「子育てが楽しくなる小さなヒント」⑯ 作文が苦手な子におすすめ!親子でできる対処法
学研キッズネット編集部と、元保育園園長で現在「花まる子育てカレッジ」のディレクターである井坂敦子さんがタッグを組んで、月・水・金の朝6時に配信している、音声プラットフォーム『Voicy』の番組「コソダテ・ラジオ」。月曜日配信のトークテーマ「子育てが楽しくなる小さなヒント」の内容を、いつでもお読みいただけるように記事化しています。さて、今回は「作文」に関するお話です。
大人も苦手な作文
作文や文章を書くのが苦手な子はどうしたらいいのでしょう? 大人でも文章を書くのが苦手な方はいますが、私が実践していた方法をご紹介したいと思います。
小学校1年生で文字を習い、2年生くらいから作文や読書感想文などの宿題が夏休みに出る学校が多いかと思います。私立の学校では、毎日、日記を書かせるところも。
子どもが書いたものを見て、「これじゃあな~」と思ったりすることも、あるのではないでしょうか? 「○○がありました。とても楽しかったです」といった、事実と感想は書いてあるのですが、ボキャブラリーが少なく、説明や言葉が足りないような……。親としては、ちょっと直したくなったり、ダメ出しをしたくなったりしますよね。
本が好きで、読書の経験がたくさんあるお子さんですと、スムーズに文章を書けたり、書くことに抵抗がなかったりするかと思いますが、大抵のお子さんが初心者です。
「何を書けばいいのかわからない」、「どんなふうに書けばいいかわからない」、「そもそも書くのが嫌」というような、やる気のあまりない状態だと思います。
そんな状態で原稿用紙や日記帳にいきなりぶっつけ本番で書こうとしますから、緊張感もありますし、何がなんだかよくわからず、ストレスがかかってしまいますよね。
最初に親子でやることとは?
そこで、うちの場合は、原稿用紙や本番用の紙に書く前に、軽く下書きのようなものを書いていました。子どもに書かせると「2回も書くの?」と抵抗にあうので、書くのは私です。
やり方は、まず、作文や読書感想文の課題テーマに合わせて、インタビューのように「どこに行ったの?」、「どういうお天気だった?」、「そばにいたお友だちは誰?」、「どんな気持ちだった?」と、子どもに聞いていきます。
子どもはインタビューされるのが好きなようで、そのときのことをちゃんと思い出して、いろいろ話してくれます。
「暑かったから汗をかいて、帽子の中が蒸れちゃった」や「石がいっぱいあるところを歩いたから足が痛くなっちゃった」、「でも休憩の時に水筒の水がすごく冷たかったから嬉しかった」など……。そうした一つひとつをとにかく聞いて、こちらが紙に書き出します。
テーマが遠足であれば、遠足の始めから終わりまでの様子をなんとなく全部聞いて、「その中で何が一番良かったかな?」と、さらに話し合う。「じゃあ、こういう感じの作文になりそうだね」などと子どもに決めてもらいながら、インタビュー内容を一緒に検証して作戦を練っていきます。
たとえば、「山道でお友だちが転んで、すりむいちゃった。でもその子は『平気』って言って最後まで歩いたからかっこよかった」など、そこに子どもが一番感動して心が動いたなら、「それを書くのがいいよね」という感じで進めていきます。
さらに、「それを書くなら、砂利道の話を入れたほうがいいんじゃない? 転びやすかったのかも」や「だいぶ疲れてきたから転んじゃったのかな?」など、こちら側が状況を聞いてあげて、「そうそう、それだよ」と子どもに決めてもらう。
そうした作業をした上で作文を書き始めると、「作文を書くことが嫌だ」、「何を書けばいいかわからない」、「書くのが不安」といった気持ちから、先に進めるのではないかと思います。
主観の中で生きている子どもたち
次に、書いたものを見せてくれるようであれば読んで、全肯定する。「遠足のこと、すごくよくわかるよ」、「面白く書けたね」というように、感想を伝えます。その時に、私がいつも心がけていたのは、「これなら、きっと初めて読んだ人でもわかるよね」という“言葉がけ”です。
子どもは主観の中で生きているので、「相手がどう思うか」というところまで考えが及びません。自分が書きたいことを書いて「わかってね」というのが主観で生きている子どもたち。作文は、主観をアウトプットして文章にすることなので、それが自然な姿ではありますが、小学校3、4年生になる頃には、もう少し読んでくれる人の気持ちに立って欲しいものです。
そこで、「読んでくれる人が面白いと思うかな?」や「びっくりするかな?」、「ここで笑ってくれるかな?」など、読み手がどんな気持ちになるかというのを想像させるような“言葉がけ”をすることを意識していました。
かけがえのない素敵な時間に……
作文や日記などの課題に親子で取り組むことで、書くことに苦手意識を持っているお子さんにとって「嫌な作文」、「義務のような宿題」だったものが、「お母さんとやるプロジェクト」のように、ちょっと前向きなものに変わってくると思います。
毎回そうやっているうちに、やり方が自然とお子さんの身に付いきて、作文を書く前にざっとメモをとって、そこから「こういうふうに書こう」と考えるようになったりします。初めは親子でやっていたプロセスが、だんだんひとりでもできるようになっていくのです。
文章を書く前に書く内容を整理する。これは、仕事などにも生かせる、大人でも使えるハウツーではないでしょうか。
文章を書き始める入り口の部分で書くことが嫌いにならないためにも、子どもひとりでは苦しい作業は、親子で一緒に考えて取り組んでみる。そして、一緒に達成感を持つということをおすすめします。
インタビューは、特に低学年であれば、本当によく話をしてくれます。その中で、とても素敵な表現をしてくれたり、思わず大人のこっちがびっくりするような詩的な表現を使ったりしてくれます。そうした言葉が出てくるのを楽しみに、作文前のやり取りをしていた覚えがあります。
それは、子どもが小さい時期だけのお楽しみ。とても貴重な時間なので、お茶でも入れながら楽しくインタビューして、文章を書く前の習慣にしていただけたらなと思います。
話し手/井坂敦子 構成/清野 直
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▼井坂敦子 プロフィール
慶應義塾大学→ 雑誌『オレンジページ』編集部 →公式サイト『オレンジページnet』編集長 →小学校受験対応型保育園園長 →年間約100本の子育てや教育に関する講演会や対談を企画運営 英国留学中高校生女子とボーダーコリー3頭の母
中学校高等学校教諭一種免許状(国語) 保育士 食育カウンセラー 表千家師範
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