「子育てが楽しくなる小さなヒント」⑩ 中学受験、まず親が準備すべきコトとは?
学研キッズネット編集部と、元保育園園長で現在「花まる子育てカレッジ」のディレクターである井坂敦子さんがタッグを組んで、月・水・金の朝6時に配信している、音声プラットフォーム『Voicy』の番組「コソダテ・ラジオ」。月曜日配信のトークテーマ「子育てが楽しくなる小さなヒント」の内容を、いつでもお読みいただけるように記事化しています。さて、今回は「中学受験」に関するお話です。
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パパとの関係
以前、私が司会を務める「中学受験をアップデートせよ」というテーマのトークイベントがあり、「母親アップデートコミュニティ(HUC)※」のメンバーの方3人にお越しいただいて、中学受験について話していただきました。
中学受験のいろいろなノウハウや、お母さんの心の整え方、受験本番の期間での向き合い方など、具体的な話の中で、「なるほど」と感心して心に残った話があります。
3人の中のお1人が、「中学受験においてパートナーとどういうふうに接しているか」というテーマについて話されたときです。
その方には、小4の男の子、小2の男の子、年長の女の子という3人のお子さんがいました。まだ小さいお子さんもいて大変な中、小4の男の子はまさにこれから新小5になって、中学受験の課題がどんと増えるような状況です。
その方がパートナーの旦那さんについて、どういうふうに中学受験や子育てについて一緒に向かっていっているか話して下さいました。
まず、初めてのお子さんが生まれるとき、先輩ママに「とにかく子どもはパパっ子にするといいよ」というアドバイスをもらったそうなんです。「なるほど、とてもいいアドバイスをもらった」ということで、そのアドバイスを実行すべく、とにかく子ども達に対して、「パパってすごいよね」「パパって、ああいうことができてかっこいいよね」と、旦那さんがいないときに折に触れて褒めてきたそうなんです。
(※編集部注: NewsPicksの番組「WEEKLY OCHIAI」から、自発的に立ち上げたコミュニティ。2019年1月の番組観覧者を中心にコミュニティが発足し、「母親をアップデートしたい」という強い想いを持った約150名が結集。「have to」ではなく「want to」で生きられる母親を増やすための活動をしている)
パパは子育てに参加しづらい?
大抵の場合、ママと赤ちゃんは最初、一心同体。お腹の中から出てきてから、3時間おきの授乳やおむつ替えなど、24時間体制で一緒に生活しますので、ともするとパパは、その密着した生活のリズムについていけなくて、疎外感を味わうことも。「入っていけないな。僕もお世話したいけど、できないな……」と、仲間外れのようになりがちです。
その方の旦那さんも、始めのうちはそんな感じで「入っていけないな」という疎外感を味わっていたようなのですが、子どもが2人目、3人目と増えていくにつれて、いつも褒められていることで、変わってきたそうなんです。
子ども達から「パパすごい」と尊敬のまなざしで見つめられることもあり、「僕はそういうことは絶対やらないよ」と言っていた保育園の送迎なども、実際にはスーツ姿に抱っこ紐で赤ちゃんを送り迎えして、すごく楽しそうにされていたそう。「素敵なお父さんですね」とみんなから言われるような、子育てに参加してくれるパパになったというお話でした。
男性の送り迎えも当たり前に
私自身も働きながら子育てをしていたので、幼稚園の送迎を毎日していたのですが、夫が自営業で時間の融通がきくということもあり、3歳頃からは送迎はすべて夫がやっていました。
その頃は、男性が送迎をするというのはまれで、かなり目立っていたようです。お花の水やり当番という保護者担当の係もあったのですが、それも、ママたちに交じってやっていました。
その後、私が幼稚園の園長をしていた頃には、お父さんが仕事前にお子さんを連れてきたりと、送迎をするお父さんがチラホラ増えてきたなという印象です。
それが今は、近所の保育園の朝の風景を見ていても、違いますよね。お父さんが2割くらい。まだ少ないとはいえ、珍しくはありません。そういう子育ての風景が、ここ10年くらいでずいぶん変わったなと感じます。
