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情報活用の得意と苦手/データで読み解く、子どもとスマホ【第50回】

情報活用の得意と苦手/データで読み解く、子どもとスマホ【第50回】

前回に引き続き、文部科学省の情報活用能力調査(小中学生、H25年度実施)をもとに、子どもたちの情報活用能力を読み解いていきます。

情報活用の実践力、整理された情報の読み取りは得意

前回に引き続き、文部科学省の情報活用能力調査(小中学生、H25年度実施)をもとに、子どもたちの情報活用能力を読み解いていきます。

この調査では、情報活用能力についてさらに細かく、「情報活用の実践力」「情報の科学的な理解」「情報社会に参画する態度」の3つの観点で整理しています。

出典:情報活用能力調査の結果概要 (平成25年 文部科学省)

今回は、情報活用の実践力についてくわしく見ていきましょう。情報活用の実践力の構成要素

  • 必要な情報の主体的な収集・判断・表現・処理・創造
  • 受け手の状況などを踏まえた発信・伝達
  • 課題や目的に応じた情報手段の適切な活用

となっています。大雑把にまとめると、情報を受信して使いこなし、発信する力と、そのための情報手段を選ぶ力、というところでしょうか。保護者の方が「情報活用の力」と言われたときに、真っ先に思い浮かべる力といえます。

この観点で出された問題の通過率(通過率とは、正答+準正答の割合。準正答とは、記述式問題等で正答の条件のうち一部を満たしているもの)を分析すると、興味深い姿が見えてきます。

まず得意なことから紹介します。小学生・中学生とも、整理された情報を読み取ることができています
整理された情報を読み取ることができた小学生は約6割、中学生は約8割でした。

整理された情報とはどういうものなのかイメージしやすいように、公開されている小学生向けの問題をみてみましょう。

出典:情報活用能力調査結果第4章

下部にある表組みの部分が「整理された情報」です。だれの発言なのかは整理されていますが、話している情報はバラバラ。現実にもありそうな設定ですね。保護者の方も、意外に読み取りが大変だと感じられたのではありませんか? この問題、小学生の通過率は62.4%。わたしは立派な数字と感じます。

中学生の2人に1人は複数ページから情報の読み取りができず

次は、課題について。小・中学生ともに、複数のページから特定の情報を見つけ出し関連付けることは苦手です。画面の構成が異なっている複数のウェブページから目的の情報を読み取ることができた小学生は約2割、中学生は約4割でした。

公開されている中学生向けの問題はこのようなものです。

出典:情報活用能力調査結果第4章

さまざまなページでそれぞれ独自のフォーマットで情報が発信されているなかから、「熱中症」についての情報を読み取る問題です。 中学生の通過率は43.7%で、2人に1人は情報の正確な読み取りができなかった、という結果となっています。

インターネットにはさまざまな発信者による無数の情報がいきかっています。なにかを調べるときに、複数の情報源でチェックすることは、情報リテラシーの基本。けれども、自分がなにを調べたいのか明確にイメージしてから情報源にアクセスしないと、いつの間にか目的を見失ってしまったり、たまたま目にしたページの情報や主張にひきずられたりすることもあるでしょう。

調査結果をみる限り、義務教育の年代の子どもたちの情報リテラシーはまだ発達段階にあるようです。

※情報リテラシー……リテラシーとは「読み書きができる」という意味。情報リテラシーとは、与えられた情報を適切に理解・分析し、活用する力のこと。

情報の発信では、受け手を意識した表現が苦手

情報を発信・伝達する力に関する問題では、小学生・中学生とも、扱う情報や情報手段の特性を理解し、受け手を念頭においた表現方法を工夫することに課題があります。 プレゼンテーションソフトで文字や画像を使いスライドを作成する問題では、中学生向けにこのようなものが出題されました。

出典:情報活用能力調査結果第4章

地域の祭りに中学校として出展するという前提で、その内容をアピールするスライドを作成するという問題です。本格的ですね。

正答となるのは

① 見出しが入力されている
② 中学1年生から3年生までの情報(イラスト、テキスト)がそれぞれ配置されている
③ 工夫した点が書かれている

の3つ条件を満たしているものです。

中学生の回答のうち、3学年分の情報をスライド上にまとめ、その工夫を述べることができた、つまり①②③すべてを満たした正答の割合は18%。5人に1人でした。 準正答である③の工夫した理由が書かれていないものは20%で、伝えたい意図を込めたスライドを作成できたのは、中学生の約4割にとどまっています。

スライドの作成技術に目が行きがちですが、本質的に大切なのは「読みやすくて、ぱっと見てわかりやすくて、ヌケモレのない状態で発信しよう」と思う心と、それを実現するための頭の整理で、これは一朝一夕にできるものではありません。

情報の発信にあたって、受け手が理解しやすいように工夫したり、情報を整理したり、必要とされている要素を不足なく満たす力は、これからの時代をになう子どもたちにとってとても重要。家庭においても少し意識をしておいたほうがよさそうです。

 
【出典】
文部科学省 情報活用能力調査の結果について

 
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 渡邉純子(コドモット)(わたなべじゅんこ)

 渡邉純子(コドモット)(わたなべじゅんこ)

渡邉純子(コドモット)(わたなべじゅんこ)

株式会社コドモット代表取締役社長。
NTT在籍時代の2001年、子ども向けポータルサイト「キッズgoo」を立ち上げ、同サイトでデジタルコンテンツグランプリ・エデュテイメント賞受賞。独立後は小学生向けのコンテンツを中心に、企業の子ども向けWebサイトや公共団体の子ども向けツールなどの企画制作を数多く手がける。一男一女の母。

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