Case 47 こちら現場です/わが家のSNSトラブル ~ユカの事件簿~
事件のたびに現場から送られる生々しい画像。いまや報道には欠かせませんが、ルールはあいまいなままです。
一億総「現場から」時代
数年前、娘のユカとわたしのSNSの使いかたが全くちがうと痛感したのが、なにかが起こったときの情報の集め方でした。電車がおくれたときに、電車の運行状況のサイトを見たわたしと、Twitterで検索したユカ。ユカはわたしより早く「○○駅で車両故障だって。もう動き出したって」と現場のツイートをゲットしました。
いまでもわたしはTwitterで情報がうまく見つけられないのですが、ユカは今日の寒さからアイドルグッズ販売の行列の長さまで、器用に現場の情報を手に入れて利用しています。
いまや、だれもがどこからでも画像つきで情報を発信できる時代です。ちょっとしたトラブルでも、現場のだれかにすくいとられて、ネットの海へと流れていきます。
その情報はだれのもの?
今年の成人式当日に晴れ着の業者が店舗を突然閉鎖した事件は、記憶に新しいと思います。このときは被害者のツイートから火がつき拡散され、大きなニュースになりました。リツイートされたツイートで事件を知った同業者が救済を申し出て、成人式に間にあったかたもいたようです。
そのほかにも、山の噴火に遭遇した人の撮影した動画がニュースでくりかえし流れたりと、現場にいた人の発信をニュースが追いかけて報道する流れも多くなっています。
現場の発信より早いものはないし、その情報は真実を知るために役立ちます。その一方、それらがSNSに流れる影響は小さくありません。
命の危機を感じて助けを求めたり、衝撃的な光景を仲間に見せたり……発信当初はごく親しい人向けで、内容に配慮する余裕がないこともあるでしょう。しかしネットの性質上、いったん話題に火がつけば、本人(のSNS上)の個人情報や、画像に写りこむやじ馬から生々しい被害者の姿まで、同意なしに広くネットを介して見られることになります。
また、SNSに投稿された事件・事故の情報や画像は、テレビで報道する際に許可がいるのかについても、議論がつづいています。これらは個人のものなのでしょうか、それとも公共のものなのでしょうか。SNSがガイドラインを定めていても、人々の常識という点では、あいまいなままほったらかしです。
はっきりしたルールがないまま、高性能の情報発信ツールであるスマホは大人から子どもまで行きわたろうとしています。「これが常識」といえるルールが浸透するまで、スマホ世代は模索を続けていくことになりそうです。
大事なのは、命を守ること! SNS発信はそのあとです
ところで、これは実際に火災発生の瞬間、その現場を通りかかった高校生の体験ですが、居合わせた人のなかでまっさきに消防に通報したのはなんとその高校生で、大半の通行人は、火災の写真を撮るほうに夢中になっていたそうです。スマホが電話だということを忘れたのかなあ、と皮肉交じりに話してくれました。
男子中学生の将来なりたい職業の上位に「YouTuber」があがり、「インスタ映え」が流行語になる時代です。現場の状況や画像をSNSにアップすることを、子どもたちが正しくてカッコいいことと感じていても不思議はありません。
でも、なにかが起こったとき、通報や救助そして自分の安全確保が最優先なのはあたりまえのはず。子どもたちの心のなかでこれらの大切なことが二の次にされて、SNSに発信することがいちばんにならないよう、あらためて子どもたちに伝える必要があるでしょう。
しかも、さきほどの火災現場には大人がたくさんいたという話です。
大人だってできてないじゃん、と子どもに言われないよう、自分の行動を見直すことから始めないといけないようです。
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