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わが家を荒らす小3の息子の友だち/教えて! 陰山先生【第29回】

わが家を荒らす小3の息子の友だち/教えて! 陰山先生【第29回】

息子の友だち(小3)のことで困っています。わが家の冷蔵庫を勝手に開けたり、勝手に寝室に入ったりします。でも、息子と仲が良いことと、ご近所なので今後もお付き合いが続くと思うと、どういうふうに対処したらいいのかと悩んでいます。

質問

息子の友だち(小3)のことで困っています。

息子と仲良しの同級生(男子)が、月に2~3回の頻度で「鍵を忘れて家に入れない」と言って遊びに来るようになりました。その子のご両親とはそれほど親しいわけではないのですが、ご近所ですし困っているなら仕方ないと思って、お母さんが仕事から帰ってくる時間(夕方6時半くらい)まで預かっています。
でも、その子がいたずら好きというか、マナーの悪い子で……。

たとえば、わが家の冷蔵庫を勝手に開けたり、「子ども部屋とリビング以外の部屋には入らないでね」と伝えているのに勝手に寝室に入ったりします。注意すると「はい」と返事をするのですが、しばらくするとまた同じことをします。
息子が気づくと注意をしてくれるようになったのですが、そうすると今度は、息子がトイレに行ったり、ゲームに夢中になったりしているすきにこっそり部屋に入るようになったのです。

困ったな……と思っていた矢先に、ある事件(!?)が起こりました。
わたしが夕食のしたくをしている間に寝室に入り、チェストからわたしの下着を引っ張り出して遊んでいたんです! もちろん、注意しましたが悪びれたようすはありませんでした。

お母さんに話をしようかと思いましたが、さすがに「お宅のお子さんが、わたしの下着を引っ張りだして……」とは言いづらくて、まだその話はしていません。その子のお母さんは学校などで会うと「いつも息子がお世話になっています」と、あいさつはしてくれますが、それ以上の交流はありません。仕事が忙しいようで、ほかのお母さんたちともあまりお付き合いしていないようです。

正直に言って、もう預かりたくないと思っています。でも、息子と仲が良いことと、ご近所なので今後もお付き合いが続くと思うと、どういうふうに対処したらいいのかと悩んでいます。

回答

お子さんのお友だち、困ったものですねえ。こうしたことをする子どもの親となると、まずはどんな人なのか、気になりますね。へたに話をしたことで親からも反感を買ってしまい、もっと困ったことになったなんて、ありそうなことですから。

ただ、小3の男子というのは、昔からギャングエイジといって、そういうことを悪気なくやる時期であるとはいえます。いたずら盛りで、好奇心のまま行動するものなのです。それで注意されたり、叱られたりするなかで成長し、高学年になると多少なりとも分別がついてきます。

息子さんに友だちの行動の問題点を認識させましょう

ただ今回の場合は、すでにお友だちのお母さんとお友だち自身(あなたと息子さん)に注意されていてもいたずらが治まらないのですから、彼が自主的によくなってくれるだろうと期待するのは難しそうです。それではどうしたらよいのでしょうか。段階的に考えてみましょう。

まずは率直に息子さんに、その友だちを連れてこないように言いましょう。友だちの態度を理由にするのが難しそうなら、別の言い方を工夫します。たとえば、友だちとはいえ他人を頻繁に連れてくることは、家庭の生活リズムを崩すもとになりますから「家の決まり事としてそれはできない」と伝えればいいでしょう。

あわせて、人の家の中を勝手にさわる人がいい友だちがどうかを考えさせることも大切なことです。例として「わたしの友だちがやってきて、あなたの引き出しやタンスをさわってまわったらどう思う?」と話し、考えさせます。自分の友だちが親のものをさわっていてもそれを親の問題としてとらえていると、なかなか本気になれませんが、「もし自分が同じことをされたらどう思うか」を考えさせると、友だちの行為に対するとらえ方がちがってくるはずです。

