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子どもの困った行動をやめさせたいなら/くやまない、悩まない、自分を責めない――心がラクになるアドラー流子育て【第25回】

子どもの困った行動をやめさせたいなら/くやまない、悩まない、自分を責めない――心がラクになるアドラー流子育て【第25回】

アドラー流子育ては、問題行動の目的を考え、子どもたちが健全に育つよう勇気づけします。「しかられるからしない」のではなく、「ほめられるからする」のでもなく「適切ではないからしない」あるいは「適切だからする」と、自ら考え行動できるように導くのです。子どもたちがみな、自ら考え、判断し、行動する子になってほしいものです。

アドラー心理学との出会いは、生徒たちの問題行動

わたしがアドラー心理学に出会ってから、今年で28年になります。公立中学校の教員だったころ、たまたま校内研修で学んだのです。

新採用のころわたしは、いわゆる「荒れた学校」に勤務していました。もちろん、素晴らしい生徒も大勢いました。けれども、一部の生徒が授業中に勝手に教室を出てしまったり、教師に暴言を吐いたり、暴力的になったりする、そんなことが起こる学校でした。

わたしは音楽の教科を担当していましたが、授業中におしゃべりするのはあたりまえ。「歌ってみよう」とわたしが言っても、蚊の鳴くような声だったり、クラスによっては全く無視されることもありました。

授業が全く成立していなかったのです。

「つまんねえ」そう言い放って、教室を飛び出してしまう生徒もいました。

そんなときわたしはその生徒を追いかけ、説得して連れ戻すようにしていたのですが、全く耳を貸すこともなく、そのままいなくなってしまう生徒もいました。そんな生徒とのやりとりに、心身ともに疲れ果てました。

でも意外にも、そんな心のすさんだ生徒でも、1対1で話すと、とても素直な面があり、授業以外で話をすると、とても良い笑顔を見せてくれることがありました。

このことを通して、

「この生徒たちがこんな行動をするのは、きっとそれなりの理由があるに違いない」と考えました。

その理由は、「かまってもらいたい。認められたい。注目されたい。愛されたい。」ということではないかと、自分なりに仮説を立てていたのです。

生徒の問題行動の目的はなにか? と考える

校内研修で、はじめてアドラー心理学を学んだとき、講師の先生が話してくれたのが、まさにこのことでした。

「人は目的のために行動する」

「問題行動の目的は『注目』である」

この言葉は、わたしにとって衝撃でした。わたしの立てていた仮説を、アドラーは100年も前に論理的に説明していたのですから。

みなさんのお子さんは、ここまでの問題行動をするわけではないかもしれませんが、すこしでも問題行動を起こしているのだとしたら、その目的について考えてみると良いでしょう。

先日、こんな相談を受けました。

「うちの子、3歳なんですが、散々注意しているのに、いつも食べ物以外のものを口に入れてしまいます。危険だからやめさせたいのですが」

これも、問題行動の1つと考えられますね。では、これをやめさせるには、一体どうすれば良いのでしょうか?

問題行動に注目しないこと

3歳といえば、ある程度の理解力もあるはずですね。それなのに食べ物以外のものをなんでも口に入れてしまうことには目的があります。

それは「お母さんに注目してほしい」です。

つまり、注意をすればするほど、注目してもらえているのだと思い、もっとその行為をしてしまうことになります。人は注目されるところが強化されていきます。

冒頭に書いた、教室を出てしまう生徒も同じです。教室を出れば、先生やクラスのみんなから注目されるので、注意をすればするほど、もっとやってしまいたくなるのです。

では、それをやめさせたいなら・・・

そうです。このような問題行動に注目しないことです。

もちろん、命の危険があるようなものを口にしたときは注意しなければなりませんが、それ以外で、多少衛生的でないと思われるようなものを口にしても、あまり口うるさく言わない(注目しない)ようにしてみてください。

 こんなことをしていても、お母さんは注目してくれない。ならば、違うことをしよう! もっと良いことをしてみよう。

というように、子ども自身が考えるのです。

しかるでも、ほめるでもない導き方

アドラー流子育ては、問題行動の目的を考え、子どもたちが健全に育つよう勇気づけします。

「しかられるからしない」のではなく、「ほめられるからする」のでもなく「適切ではないからしない」あるいは「適切だからする」と、自ら考え行動できるように導くのです。

子どもたちがみな、自ら考え、判断し、行動する子になってほしいものです。

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松井美香(まついみか)

松井美香(まついみか)

松井美香(まついみか)

東京音楽大学ピアノ専攻卒業。「勇気づけの音楽家」。大学卒業後約10年間公立中学校に勤務。その頃偶然、教員研修でアドラー心理学に出会い、岩井俊憲氏の元で学び約25年が経過。自身のピアノ教室や子育てにおいてアドラー心理学を実践する中、子どもたちが音楽や部活動を続けながらも有名大学に続々と合格し夢を叶えている。長男(21歳)と双子(18歳)三人の男子の母。現在、保護者や音楽指導者に向け、執筆やセミナーを通して「勇気づけの指導法」を広める活動をしている。

*学研「おんがく通信」にて、コラム「勇気づけのピアノレッスン」連載中

*学研プラス出版「あなたの想いが届く愛のピアノレッスン」にて、手記「ある教室のささやかなサクセスストーリー」を執筆

松井美香公式ホームページ:

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