 陰山先生【第19回】

そろそろ高校受験を視野にいれてほしいのですが、勉強が嫌いなようです。どうしたら息子をやる気にさせることができるでしょうか?

質問

中2の息子のことで悩んでいます。
もう2学期なので、そろそろ高校受験を視野にいれてほしいのですが、勉強が嫌いなようです。

宿題などはかろうじてやっているようですが、予習・復習、テストを見直すなどということはまったくしません。成績は5段階で2がほとんどです。

サッカー部に入っていて、部活がほぼ毎日あり、帰ってくるのが夜の7時近くで、夕ごはんを食べお風呂に入ると、テレビを観たりスマホをいじったりしています。
夜11時か12時くらいには寝て、朝は7時くらいに起きるというような生活です。

部活をしていても、きちんと勉強している子もいるようですし息子を見ると心配になり、
「勉強しなくて、いいの?」
「通知表が2ばっかりでいいの?」
「このままじゃ、行く高校ないよ!」
などと、ついガミガミと叱ってしまいます。

するとたいてい息子は黙って部屋に入ってしまい、しばらく出てきません。
自分の中学時代を思い出しても、親に叱られると余計に勉強したくなくなるだろうとは思うのですが、黙って見ていられないのです。

どうしたら息子をやる気にさせることができるでしょうか?
効果的な声のかけ方などがあったら教えてください。

回答

子どもは本来学ぶことが好き

最近子どもたちと接していて、驚くことがあります。それは、「勉強が好き。もっと難しい問題を出して欲しい」と言う子が少なくないのです。「子どもはもともと勉強が嫌いなもの」と大人は考えがちですが、最近の子どもたちは、どうもそうではなくなってきたように思います。

では、「勉強が好きな子」と「勉強が嫌いな子」の違いは、いったいどこにあるのでしょうか。

わたし自身指導をしていて感じるのは、子どもたちが勉強に取り組んで、「わかった!」という経験を何度もしていると、当然ながら、子どもたちは勉強好きになっていきます。

一方、勉強が嫌いな子は、「勉強しようとしてもわからない」あるいは、「一応解いたけれど間違っていた」そうした経験を積んでいるのです。

こうした違いがどこで生まれてくるかを調べてみると、小学校1年生の段階で出てきているようです。具体的には、くり上りやくり下がりの計算でひどくつまずいたり、解けても相当苦労したようであれば、2年生以降九九の学習などを、ひじょうに苦手とすることにつながっているようです。

結局、中学生で勉強が嫌いだと言うのは、こうした経験を小学校低学年から積み重ねており、やってもできないし、相当苦労しなければできないのだと思い込んでいるのです。宿題をやっていても成績が悪いとのことですが、きっと、小学校での大きな積み残しがあるはずです。

また、わたしの経験から、勉強ができない子どもは小学校4年生ぐらいからの漢字が書けないことが多いように思います。その状態では、中学校の教科書を読むのもたどたどしく、勉強そのものが難行苦行にならざるを得ないというのが実態なのではと思います。そうした状態下で中学校の勉強をするのは、難行苦行をがまんしてやりなさいということに他ならず、そこから逃げようとするのは当然とも言えるでしょう。

ではどうすればいいのでしょうか。

勉強が嫌いになった原因をとりのぞくことが大事

それは、小学校の積み残しのところからやり直すことです。

百ます計算(10個の数字がます目の縦横に並び、その数字が交差するところに計算の答えを書きこんでいく学習法)は、おそらく3分以上かかるかもしれませんが、毎日取り組み、足す・引く・かけるの百ます計算が1分半ぐらいになるように努力しましょう。それが、算数や数学の基本的なスタートラインになってくると思います。

国語においては、漢字の習得が絶対的に重要です。小学校の漢字が書けないのは、中学校で習う漢字が読めないことにつながります。ですから、小学校の漢字を3年生以降から集中して学習するといいでしょう。

1カ月程度、計算の能力や漢字の習得を高めていくことに集中すれば、中学校1年生段階の学習については、かなり負担が軽くなってくるはずです。

こうして中学校1年生段階の学習を固めながら、基本的な問題についてはさっと解けるまでくり返し、基礎的な内容を完全に定着させることが重要になってきます。

しかし、テレビやスマホを使う時間が多いようでは、こうしたことはできあがってきません。テレビやスマホの時間を減らし、小学校の復習をしっかりやることが大切です。

やればできる感覚を積み上げましょう

子ども自身が学習のやり直しにしっかり取り組む必要があるため、高校や大学で学習する意味などを親の立場から子どもに伝え、小学校段階からのやり直しを含めて学習する気にさせることが必要でしょう。

子どもたちにとっては、小学校の復習も難しいものではないので、集中すればわかるという体験ができるはずです。小学校中学年程度の問題をさっと解くことができるようになれば、学習の面白さは中学生になってからでも感じるはずです。

こうして、やればできる感覚を積み上げていくことが重要です。最初は長い時間勉強させることはあきらめて、短時間でも集中してやることにポイントをおいて、学び直すようにするとよいでしょう。

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陰山英男(かげやまひでお)

陰山英男(かげやまひでお)

陰山英男(かげやまひでお)

1958年兵庫県生まれ。岡山大学法学部卒。
兵庫県朝来町立(現朝来市立)山口小学校教師時代から、反復学習や規則正しい生活習慣の定着で基礎学力の向上を目指す「隂山メソッド」を確立し、脚光を浴びる。
2003年4月尾道市立土堂小学校校長に全国公募により就任。百ます計算や漢字練習の反復学習を続け基礎学力の向上に取り組む一方、そろばん指導やICT機器の活用など新旧を問わず積極的に導入する教育法によって子どもたちの学力向上を実現している。近年は、ネットなどを使った個別の小学生英語など、グローバル人材の育成に向けて提案や実践などに取り組んでいる。
2006年4月から立命館大学 教授(立命館小学校副校長 兼任)に就任。現在は、立命館大学 教育開発推進機構 教授(立命館小学校校長顧問 兼任) 。全国各地で学力向上アドバイザーなどにも就任し、学力向上で成果をあげている。また、北は北海道,南は沖縄まで、全国各地で講演会を実施している。
過去には、文部科学省 中央教育審議会教育課程部会委員,内閣官房 教育再生会議委員,大阪府教育委員会委員長などを歴任。
著書多数。
Webサイト http://kageyamahideo.com/

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