QuizKnock須貝駿貴さん「不思議」とは思わない“それでも勉強せずにいられない”理由とは

QuizKnock須貝駿貴さん「不思議」とは思わない“それでも勉強せずにいられない”理由とは

「世界は科学でできている」。QuizKnockや国立科学博物館のサイエンスコミュニケーターとしての活動を通して科学の楽しさ、おもしろさを伝え続けている須貝駿貴さん。

じつは普段から「不思議さを感じたことはあまりない」というから驚きです。

それでも「勉強せずにはいられない」という須貝さんは、子どもの頃から世界をどんな風に見てきたのでしょうか。

「なんで?」ではなく「なんかあるでしょ」が多かった少年時代

物事に対して「なんでだろう?」って思うことは、じつはあんまりないかもしれません。一方で観察はよくしています。その延長線上で「いつもと違うやん」とは思うけど、それが「なんでだろう?」にはつながらないんですよね。

小学校に上がる前くらいの頃かな。父親から「車と一緒に月がずっとついてくるのは何でやと思う?」と 聞かれたときも、「めちゃくちゃ遠いから。ついてきてるんじゃなくてそう見えてるだけ」と言っていた記憶があります。

おそらく、テレビなどを通して、非常に遠くにある物には“目の錯覚が働く”ということをたまたま知っていたんでしょうね。

たとえば「1+1=2」の計算も「マイナス×マイナスはプラスになる」という数学のルールも、そこにわざわざ「なぜ?」とは思わない子どもでした。学習の前提となるルールに対して、「それはそういうもんだから」と飲み込む傾向がありました。

ただ、普段からよく観察をしていたので、違和感には敏感だったと思います。ある冬の季節に広島に行ったらあまりにも晴れてて感動したことがあって。

僕の住む京都府の舞鶴は、冬は曇っていて雨や雪ばかりという天気だったんで、「自分の住んでいる場所とぜんぜん違う!」とかね。

その時、そういえば学校で“高い山脈が連なる日本海側の地域と太平洋側の地域の天気の違い”を習ったな、ということを思い出し、「なるほど」と実感を持って自らの知識に落とし込めました。

そのループを自然とこなしていたかもしれません。

学んではじめて目にはいる草花や星座の豊かさに気づく、ということがあるように、学んで観察し、現実で見つけることで知識は定着します。

直感的に違和感を覚えるといった気づきだけでなく、「学び」と「観察」の両方がそろってはじめて身につくのではないでしょうか。

「いつもと違う現象には原因があるにちがいない」という今の僕の信念は、普段の生活における観察で得た気づきと、理科や科学の勉強を通して、身につけていったように思います。

違和感に対して、「絶対なんかあるでしょ」と捉えて、勉強してその原因を知っていく人間なので、今でもドッキリは苦手。

想定外のことが起きても、「あー、なんかあるんやろなぁ」と受け止めるから驚けないっていう弱点があるんですよね(笑)。

教科書の内容は“世の中で起きている“基本的なこと

勉強に関しては、「下手の考え休むに似たり」と同じことがいえると考えています。

知識がない人間がいくら考えても時間のムダにしかならないという、ある意味ショッキングな言葉ですが、教科書レベルの知識がない状態で、物事を深く考えるのは難しいのではないかと思っています。

「教科書の内容は日常生活に関係ないから覚えなくたっていいや」と思う人もいるかもしれないけれど、じつは、教科書に載っている学習内容って、普段の生活に結びついていることがほとんど。

だから、教科書の知識をないがしろにしないほうが、物事や現象を断然、深堀りできます。

中学生の頃、初めて行った東京ドームで帰り際、扉を開けると強風が吹きこんできたときも、「風は気圧の高低差で生まれて、気圧の高いところから低いところへ吹く」ことを授業で習っていたので、「なるほどな」と復習を兼ねて体感しました。

少しかみ砕いて説明すると、「東京ドームはエアーを天井に送ってふくらませているから、ドーム内は気圧が高い。試合後にいっせいに扉を開放すると気圧の高いドーム内から低い外界へと一気に空気が流れるから、強い風が吹く」気圧の構造です。

都会を歩いていても「ビル風」の仕組みを知っていれば、「風の通り道がビルとビルに挟まれて狭くなったから風圧が上がったのかな」とか、「この風はあの高いビルにぶつかって、そこから吹き下ろしているのだろう」ということがわかります。

知識が増えることは、世界を深く理解することにつながる。

だから、教科書に載っていることは、覚えておいたほうがいい。素直にそう捉えるだけで、勉強に対する姿勢が変わると考えています。

教科書からの「学び」が基本。“観察から”世界が広がる

勉強は“どこから始まるのか”ということを考えてみると、わかりやすいかもしれません。

たとえば車がすでにある世界で「遠くまで速く行きたい」と試行錯誤をした場合、「丸の上に乗ると速く移動できる」といって車輪を“再発明”しますか?もう何千年も前からありますよね。

それなら車輪の理屈は知ったうえで、なんならエンジンについても分かったうえで「遠くまで速く行く方法」について考えましょうよ、と僕は思うわけです。

車の構造をまずは知識として理解したうえで、どうやったらもっと速く、もっと遠くへ行けるのか……。その発想がふくらむからこそ、飛行機やロケットの開発に行きつくんじゃないかな。

この工程のなかには、先人の考え方を知るということも含まれています。

勉強は知識を学ぶ行為であると同時に、考える行為を練習する場でもあるということ。その過程で抱いた疑問や違和感に出会ったとき、真相に迫るスピードが段違いに速くなると思っています。

世の中のほとんどのことって、すでに誰かが考えたり実践したりしてくれているじゃないですか。そこから、自分がどう新しいことを考えるか。それが大事だと思っているんです。

だったら、なんでなんで?と疑問を持つのも素敵なんだけど、そう思うためには、「学校の勉強」をしっかりしないと。

まずは空を見上げて実感してほしいですね。「晴れ、曇り、ときどき雨」といった天気も、それが「日本海側なのか太平洋側なのか」「夏なのか冬なのか」起こった原因を追究していくイメージです。

風の強さを肌で感じるのもいいし、セミやカエルの鳴き声をよく聞いてみるのもいい。旅行先で「あれ、このCM、地元では見ないなあ」なんて街頭広告なんかを観察してみるのもおもしろいと思います。

五感全部を使って感動したその先にある「あれ、なんかいつもと違う」という気づきを自分の中にためていく。

日常生活の中で感じた違和感が、教科書に載っている知識とつながっていくと自分が受け取ることができる学びが、もっともっと深いものになっていくと思うんですよね。

観察すればするほど、「学びの経験値」がたまっていく。僕は日常をそのように眺めすぎているのか、勉強するなと言われてもやめられません(笑)

 

取材・文/森下真理 編集/石橋沙織(キッズネット) 写真/鈴木謙介

須貝駿貴(すがい しゅんき)さん

須貝駿貴(すがい しゅんき)さん

須貝駿貴(すがい しゅんき)さん

1991年生まれ、京都府舞鶴市出身。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。学位は博士(学術)。知的エンタメ集団・2017年にQuizKnockに加入、自己紹介では「ナイスガイの須貝です」が定番のあいさつ。国立科学博物館認定サイエンスコミュニケータで、科学関連の企画が得意。自身のTikTok・YouTube個人チャンネルでも楽しく科学を学べるコンテンツを発信している。学部卒業時には「一高賞」を受賞したほか、2018年には日本物理学会で「学生優秀発表賞」を受賞している。

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