メニュー閉じる

「子育てが楽しくなる小さなヒント」⑦ 元AERA編集長・浜田敬子さんの著書から学ぶ「欲張り過ぎない子育て」

「子育てが楽しくなる小さなヒント」⑦ 元AERA編集長・浜田敬子さんの著書から学ぶ「欲張り過ぎない子育て」

学研キッズネット編集部と、元保育園園長で現在「花まる子育てカレッジ」のディレクターである井坂敦子さんがタッグを組んで、月・水・金の朝6時に配信している、音声プラットフォーム『Voicy』の番組「コソダテ・ラジオ」。月曜日配信のトークテーマ「子育てが楽しくなる小さなヒント」の内容を、いつでもお読みいただけるように記事化しています。さて、今回は「子どもへの親の期待」に関するお話です。

siro46/Shutterstock.com

あれもこれもの「幕の内弁当式」

元AERA編集長の浜田敬子さん。テレビのコメンテーターとしてもよくお見かけしますが、この方の『働く女子と罪悪感』という本を読んで感じたことをお話ししたいと思います。朝日新聞の記者から始まりAERA 初の女性編集長になるという、メディアの最前線で仕事をされてきたワーキングマザーの奮戦記です。

浜田さんは私と同じ1966年生まれ。いわゆる「平成元年入社」にあたり、数年後に通称「男女雇用機会均等法」が施行されたことで、「均等法世代」とも呼ばれます。それから30年以上が経ちました。

本には「こうあるべきから離れたらもっと仕事は楽しくなる」という副題がついていて、その中で、「この30年で何が変わったのか、何が変わっていないのか、なぜ変わっていないのか、これから変えていけるのか。それを考えるためにも、すでに歴史になりつつある私たち世代の物語が何かのヒントになればと思う」と書かれています。

浜田さんがAERA編集長になって行った一番大きな改革は、「大特集主義」だそうです。

それまでは、さまざまな興味を持つ読者に対し、何か1つでも見たいと思う記事があるように、あれもこれもと、「お肉・お野菜・鳥・魚・ご飯」が入った幕の内弁当のような、いろいろなジャンルの記事を載せた「幕の内弁当式」でした。しかしそれには、ニュース性の高さや記事の鮮度が問われます。

浜田さんが編集長になった頃は、スマホでネットニュースを読む人が増えてきた時代。新聞や雑誌の購読者が減り始め、紙からネットへの流れが大きく動き出した時でした。スピードでは、新聞に勝ち目はありません。

そこで浜田さんは、1つのテーマをいろいろな角度からじっくり掘り下げた「大特集主義」へと、編集方針をシフトされたそうです。

なんでもできる子はごく一部

M3nizz/Shutterstock.com

浜田さんの文章を読んで感じたのは、私が今、花まる子育てカレッジで配信している教育者の方たちの話と似ているなということです。

以前は、親が子どもに対して「幕の内弁当式」に、あれもこれもできて欲しい、国語・算数・理科・社会、できれば体育・音楽・家庭科も、まんべんなく高い点数を取って欲しいという気持ちが強かったり、それがいいことのように考えられている風潮がありました。

それが最近、「何か1つ強みがあることが大事」、「一番得意なこと、好きなことを大事にして、その子の個性を輝かせてあげたり、将来それが仕事に繋がるような強みに育ていってあげるといいですよ」という話が多くなってきたように感じていました。

これが、浜田さんの「幕の内弁当式から大特集主義へ」という編集方針の変化と似てるなと思ったのです。

あれもこれもできるタイプのお子さんというのは確かにいて、全体的に能力が高い上に、意欲もある。ただ、そんなお子さんはごく一部。ですが、そんな一部の素晴らしいお子さんだけがメディアに取り上げられがちです。

メディアに出ていると、「ああいうふうになるといいのか」というふうに、無意識のうちに思わされてしまうことがあるのではないでしょうか。なんだかそれを目指さなくちゃいけないような……。

