中・高の「地理」「地理総合」の授業にAR技術を使った地球儀「ほぼ日のアースボール」を取り入れた実践例【女子美術大学付属高等学校・中学校】第4回
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スマホやタブレットをかざすとさまざまな情報がとびだす地球儀「ほぼ日のアースボール」。日本で唯一という「美術大学の付属校」女子美術大学付属高等学校・中学校では、「地理」や「地理総合」の授業でこの地球儀を使っています。
生徒自身でアースボールのコンテンツのアイデアからデザイン、実装するまでを具体的に考えていく授業を行っているそうで、どんなふうに授業を進めているのか、地球儀の活用法や授業の実践例を5回に分けてご紹介します。第4回目の今回は、先生がつかんだ指導のポイントや生徒によるプレゼンについて伺っています。
※この記事は、「ほぼ日」の連載記事をキッズネット用に一部変更して転載しています。
人物紹介

話し手=近藤先生
女子美術大学付属高等学校・中学校 教諭。中学校社会科および高等学校地理を19年間担当。専門は教育地理・開発教育実践。「ほぼ日のアースボール」をファーストモデル(ビーチボールタイプ)の頃から授業に使用。

聞き手=松田さん
2023年9月より「ほぼ日」乗組員。「ほぼ日のアースボール」担当者で、アプリの企画開発などに携わる。今回、教育現場でのアースボールの活用法を研究すべく「ハカセ」に扮し学校を訪問、インタビューを行う。
長年かけてつかめてきた“指導ポイント”
あえて地理的なテーマには絞らない
松田さん:女子美付属では、美術の授業が多いんですか?
近藤先生:高校1年生で美術史を含めて週に7時間、美術の授業があります。高校2年生と高校3年生では週に10時間。英語の授業は6時間くらいなので、圧倒的に美術の授業時間は多いですね。
ただ、女子美付属の生徒たちは週6日授業があり、生物や物理や数学もやってるんです。あくまで普通科の学校で、美術科ではないので。ただ各教科に美術的な要素をいろんなふうに盛り込んで、生徒たちの気持ちを上げてますね。
松田さん:「ほぼ日のアースボール」のコンテンツを企画して考える地理総合の授業は毎年、高校3年生がやるんですか?
近藤先生:カリキュラムが変わるまでは、毎年3年生で取り組みます。私もだんだん指導ポイントがわかってきて、すごく良い感じになりましたね。
松田さん:やっぱり、地理の授業っていう印象じゃないですね。
近藤先生:そうかもしれません。ただベースには、データを調べることとか、立地を調べることとか、地理的な要素をやっぱり絡めています。
松田さん:そこは採点基準に入ってるんですもんね。
近藤先生:そうですね、採点のポイントになります。ただ、テーマは絞らない。かつては地理の学習に使えるもの、というようにテーマを縛った年もありました。でもね、そうするとね、面白くないって言っちゃいけないんですけど、内容が偏ってしまうんですね。火山とか海流とか、すごくいいんですけど、ここまでお話ししてきた世界のミュージアムやお祭り、犬みたいにバラエティーには富まなくなってしまって。

松田さん:確かに、種類が減りそうです。
近藤先生:だから、基準をどこまで決めるのがいいかの手探りを毎年しながら、今に至っています。ちょっとずつ変えて、どれがいいのかなあと試行錯誤を重ねながら。
アナログの要素を残す
松田さん:2025年度は、特に制限なく新コンテンツを作ろうっていう形でやったんですか?
近藤先生:武器とか墓とか、“ネガティブ”なものはだめ、としました。ネガティブをOKにした年もあったんですが。次は、特定の1つの書籍からとるのはだめにしようかなと思ってます。よい本であるほど、それ自体の完成度が高いので、コンテンツの内容で新たな発展を持たせることが難しいんですよね。それはやっぱりもったいないと思っています。
昔は、国・地域の観光大使になるという課題をやってたんです。そのときは生徒たちはiPadを持ってなかったので、そのプレゼンも3分だったんですけど、3分のためだけにモンゴルの民族衣装とか、すっごいものを作ってきていました。
そういうアナログならではのよさもあって。今は逆にデジタルに偏りすぎてるというか、全部簡単にできちゃうので、だからこそ、アナログのよさとして、自分の手で作ってみるとか、叩いてみるとか、飲んでみるとか、そういうのができるプレゼンにしたいなと思っています。

