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子どもに「片づけなさい!」と言う前に/くやまない、悩まない、自分を責めない――心がラクになるアドラー流子育て【第27回】

子どもに「片づけなさい!」と言う前に/くやまない、悩まない、自分を責めない――心がラクになるアドラー流子育て【第27回】

もし、あなたが片づけ上手な子どもになってほしいと願っているなら、お母さん自らが片づけ上手になることです。口うるさく言わなくても、お子さんは必ず片づけ上手になれますから、どうぞ心配しないでください。

子どもに片づけ上手になってほしいのなら

わたしには、すでに一人暮らしをしている3人の息子がいます。恥ずかしながら、彼ら全員、片づけが上手ではありません。理由は明らかです。わたし自身が片づけ上手ではないのです。

もし、あなたが片づけ上手な子どもになってほしいと願っているなら、お母さん自らが片づけ上手になることです。

これが、一番効果があります。
口うるさく言わなくても、お子さんは必ず片づけ上手になれますから、どうぞ心配しないでください。

片づけが得意ではないわたしですし、あまりえらそうなことは言えません。けれども、子どもは親の背中を見て育つのですから、これは間違いありません。

几帳面できれい好きのお母さんは、お子さんが部屋を散らかしたとき、
「また散らかしてる! 早く片づけなさい!」「ちゃんと片づけなさい。でないと、おもちゃを捨てるよ!」と、つい言ってしまうかもしれませんが、ちょっと待ってください。

そんな脅しで、片づけがうまくできるようになるわけがありません。

子どもが片づけ上手になるために、親は何をすれば良いのか、アドラー流の方法を紹介します。

アドラー流で考える部屋の片づけ

心構えとして大切なのは、自分自身が親として子どもの手本にならなければ、と言う気負いを捨てること。

先ほど書いた「お母さんが片づけ上手になりましょう」という内容と、一見矛盾するようですが、実はお母さんががんばりすぎることは、子どもたちに決して良い影響を及ぼさないのです。

がんばりすぎると、つい自分自身を追い込んでイライラしますよね。イライラすると、子どもにもイライラが移ります

わたしの下の息子2人は双子なのですが、生後3カ月で、2人そろって重度のアトピー性皮膚炎と診断されました。

その後、医師の指導で、ハウスダストを除去するため、1日3回部屋の掃除機かけ(しかも時間をかけてていねいに)。そして、1日に1回は布団にも掃除機をかけるよう指示され、それを約2年間実行しました。

ただでさえ大変な双子の育児。それでもわたしは子どもが良くなるためならば、と必死の思いで掃除をしていたのです。

それが原因かどうかはわかりませんが、その後わたしは、軽いノイローゼのような状態になってしまいました。食欲もなく、全てのことにまったくやる気が起きなくて、どんよりとした毎日を送っていました。

そんなときに、当時、同じマンションに住んでいたある先輩ママから、こう声をかけられました。

「そんなにムキにならなくても、子どもはちゃんと育つから大丈夫!」

この言葉に、当時のわたしはどんなに救われたことでしょう。

それがきっかけで気持ちが軽くなっていきました。
掃除機を必死になってかけることもやめました。
すると驚くことに、子どもたちのアトピーの症状までもが次第に良くなっていったのです。

そのときわたしは、自分の気負いやイライラが子どもたちの病状を悪化させていたのかもしれない、と気づきました。

自分自身も楽しみながら片づけをする

片づけが得意でないわたしでも、子どもたちといっしょならできる。子どもたちもわたしも、どちらもできないなら、いっしょにやればいいのです。特にリビングは共通で使う場所ですから、共通の課題として取り組むことを子どもたちに提案したのです。

「リビングはみんなで使うところだから、自分の物は自分の部屋に置いてきてくれると助かるんだけど……」

「片付けてくれたらすっきりして、みんなが気持ちよく使えると思うんだけど……どう?」

このように言うと、子どもたちはちゃんと、わたしのお願いを聞いてくれました。

きれいに片づいてきたら
「片づいて気持ちよくなったよ。ありがとう!」と感謝します。

すると、子どもたちも、家族に貢献していることをうれしく感じるのか、もっと協力してくれるようになりました。

何事もそうですが、自分が楽しみながらやっていれば、子どもも自然にそうなっていくものなのですよね。

子ども部屋の片づけについて

とは言うものの、3人の子ども部屋は相変わらず汚いまま。
では、こんなときはどうしましょう?

子どもの部屋がきれいでなくても、使うのは子ども自身なのです。つまり、これは親の課題ではなく、本人の課題ということです。

小学校高学年にもなれば、自分で自分の部屋を使いやすいようにすれば良いのです。たとえ、足の踏み場がないくらい汚していたとしても、それは親が干渉するところではありません。

でも、やっぱりきれいに使ってほしいものですよね。
では、このようなときはどうしたら良いのでしょうか?

やはり「片づけなさい」と命令するのではなく、

「お母さんは片づけたほうがいいと思うんだけど、どう思う?」
「時間のあるときには、片づけてくれるかな?」など、
質問やお願いをしてみましょう。

特に中学生や高校生になれば、このような言い方で、親と折り合いをつけてくれるものです。

ちなみに、我が家の3人息子たちの部屋は、実家にいるときはきれいではありませんでしたが、現在一人暮らしをしている部屋は、なんとか自分で片づけているようすです。

親が心配しすぎなくても、子どもは育っていくものと、いま本当に身にしみて感じています。

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松井美香(まついみか)

松井美香(まついみか)

松井美香(まついみか)

東京音楽大学ピアノ専攻卒業。「勇気づけの音楽家」。大学卒業後約10年間公立中学校に勤務。その頃偶然、教員研修でアドラー心理学に出会い、岩井俊憲氏の元で学び約25年が経過。自身のピアノ教室や子育てにおいてアドラー心理学を実践する中、子どもたちが音楽や部活動を続けながらも有名大学に続々と合格し夢を叶えている。長男(21歳)と双子(18歳)三人の男子の母。現在、保護者や音楽指導者に向け、執筆やセミナーを通して「勇気づけの指導法」を広める活動をしている。

*学研「おんがく通信」にて、コラム「勇気づけのピアノレッスン」連載中

*学研プラス出版「あなたの想いが届く愛のピアノレッスン」にて、手記「ある教室のささやかなサクセスストーリー」を執筆

松井美香公式ホームページ:

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