「生 きものマップ」とは
鳥や昆虫、花などの生きものを見た場所を地図に記録したものを「生きものマップ」という。自分の街の「生きものマップ」をつくると、生きものを通してその場所の環境が見えてくるよ。
いつもは気にしないところををきめ細かく見て歩くことになるので、新しい発見もあるはず。さまざまな生きものとの出会いを通して、自分が住む街をもっと好きになれるにちがいない。
生 きもの探 しの準備 をする
どこの「生きものマップ」をつくるかを決めて、生きもの探しの準備を始める。場所の広さのめやすは、ゆっくり歩いて30分以内がおすすめ。家と学校の間や家と駅の間、公園、川など、よく知っている場所を選ぼう。
生きものを探す場所(フィールド)が決まったら、その場所の地図を手に入れる。地図に書きこむときに使うクリップボード(バインダー)や、見つけた生きものを記録したりスケッチしたりするためのメモ帳、筆記用具も用意する。
どんな生きものがいるか、予想しながら準備をしよう。野鳥なら、カラス(ハシブトガラス、ハシボソガラス)やスズメ、ムクドリは、街中でも見られる。よゆうがあれば、地図を持って下見もしておこう。家の並び方が地図とちがっている場所や見通しの悪い場所をチェックしておくと、「どこを歩いているか分からなくなった」と困らずに済むし、より安全に生きものを探せる。
準備 するもの
(1)地図
・「生きものマップ」をまとめるための地図(住宅地図がおすすめ)
・生きものを見つけた場所を書きこむための持ち歩き用の地図
(2)クリップボード
(3)メモ帳、筆記用具
(4)そのほか
・生きものの様子をさつえいするカメラ、生きものをよく観察するための双眼鏡や虫めがね、生きものの声を記録するボイスレコーダーがあると便利。
・熱中症予防のために、水筒も忘れずに。
生 きものを探 しにいく
前日までに準備を整えて、生きものを探しに出かけよう。おすすめの時間帯は、気温が高すぎない朝や夕方。早朝の公園なら、夜行性の昆虫やセミの羽化を見られるかもしれない。
いつもよりゆっくりとしたスピードで、たまに立ち止まって耳をすませたり、地図で場所を確認したりしながら歩こう。鳴き声をたよりに探すと、夏にはあまり活動していない野鳥も見つけやすい。ツバメの巣やセミのぬけがらなど、生きものの痕跡も探してみよう。
生きものを発見したら、どんどん地図に書きこんでいく。気になった生きものはよく観察して、「いつ」「どこで」「どんな生きものが」「何をしていたか」など、メモをとる。
名前のわからない生きものがいた場合や、メモに言葉で書くのがむずかしい場合は、写真をとったりスケッチしたり、ボイスレコーダーで鳴き声を録音したりしておく。そうすれば後で名前を調べられるし、「生きものマップ」をまとめるときに、観察したことをくわしく思い出せるよ。
「生 きものマップ」をつくる
歩きながら記録した地図やメモを見返して、地図を清書しよう。用意しておいた大きめの地図に、見つけた生きものの名前や観察した内容を書きこんでいく。フィールドではわからなかった生きものの名前も調べる。見つけた場所にシールをはったり、写真や絵をはりつけたりしても見やすくなるね。
できあがった「生きものマップ」は、きみのフィールドの大切な情報だ。先生や友だちに見せて、フィールドのみりょくを伝えよう。
発展 :「生 きものリスト」「生 きものごよみ」をつくる
夏休みに限らず、同じフィールドを継続して歩こう。秋になると、見られる生きものの種類や生活の様子はどう変わるだろうか。何度もフィールドを歩いて観察していると、ちょっとした変化にも気づけるし、はじめは見つけられなかった生きものも発見できる。
「1カ月に2回」などとペースを決めてフィールドを歩き、その場所で見られる「生きものリスト」や、それに「いつ見られるか」という情報を加えた「生きものごよみ」をつくってみると、いろいろなことが見えてくる。たとえば、「わたり鳥はいつやって来るか」「この辺りにはいつ、どんな木の実がなるか」がわかると、野鳥がどんな物を食べているかも予想できる。
「生きものリスト」「生きものごよみ」は、来年の自由研究のテーマにもおすすめしたい。何年も続ければ、温暖化のように地球きぼで起きている環境の変化を知る手がかりにもなるよ。
注意
・フィールドを歩くときは、大人といっしょに。
・自動車や自転車、歩行者のじゃまにならないように気をつけて歩こう。
・熱中症にならないように、水分をとり、休憩しながら歩こう。
・草木をふみつけたり、木の枝を折ったりしないように気をつけよう。
参考資料
○その場所の生きものや歴史、文化にくわしい「トコロジスト」になろう
『トコロジスト 自然観察からはじまる「場所の専門家」』.箱田敦只/著.日本野鳥の会/刊
○「生きもの地図」のつくり方にくわしくなろう
・『生きもの地図をつくろう 岩波ジュニア新書585』.浜口哲一/著.岩波書店/刊
・『生きもの地図が語る街の自然』.浜口哲一/著.岩波書店/刊
・茅ヶ崎市「環境マップを作ろう!」:
https://www.city.chigasaki.kanagawa.jp/kankyo/kankyougakusyu/1003369.html
○いろいろな街の「生きものマップ」を見てみよう
・神戸市「みんなでつくるKOBE生きものマップ」: http://commons.mypl.net/kankyou/biodiversity
・戸田市「生きものマップ」: https://www.city.toda.saitama.jp/soshiki/213/ikimono.html
・川崎市「かわさき生きものマップ」: http://kawasaki.geocloud.jp/webgis/biodiversity.html
監修 :公益財団法人 日本野鳥の会
「野鳥も人も地球のなかま」を合言葉に、野鳥や自然のすばらしさを伝えながら、自然と人間とが共存する豊かな社会の実現をめざし、活動を続けている自然保護団体。その場所の専門家である「トコロジスト」の養成にも取り組んでおり、講座では生きものマップのつくり方も学べる。
ホームページ:https://www.wbsj.org/