QuizKnock須貝さん「予測不能」から始まる「科学のおもしろさ」を子どもたちに

QuizKnock須貝さん「予測不能」から始まる「科学のおもしろさ」を子どもたちに

QuizKnockとしての活動を通して「科学の楽しさ」を伝え続けている須貝駿貴さん。YouTubeでの科学や物理にまつわる発信も人気を博しています。

須貝さんの考える「科学のおもしろさ」とはいったいどのようなものなのでしょうか?「自然」と「科学」の関係や、科学を楽しむヒントについてお話をうかがいました。

科学者としてわくわくする「非自明」という未知の現象

僕は「非自明」という専門用語が好きなんですよね。じつは、科学的に起こることって、目で見えている世界とは違う「普通じゃないこと」が根っこにある。

用語解説で言うと、「直感的な推測で予測不能な、物事の本質的な性質を表す」概念を指します。

少しむずかしいので、目の前にある「緑色の葉っぱ」で解説してみましょうか。

僕たちの目に緑色として見えているものは、緑色の色素を持っています。では、緑の色素は、なぜ緑色をしているのか。

理由は【植物は、赤色と青色の光のほうがエネルギーとして使いやすい】という光の原則があるから。

ここが僕のいう「非自明な現象」。「ん?なんで赤色と青色?」ってひっかかってもらえるとうれしいわけです。

じつは、「緑色に見える葉っぱの性質」をひも解いていくと、僕たちが見ている緑色って、光の反射によってそう見えているということがおこっています。

これは光の波長図でいう「可視光線」というもの。

葉が光を浴びたとき、赤外線に近い赤系統の色と、紫外線に近い青系統の色を吸って緑色だけ跳ね返しているから緑に見えているって不思議ですよね。

葉っぱば緑色に見えるしくみ

植物や藻類に含まれる緑色の正体は、クロロフィル(葉緑素)と呼ばれる天然の色素で、エタノールを使うと抽出することができます。

では、さらに発展問題です。

ほうれん草から抽出したクロロフィルを紫外線(ブラックライト)で照らすとどうなると思いますか?
そのこたえは、緑ではなく、赤。

ほうれん草のクロロフィルが赤く光る理由は、吸収した光のエネルギーの中から、使い切れなかったエネルギーが赤く放出されるから。

「緑色なのに赤!?」「まさか!」と思える「ワクワクした科学のおもしろさ」をわかりやすくかみ砕いて、多くの人に楽しんでもらえたらうれしいです。

光るアートで「緑葉素は」何色になる?【須貝さんYoutubeチャンネルより】

「人の暮らし」や「自然」を維持する「科学の存在」

当たり前じゃないことに面白みを感じるのが科学という話をしてきましたが、みんなが当たり前だと思っていることに、「自然 vs 科学」の対立もあるんじゃないでしょうか。

科学が自然の風景を損なっていくようなイメージは、みなさん大なり小なり持っているのではと思います。

ここはぜひ、みなさんに、人の手が介入しないありのままの自然の中で、人間は暮らしていけるんだろうか?という問いに、少し立ち止まって考えてほしいなと思っています。

たとえば、「日本の原風景」「自然っていいな」という田んぼや畑の風景も、科学と密接に結びついているという背景があります。

農業だってそう。作物の収穫率アップのための育て方や作物を植える時期、種類等も、科学技術によって成り立っている。品種改良もその例のひとつ。

1万年以上ある農業の歴史を通して、突然変異なども含めて作物は品種改良されてきたわけです。

過去にYouTubeで、「バナナの原種がまずい」という動画を紹介していますが、おいしいバナナって、おいしくない原種が、地道に交配を重ねた結果なんですよね。

品種改良で、おいしくて強い農作物を誕生させていること自体が「科学」。意外と知らない人が多いのではないでしょうか。

そう考えると、稲だって田んぼだって科学。

山だって同じ。人間が手入れしないと荒れ果てていきます。まったく手の入らない無垢な自然は維持がむずかしい。

野生の動物と同じ空間で人間が共存するための調整に、「科学」の力が働いていることも知ってほしいポイントです。

僕の信じる科学は“人を幸せにすること”に役立つもの

「科学」は結局、誰がどう使うか。そこが重要だと僕は捉えています。

科学はあくまでもツール。その科学をどう使い、どう生かすかというところに、人間の知性が活躍すると考えています。

この日の翌日が須貝さんのお誕生日。シャボン玉づくりにチャレンジしていただきました。
この日の翌日が須貝さんのお誕生日。シャボン玉づくりにチャレンジしていただきました。

刃物で人を傷つけることはできますが、包丁がないとご飯はつくれません。手段に善悪はないんです。

僕が科学を中心に発信したい理由は、ひろい目線で、科学的な思考や目線を身につけてほしいという想いがあるから。

「科学は基本的には人を幸せにするために役に立っていて、そのためのツールに過ぎない」というポイントが習得できたら、物事の見え方が確実に変わっていく。

そして、科学をめぐる問題は、「科学そのものに問題があるのではなくて、じつはそれをひき起こしている人間に原因がある」という点も忘れてほしくありません。

多角的な科学思考から、さまざまな社会の課題を解決していくという素敵な循環が生まれていくといいですよね。

科学を通して勉強することの楽しさや大切さって、みんなの知識が格段に増えるという相乗効果もあるわけですから。

「知らない」ことへの恐怖心が少なくなれば、SNSでときどき見られるような「自分の理解できない価値観について、短絡的に善悪を判断して攻撃する」ことも減ってくるんじゃないかな。

僕の一番大きな目標はシンプル。みんなにご機嫌で幸せに生きていてほしい。自分の強みである科学の発信で、笑顔が増えていくといいなと思います。

 

取材・文/森下真理 編集/石橋沙織(キッズネット) 写真/鈴木謙介 デザイン/曽矢裕子

須貝駿貴(すがい しゅんき)さん

須貝駿貴(すがい しゅんき)さん

須貝駿貴(すがい しゅんき)さん

1991年生まれ、京都府舞鶴市出身。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。学位は博士(学術)。知的エンタメ集団・2017年にQuizKnockに加入、自己紹介では「ナイスガイの須貝です」が定番のあいさつ。国立科学博物館認定サイエンスコミュニケータで、科学関連の企画が得意。自身のTikTok・YouTube個人チャンネルでも楽しく科学を学べるコンテンツを発信している。学部卒業時には「一高賞」を受賞したほか、2018年には日本物理学会で「学生優秀発表賞」を受賞している。

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