それぞれの個性と魅力を見つけて

多くのお母さんには、たくさんのお子さんをいっぺんに見る機会というのはあまりないと思うのですが、私が保育園で仕事をしていた時には、300人ぐらいのお子さんを見ていました。

 300人の子どもがいると、それぞれ全然違うんですよね。やんちゃで元気があって、いつも走り回っている子もいれば、静かにじっと細かい作業をするのが好きな子もいたりします。

そうすると、やんちゃで走り回っている子に「じっとしていなさい」と言う気持ちにはならない。「あなたはもっと走っていて」となる。細かい作業を丁寧にするのが好きな子に「もっとスピーディーにやりなさい」とか「もっと大胆なことをやって欲しい」とも思いません。

なのに、わが子となるとそうはいかなくて、あれもこれもできて欲しい。幕の内弁当のように、あれもこれも詰めておいたほうが……、という気分になってしまいます。

強みは「1つ」だけでもいい

浜田さんの本の中に、「幕の内弁当式」から「大特集主義」に転換するきっかけになったエピソードがあります。作詞家の秋元康さんにお会いした時に、秋元さんから「心に残っている幕の内弁当がありますか?」と問いかけられたそうです。

それを聞いた浜田さんは、「確かに幕の内弁当は食べている時は美味しいと思うけれど、『これは美味しい!』と記憶に残るものではないな」と思いました。

例えばJR 東海道線のチキン弁当。唐揚げとチキンライスだけの組み合わせですが、すごく人気があって、印象に残って、「これだ!」という強さがあります。

1つのものが印象に残るというのは、そういう強さを持っているような気がします。浜田さんはその時に、強いテーマが1つバンっとあって、その1つをいろいろな角度から掘り下げていく「大特集主義」が読者を惹きつけると考えて、大きく舵を切りました。

子育てはわが子のことしか見えません。子どもにいいことをしてあげたいと思っても、1つにしぼってわが子の強みを育てたり、一番得意なことに時間をかけたり、さらに伸ばしてあげられるような声かけや時間の使い方はなかなか難しいのではないでしょうか。

そんなときに、幕の内弁当とは違う「これ一本でいく」という、強みを生かす方法もあると思い出して欲しいんです。とはいえ、幕の内弁当も素敵なお弁当で、それはそれでやっぱり立派。根強い人気もあります。幕の内弁当のほうがうちの子には合っているなという場合には、そちらを目指したほうがいいでしょう。

それぞれの子育てがあると思いますが、一度、「うちの子は幕の内弁当なのか、チキン弁当か」という視点で見てみるのはいかがでしょうか。

 

話し手/井坂敦子 構成/清野 直

記事の元になった放送はこちら! ぜひフォローしてお聴きください。

関連記事

▼井坂敦子 プロフィール

慶應義塾大学→ 雑誌『オレンジページ』編集部 →公式サイト『オレンジページnet』編集長 →小学校受験対応型保育園園長 →年間約100本の子育てや教育に関する講演会や対談を企画運営  英国留学中高校生女子とボーダーコリー3頭の母

中学校高等学校教諭一種免許状(国語) 保育士 食育カウンセラー 表千家師範

ーーーーーーーー

▼Youtube「花まる子育てカレッジ」https://www.youtube.com/channel/UCfq3lJKma1wFkjwfDMBj0CA

▼「花まる子育てカレッジ」https://www.hanamaru-college.com/

▼Instagramアカウント https://www.instagram.com/atsukoisaka082967/

▼「わが家の小学校受験顛記」https://storys.jp/story/15026

学研キッズネット編集部(がっけんきっずねっと編集部)

学研キッズネット編集部(がっけんきっずねっと編集部)

学研キッズネット編集部(がっけんきっずねっと編集部)

『学研キッズネット』は、1996年にオープンした小・中学生のためのWebメディアです。学研の子ども向け書籍や雑誌の編集ノウハウを活かし、子どもたちが安全に楽しめるサイトとして運営しています。
子どもたちのしあわせのために、家族のしあわせのために、有益な情報やサービスをお届けできるよう、いつも精一杯がんばっています。

PAGETOP