Case 26 ぼっちが怖い/わが家のSNSトラブル ~ユカの事件簿~
わたしがユカを見て感じた「ぼっち恐怖」について、今回は書いてみたいと思います。
いつもつながっているのに、ぼっちが怖い子どもたち
前回は大学生のユカのひとり旅のエピソードを紹介しました。娘のユカは、ひとりで行った京都で、SNSに情報を発信しまくり、リプライを受け取りまくって、ひとりなのににぎやかに旅を楽しんでいました。
それを見てわたしは、目の前にいなくてもいつでも友だちといっしょのスマホ時代の子どもが、逆に「ぼっち」という言葉をつくり出してしまうほど、ひとりになることをとても怖がっているのが不思議になりました。
社会学者の土井隆義氏の著書によると、学校でひとりでも、SNSに仲間がいれば孤独に悩まないかと思いきや、逆に子どもは、学校でひとりにならないために家でも学校の仲間とSNSで連絡をとりあい、常にお互いを見張っているような状態になってしまっているといいます。
くわしい分析は専門家におまかせして、わたしがユカを見て感じた「ぼっち恐怖」について、今回は書いてみたいと思います。
ユカがぼっちを怖がったころ
ユカがひどくぼっちを気にしていたのは、大学入学から数カ月でした。
まず入学式。ユカにかぎらず新入生は、TwitterなどのSNSで同じ大学の合格者をさがし、会ったこともないその子たちとグループで入学式に出るのが普通です。
ひとりで行けばいいと言ったわたしに、ユカは、入学式ではすでにグループができているので出おくれたら仲間に入れない、と強く反論しました。
授業が始まっても
「ほかのSNSグループが授業でも固まっていて、わたしと話してくれない」
「今日はグループの子に会えなかったのでぼっち飯(ランチをひとりで食べること)だった」
など、ユカは毎日のようにひとりでいることの不安を口にしました。
そのうち、授業やサークルで顔見知りができるとグチは減り、ユカは「ぼっち飯だった」ではなく「お昼はひとりで食べた」と言えるようになりました。友だちと食べる日も、予定が合わなくてひとりの日もあると思う余裕が出てきたのです。
たぶんユカは、中高のクラスと同じ感覚で大学のぼっちを怖がっていたのでしょう。一日の大半を固定されたメンバーで過ごさないといけない中高生がぼっちになること、それは毎日続く逃げ場のない孤独かもしれません。
大学は、受ける授業も教室も登下校時間もバラバラの集まりなので、ひとりになるのがトラブルのしるしではないとわかったユカは、ずいぶんと気が楽になったのでしょう。
変化はユカのSNSへのかかわりかたにも現れました。あいかわらずスマホ漬けですが、すぐリプすること、すぐリプが来ることに執着しなくなり、友だちと長時間SNSでつながるのではなく、相手が忙しくても使える便利な連絡手段として利用するようになりました。
ぼっちプレッシャーのまんなかで
うまくいっていた友だち関係をリセットしないといけない節目は、中学、高校の入学やクラス替えでもやってきます。いま小学生や中学生の子どもたちには、ぼっちのプレッシャーが続きます。
新生活の始まるこの時期、スマホを持つ子どもたちは、新しい友だちと早く仲良くなろう、嫌われないように、とSNSが気になり夜中までスマホから目を離せなくなるかもしれません。SNSでいつでもつながれるからこそ、家にまでぼっちの恐怖がついてくるのです。
親は新しい環境に慣れるための過渡期と見守りつつ、お子さんが過度にSNSに振り回されていたら、子どものSNSへの接触を制限して、24時間つながったままの人間関係から子どもを離してあげることも必要でしょう。
子どもがぼっちを恐れる根本には、目の前にある教室が世界のすべてと思いこんでしまう視野の狭さがあります。
SNSを仲よし確認に使っているだけではなく、自分の世界を広げる力にして、よりよい学校生活を送ってもらいたいと思います。
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