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勉強がわからないと癇癪(かんしゃく)を起こす小2の娘/教えて! 陰山先生【第30回】

勉強がわからないと癇癪(かんしゃく)を起こす小2の娘/教えて! 陰山先生【第30回】

シリーズ30回目。学校のどの教科も好きになれない娘。家で宿題をやるときにわからないと手をつけられないほどの癇癪を起こす娘にどう対処したらいいのかという悩みに陰山先生が答えます。

質問

小2の娘が、癇癪を起こすので困っています。

お友だちが大好きで、学校へは楽しく行っているのですが、
どの教科の勉強も好きになれないようです。
宿題をするのがひと苦労で、わからないところがあると癇癪を起します。
こうなると手がつけられなくて、もう宿題どころではありません。

上の娘(小6)はそういうことがなかったので、娘が癇癪を起すたびに、途方に暮れてしまいます。

勉強以外で何か好きなものや得意なものを見つけたら、落ち着くのではないかと、水泳やピアノなど習い事をさせています。習い事自体を嫌がることはないのですが、とくに好きなわけではなさそうですし得意なことでもなさそうで、今のところ変化はありません。
娘は社交的な性格でお友だちと話したりすることが、唯一好きなことのようです。

勉強が嫌いなのは仕方ないとしても、癇癪を起さないようにする接し方や方法がありましたら教えてください。

夏休みの宿題も、どうやって進めたらよいのかと悩んでいます。

回答

お子さんの癇癪、たいへんそうですね。ご相談の内容を読んでみて第一に思ったのは、勉強に苦手意識を持っているのは、間違いなさそうだということ。しかし、それだけで癇癪を起すというのは過剰反応ですから、ほかに何か理由がありそうです。友だちとの関係がいいとなると先生との相性かもしれませんし、お母さんや家族の接し方に反発している可能性もあります。ここではいくつかの理由を想定し、対応を考えます。

「わからない」を減らして安心させましょう

まず一番に、学力不足は間違いなさそうですから、その対応を考えていきましょう。小1の学習は、生涯の学習でもっとも大切です。なぜなら、はじめて本格的な勉強をするので、ここで苦手意識ができてしまうからです。

まずは百ます計算(10個の数字がます目の縦横に並び、その数字が交差するところに計算の答えを書きこんでいく学習法)など、いくつか計算をさせてみてください。もし、くり上がりごとに指を使うなどして、計算に時間がかかってしまうようでしたら、お子さんにとって算数の学習は苦痛でしょう。

また小1の漢字がどれくらい書けるかということも確認してみてください。小1の漢字は日常生活に使う漢字ばかりです。もしも、あまり書けなかったとすると、国語の学習も苦痛に感じているはずです。

こうした小1の学びそびれは多くの子にあるものです。ですから過度に心配されることはありません。だからといって放置もできません。

夏休み中に学研の「早寝早起き朝五分ドリル」小1のものをやらせてみてください。このドリルの内容は基礎的なものですし、量も多くありません。ですから癇癪は起こしにくいはずです。しかも、重要な問題をおさえていますので、きちんとやれれば、勉強に対して安心感が持てるようになるはずです。

先生や家族への不満が原因のことも

次に考えられるのは先生との相性です。体育や図工などの教科もやる気にならないとなると、先生と相性が合わないということが考えられます。もし、小1のときは癇癪がなく、学年が上がり、担任の先生が変わってから始まったのなら、先生との関係性が要因となっている可能性が高いでしょう。

先生との相性がよくない場合、低学年だと子どもは自分の方に原因があると感じがちです。
すると、自分のつらさをおもてに出すこともできず、それが癇癪という形になって出てきてしまいます。ですから、時間をとって子どもの言い分をゆっくり聞いてあげる必要があります。

もし癇癪の原因が先生との相性がよくないからだと判断されるなら、保護者の方がお子さんの気持ちを受け止め、どうしたら先生とうまくやっていけるか、先生との橋渡しになるように助言してあげるとよいでしょう。また、場合によっては先生に相談されることもおすすめします。

そして学年に関係なく、ずっと癇癪を起していた場合は、お母さんやそのほかの家族に不満を持っていることが考えられます。そういう場合は、子どもは家族から理解されていないと思っています。時間に余裕がないと、大人は子どもに合わせた生活ができず、子どもの気持ちを考えずに頭ごなしに指示ばかりしてしまいがちです。

上の子はできたのにと思うと、下の子への風当たりがさらに強くなることにもなりかねません。上の子の子育てというのは、ひとりを見ていればいい状態です。比較的負担が少ないのです。しかし下の子のときは、そうはいきません。十分に見てもらえない下の子は、不満を持つことになります。しかし親が忙しいとそのことに気がつけず、上の子はうまくいったのに下の子は……という思いになってしまうことが多いのです。

子どもの思いをしっかりと聞き、原因を探る

今の日本の社会は忙しいことが当たり前になっていますから、家族が悪いということではありません。でも、やはり、保護者が忙しくて子どもに時間を割いていられない状態を放っておくわけにもいきません。お子さんが安心して思いを話せるように、時間をしっかりとって聞いてあげることが必要です。

いずれにせよ癇癪というのは、自分の思いを受け入れてもらうことができないことから起きます。その原因がどこにあるか、ある程度でも特定しないと、対策のつもりが対策にならず、かえって悪化することもあります。

夏休みの宿題などをきっかけにして、じっくりと話し合いをされると解決の方向が見えてくるのではないでしょうか。

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陰山英男(かげやまひでお)

1958年兵庫県生まれ。岡山大学法学部卒。
兵庫県朝来町立(現朝来市立)山口小学校教師時代から、反復学習や規則正しい生活習慣の定着で基礎学力の向上を目指す「隂山メソッド」を確立し、脚光を浴びる。
2003年4月尾道市立土堂小学校校長に全国公募により就任。百ます計算や漢字練習の反復学習を続け基礎学力の向上に取り組む一方、そろばん指導やICT機器の活用など新旧を問わず積極的に導入する教育法によって子どもたちの学力向上を実現している。近年は、ネットなどを使った個別の小学生英語など、グローバル人材の育成に向けて提案や実践などに取り組んでいる。
2006年4月から立命館大学 教授(立命館小学校副校長 兼任)に就任。現在は、立命館大学 教育開発推進機構 教授(立命館小学校校長顧問 兼任) 。全国各地で学力向上アドバイザーなどにも就任し、学力向上で成果をあげている。また、北は北海道,南は沖縄まで、全国各地で講演会を実施している。
過去には、文部科学省 中央教育審議会教育課程部会委員,内閣官房 教育再生会議委員,大阪府教育委員会委員長などを歴任。
著書多数。
Webサイト http://kageyamahideo.com/

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