日常の中で「数」や「重さ」を実感させる
先ほどのママが、もう1つお話しされていたことがあります。
子どもが小さいうちから、なるべく数や重さの「感覚」というものを、日常の中で味わえるように工夫してきたというお話です。
たとえば、ジャガイモ。1個100グラムだとして、「100グラムってこんな重さなんだね」と、数字だけの100グラムとは違う、実感の伴った100グラムを子どもに伝えようと、そのジャガイモでちょっとキャッチボールみたいなことをしてみる。「100グラムってこんな感じなんだね」と言ってみる。
たとえば、お米。「2キロだったらこの重さだね」や、「ペットボトル2リットルだったら2キロだから、同じ重さだね」というように、日常の中にある「量」や「重さ」を日々子どもに伝える。
あるいはピザを家族で注文して食べるとき、「じゃあ、いくつに切る? うちは5人家族だよ。ピザは丸いけど、5つに分けられるかな?」と聞いてみる。
子どもたちに任せてみると、まず半分に切って、そのあとお兄ちゃんが、その半分を「三等分にしてみよう」と6つに切ってくれたそうなんです。その方が「うちは5人家族なのに、6つだと1つ余っちゃうんじゃない?」と言うと、子どもたちが「パパは一番体が大きいから2つ食べるんだ。だからちょうどいいんだ」と……。
このように、日常的に子どもたちに「任せる」ような工夫をしているとお話しされていました。
親ができる中学受験の「下準備」とは?
数とか量とか広さの「感覚」はとても大事です。
たとえば面積を習ったときに、「1センチメートル四方は1×1で、1平方センチメートルですよね」という話をしますよね。子ども達は、「縦×横なんだな」というように、かけ算の九九ができると割とすぐ計算はできるのですが、面積換算のような「1ヘクタールは何平方メートルですか」、「1平方キロメートルは何平方メートルですか」といった単位換算になると、いきなり難しく感じてしまうお子さんも多いんです。
体積も、「1立方センチメートルは1×1×1だよね。それが1立方メートルになったら、何立法センチメートルかな?」というような単位変換が、小学校3年生くらいになると出てくると思います。
これらは、「何センチメートル×何センチメートルなのか」と、センチメートルに戻せばいいだけの問題ですが、そこで計算間違いをしてしまうことがありますよね。
そういうときに、「そうか、ヘクタールって100メートル×100メートルなんだな。100メートルは、100メートル走で走ったあの長さだな」や、「50メートルプールの2倍だな」などと、元々の長さ・広さの感覚を知っていると、間違ったときにも、「ヘンだな」と気づきやすいと思うのです。さらに、数字だけで考えるより、頭の中に具体的にイメージができて、理解しやすいはずです。
ですので、「ジャガイモ100グラム」や「2キロでペットボトルのこの重さだね」というように、具体的なイメージにすぐに置き換えられるお子さんというのは、算数をする上で、とても力強く学んでいけるのだろうなと、とても感心しました。
数字を1から10まで数える「数え上げ」のようなことは、幼稚園・保育園の年長さんくらいからしたりしますが、数え上げていくことで「数の多さ」みたいなものを体感できるのだと思います。それをすることで、数に対して親しみやすさが湧いてきて、算数に対しても距離感が縮まるのではないでしょうか。
「勉強」を、机の上でやるプリントやドリルだけに限定しないで、生活の中にある「使える学び」とリンクさせていくと、子ども自身の「学ぶ意欲」にもつながります。そして、そうしたことを日常のなかでしていく事こそ、親ができる中学受験や学習の「下準備」だと思うのです。
話し手/井坂敦子 構成/清野 直
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▼井坂敦子 プロフィール
慶應義塾大学→ 雑誌『オレンジページ』編集部 →公式サイト『オレンジページnet』編集長 →小学校受験対応型保育園園長 →年間約100本の子育てや教育に関する講演会や対談を企画運営 英国留学中高校生女子とボーダーコリー3頭の母
中学校高等学校教諭一種免許状(国語) 保育士 食育カウンセラー 表千家師範
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