また、他人が自分の家のものをさわることを家族が見逃しておくことで、それを息子さんが普通のことだと思うことにも問題があります。今度は息子さんが、その友だちや違う友だちの家で同じようなことをする可能性だってあり得るからです。これを機会に、他人の家に行ったとき、むやみに家のものをさわってはいけないということを教えておきましょう。

こうして息子さんが友だちにこれらのことを伝え、その後どうなるかを見れば、息子さんと友だちとの関係性も見えてきます。息子さんの思いをその友だちが受け止めてくれれば、当然そこでこの問題は終わりますし、友だちとしての関係性にも問題はないということになります。

親同士で話すときは、ていねいな言葉づかいを心がけること

しかしそれでも、その友だちが家に来て、同じようなことをし続けるとします。すると友だちづきあいそのものに注意する必要が出てきますので、いよいよ相手の親にこの件を伝えることになります。

まずはその親がどんな人なのか、知り合いなどにわかる範囲で聞いてみるといいでしょう。それなりに分別はあるけれど、とにかく忙しく、友だちに迷惑をかけていることをただ知らないだけの場合も多いはずです。そういう場合は、言葉づかいに注意は必要ですが、事実を淡々と電話で相手に伝えればいいと思います。すると「すみません、知らなくて。家で注意しておきます」などと返事をされるでしょう。その友だちも自分の親から注意されたとなれば、それなりに効果があるはずです。

けれども、まれに自分と自分の家族のことしか考えない人である場合もあります。そんなときは学校の担任の先生に連絡して、放課後の過ごし方として、「友だちの家などに遊びに行ったときは、他人の家のものに勝手にさわらないこと」などと指導してもらいます。これは家庭での生活への指導となりますから、学校は本来タッチしない領域です。しかしこうしたことはよくあることで、それを放置すると家の物がなくなるなど、厄介な問題に発展しやすいので、学校は指導してくれるでしょう。

学校の指導があったとなると、学級全体に「そういうことはしてはいけない」という雰囲気ができあがります。それから先方の親に連絡すれば、スムーズに話が進むでしょう。

いずれにしても、子ども同士のトラブルは親同士のトラブルに発展しがちです。まして相手に周囲との付き合いが少ないとなると、苦言を言うにも慎重になってしまいがちです。しかし、もめるときはもめますし、言葉使いをていねいにすることさえ注意しておけば、それほど大きなトラブルにはならないものです。慎重になりすぎて長引かせるよりも、むしろ早めに対応されるのがいいと思います。

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陰山英男(かげやまひでお)

陰山英男(かげやまひでお)

陰山英男(かげやまひでお)

1958年兵庫県生まれ。岡山大学法学部卒。
兵庫県朝来町立(現朝来市立)山口小学校教師時代から、反復学習や規則正しい生活習慣の定着で基礎学力の向上を目指す「隂山メソッド」を確立し、脚光を浴びる。
2003年4月尾道市立土堂小学校校長に全国公募により就任。百ます計算や漢字練習の反復学習を続け基礎学力の向上に取り組む一方、そろばん指導やICT機器の活用など新旧を問わず積極的に導入する教育法によって子どもたちの学力向上を実現している。近年は、ネットなどを使った個別の小学生英語など、グローバル人材の育成に向けて提案や実践などに取り組んでいる。
2006年4月から立命館大学 教授(立命館小学校副校長 兼任)に就任。現在は、立命館大学 教育開発推進機構 教授(立命館小学校校長顧問 兼任) 。全国各地で学力向上アドバイザーなどにも就任し、学力向上で成果をあげている。また、北は北海道,南は沖縄まで、全国各地で講演会を実施している。
過去には、文部科学省 中央教育審議会教育課程部会委員,内閣官房 教育再生会議委員,大阪府教育委員会委員長などを歴任。
著書多数。
Webサイト http://kageyamahideo.com/

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