小1の息子が、作文を書けるようになってほしい/教えて! 陰山先生【第20回】
小1の息子が作文を書けるようになる指導法を教えてください。
質問
小1の息子が作文を書けるようになる指導法を教えてください。
先日、小学校で作文を書く授業があり、息子がワークシートを持ち帰ってきました。息子は最近のおもしろかったできごとを書くつもりで、「登場人物」「場所」「みんなが言ったセリフ」「思ったこと」などの欄にいろいろ書き込んで学校に持っていきました。
翌日、作文の下書きを持ち帰ってきたのですが、ワークシートに書いてある登場人物は一人も出てこないし、時系列がそろっていないどころか、息子の心象を羅列しただけの「ポエム」の状態で絶句してしまいました。
ワークシートから察するに学校が期待していたのは「いつ、誰とどこに行きました/何をしました。こんなできごとがありました。友だちがこう言って、わたしはこう言いました。楽しかったです」的な文章だと思うのですが、その意図を理解しないどころか、そもそも日記的な文章を書くことができていません。
どうやって教えたらよいのでしょうか。
回答
小学1年生で読書感想文が書けなくても問題なし
小学校1年生での作文指導は、そもそも文字学習がまだ万全ではない状態で文字を書くので、もともとハードルの高い学習だと理解しておく必要があるでしょう。お子さんが、登場人物や場所などの意味をきちんと理解し、それらの内容をリストアップし、文章化するのは大変高度な学習なのです。ですから、ポエムの状態でしか書けないのは、当然なことでもあるのです。重要なのは、
- 「登場人物」や「場所」というものの説明が、きちんと子どもに理解されているか。
- その項目にしたがって、子どもがそのことをきちんと思い描いているか。
- それらを1つの文章として、まとめる力が育っているかどうか。
と、いうことです。
以上のことができているかを確かめるためには、子どもたちが知っている物語で試してみると良いでしょう。
まずは、よく知っている物語で試そう
たとえば、『桃太郎』という物語の「登場人物」は、桃太郎、おじいさん、おばあさん以外にも、猿とキジや犬、さらには鬼も登場します。
そして、「場所」というのは、そのできごとがどこであったのかということ。桃太郎では、鬼ヶ島です。どこで戦いがあったのかを理解させれば、場所はわかってくると思います。
「みんなが言ったセリフ」は、登場人物が言ったことです。
そして最後に、桃太郎を読み終わって、自分が何を思ったかを言わせてみると良いでしょう。
このように、登場人物や場所、みんなが言ったセリフを書き出し、それらを時系列で並べましょう。物語を手本としながら、その真似をしていくのが良いと思います。
それができたら、最近の生活をもとに、簡単な文章を書くと良いでしょう。
たとえば、“友だちと学校で会って、「ブランコで遊ぼう」と誘われ、いっしょに遊んだ。ぼくはうれしかった”という文を書いたとします。
このなかでの登場人物は、自分と友だちであり、場所は学校。セリフは、友だちが「ブランコで遊ぼう」と誘ってきた言葉です。わずか一文の日記であっても、いくつかの要素を入れて文章化することができます。
このように、短い文章の中でも必要な要素を意識しながら書いていく。その練習をきっかけとして、次は、書きたい内容を子どもから聞き出し、そのときにいっしょにいた人を登場人物とし、場所をとらえ、そして誰が何を言ったのかをそのまま書き並べていけば、ようすを書き表すことができます。
そして、それはそのまま日記となっていくのですが、自分の気持ちをどのように表現するかという大きな課題が残ってきます。単純に、「楽しかった」と表現してしまえば、そこから発展性は出てきません。
陰山流・作文のワンランクアップ術
わたしは子どもたちに、楽しいと思ったとき、実際に声に出した言葉を思い出させ、かっこ書きで書かせる指導をしていました。
たとえば、“いっしょにブランコに乗って、高いところまでいけたとき、「すげー!」と声が出た。”というように、そのときの自分の言葉や動作をそのまま書き表わすのです。もう少し慣れてくれば、心の中でどんな言葉を言ったかを思い出させてみましょう。
しかし、心の中の言葉は、子どもはすぐに忘れてしまうものです。心の中に浮かんだ言葉を思い出させる練習をし、それを文字にします。実はそれこそが、楽しいと思ったことの中身になるのです。これらを日記学習の中でくり返していけば、心の言葉をすぐ思い出すことができるようになり、文章が上手くなっていく道筋になるのです。
また、登場人物の心情についても、その動作や言葉を思い出し、そのまま書いていけば、文章の量も増え、表現がより豊かになってきます。このように、観察したことを文字や文章にあらわす練習をくり返すことで、1年生でも文章能力は高まっていくのです。
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