高3の時期にプレゼンをする意味
高校生活で培ったものが花開く
近藤先生:女子美付属ではどの教科でも生徒が調べた内容をプレゼンしていく授業はありますが、1人プレゼンが多いんですよね。グループでのプレゼンもありますけど、なんかこう、カチッと決まってるものが多い気がします。
女子美付属では高校3年生は2学期の後半から卒業制作が始まるため、美術一色になります。なので、高3の時期にプレゼンさせる教員はいなくて、大変な時期に私はプレゼンさせているんですけど、そのかわりけっこう時間を使ってやる。
自由にプレゼンさせる、高校最後の機会です。進路を見据えながら課題に取り組む、高3の時期だからこそ完成度が高く、私のツッコミにも耐えて、実現できる。

近藤先生:感想も書かせているんですけど、1個の班が、すごい大変だったと。私が「それって面白いの?」って言ったらしいんですよね。それがすごく響いて、「面白さってやっぱり大事だ」みたいに思って、そこから何かが開けたって書いてあって。発言もいろいろ気をつけようと思いつつも、そうやっていろんな発見をしながらやってくれてるっていうのがよかったなあって思います。
松田さん:ほんとうに大変な授業だと思いますが、地理もわかるし、観光大使になるのも面白いけど1つの国のことしかわからない。でも地球をテーマにする方法だと、いろんな国のことがわかりますね。
近藤先生:そうなんです。高3らしい課題だと思います。
“楽しさ”から生まれるもの
松田さん:地球や国のことを数字で見てやると、地理が算数・数学とも繋がって、ほんとうに楽しそうだなって思います。
近藤先生:いろんな教科のつまみ食いをして、データも扱って。これは去年のですけど、ダンスをテーマにした班があって……。
松田さん:世界のダンス。いいですね。あー、絵もすごい。

近藤先生:これはレポートの別冊です。英語版も作ってきてくれて。ユーザビリティを高めるために、日本語だけではだめだっていうので、押したら切り替わるボタンがついてるんですよね。文章も含めて全部考えてきてる。
松田さん:楽しくて、ここまでしっかり描いてくださってるんですよね。
近藤先生:そうなんです。これはもうね、ほんとに彼女たちの趣味ですよね。この時期は職員室に生徒たちが来て、毎時間けっこう質問の嵐で。でもお互いに楽しみながらやっています。今年いちばん大変だったのは「文様」。すっごい大変だった。ちょっとトラウマになるぐらい大変でした。
松田さん:リストには「世界の動物文様」って書いてありますね。
近藤先生:まずは、いろんな文様があるからそれをテーマにしたい。すごくいいですよね、歴史もわかるし、文化もわかるし。でもじゃあ、その文様ってすごく種類があるけど、何を基準に選ぶのか?というところでつまずきました。ネットだと情報が不確かなので、書籍を調べる。女子美なので、大学に書籍が揃ってるんですよね。研究書もすごく多くて。
松田さん:確かに、美術系ならではっていう感じがしますね。

近藤先生:そうなんです。すっごく揃っているんですけど、ありすぎて困っちゃって。で、何を基準に選んだらいいですかって言われて、「えーっ!?」と。「何かなあ……」なんて言って、この班とはものすごく話をしましたね。
最終的には「動物」の文様にしようというふうに決まりましたが、動物っていう選び方にもっていくまでに、たぶん1か月以上かかって。花にしようか、宗教にしようか、でも宗教だと、特定の宗教だけに偏るのはよくないよねとか……そんなふうに話をして。
松田さん:あんまり意識してなかったんですけど、文様ひとつでも、選ぶって大変ですね。この授業は、去年の例といったヒントなしに始まるんですか?
近藤先生:一応「レポートはこんなのがあるよ」ぐらいは言うんですけど、基本はヒントなしです。ただレポートがすごく良い班が、良いプレゼンをするとは限らないんですね。逆にレポートが今ひとつでも、良いプレゼンになるっていう場合もあって。そこも面白いのかなあと。

第1回 「ほぼ日のアースボール」を授業で使うようになったきっかけ
第2回 高3「地理総合」で生徒たちがアプリ用のコンテンツを考案
第3回 テーマ選びとコンテンツ制作の課題授業で養われる“力”
ほぼ日のアースボール
AR技術を活用し、スマートフォンやタブレットをかざすことでさまざまな情報を知ることができる地球儀です。衛星データをもとに、最新の雲や雨量、気温、風の動きなどがダイナミックに浮かび上がり、子どもたちの興味を引きだす学習ツールとして期待されています。国境や国名の記載がない直径15cmサイズのモデルと、世界の国々がカラフルに色分けされた直径20cmのモデルがあり、どちらも本体に軸やアームがなく、地球そのままの姿を知る・楽しめる地球儀となっています。

「ほぼ日のアースボール」チームでは、アースボール(新旧モデル問わず)を教育に使ってくださっている方や、興味はあるけれどどう使ってよいか分からない方からのご連絡をお待ちしています。ぜひみなさんのお声をお聞かせください。
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