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スマホを犯罪の窓にしないために/データで読み解く、子どもとスマホ【第35回】

スマホを犯罪の窓にしないために/データで読み解く、子どもとスマホ【第35回】

コミュニティサービスをきっかけにした子どもの犯罪被害について、最新情報からさらに読み解きます。

被害の入り口は今年もスマホが9割弱

前回に続き、コミュニティサービスをきっかけとした子どもの犯罪被害※1について見ていきます。

犯罪被害のきっかけとなったコミュニティサイトへのアクセスには、昨年同様、被害児童の9割弱がスマホを利用していました。

平成28年におけるコミュニティサイト等に起因する事犯の現状と対策について(警察庁)より

中学生・高校生へのスマホの普及状況を考えると、今後しばらくはスマホが「犯罪の窓」となる状況は変わらないでしょう。

スマホの持つ機能もまた、犯罪に使われています。性的な画像を撮らせて送らせる「自画撮り」も、子どもの手元に高機能なカメラを搭載したスマホがあることを利用して行なっているものです。

子どもの犯罪被害に画像や映像がつきものとなってしまったことを、保護者は認識しないといけません。

学校の指導、被害児童の半数が「覚えていない」

子どもたちがネットで犯罪に巻き込まれるのを防ぐため、いろいろな策が講じられています。代表的なものが、学校におけるICT講座などのネットの安全利用教育とフィルタリングです。

被害児童には、これらのネットの安全に関する施策が行きとどかなかったのでしょうか?

平成28年におけるコミュニティサイト等に起因する事犯の現状と対策について(警察庁)

調査によれば、ネットの利用に関して、学校で「指導を受けたことはない」と回答した被害児童は1割未満です。

しかし、とても残念なことに、「覚えていない」と回答した被害児童が約半数います。

学校での指導が守るべき子どもの心にとどかない、そんな状況が見えてきます。

フィルタリングはどうでしょうか。フィルタリングの利用の有無が判明した被害児童のうち、約9割がフィルタリングを利用していませんでした。昨年とほぼ同じ割合です。

子どもだけではフィルタリングを外すことはできません。子どもを守るフィルタリングを保護者が外している、そんな状況が続いています。

フィルタリングと根気強いコミュニケーションで子どもを守る

保護者は、子どもを犯罪から守るためにいったいなにをしたらいいのでしょうか。

警察庁は、サイバー補導取締りの推進、フィルタリングの普及、児童・保護者・学校関係者への広報啓発活動などを進める方針を示しています。

警察が安全のために動いていることはわかりますが、いまこの瞬間も、子どもたちの手元にはスマホがあり、SNSを通じて広いネットの世界とつながっています。

すぐに保護者ができること、その第一はフィルタリングです。

子どもから「使いにくい」とか「みんなが見ているサイトにアクセスできない」とかクレームが来ても、すぐにフィルタリングを解除するのは待っていただきたいと思います。

いまどきのスマホのキャリアが提供するフィルタリングは、「Aのカテゴリは見せるけど、Bはだめ」というように、ある程度のカスタマイズができるようになっているのです。※2 ご存じでしたか?

フィルタリングは「OK」「NG」の二者択一ではなく、年齢や成長度合いに応じて調整できることを、どうぞ覚えておいてください。

第二に、保護者も子どもも、ネットで起きてしまっている犯罪について知りましょう。警察庁や総務省などが発表しているトラブル事例集に親子で時間をとって目を通し、話し合いましょう。※3

子どもが、卑劣でこうかつな犯罪の被害にあってしまっている、その事実から学べることは多いはずです。

子どもが立ち入るべきでない領域、とるべきでない行動を知り、そこから遠ざかれる心の強さを持てるよう、機会をとらえて保護者が粘り強くアプローチしていきましょう。

※1
平成28年におけるコミュニティサイト等に起因する事犯の現状と対策について(警察庁)
※2
携帯キャリア各社のフィルタリング設定方法解説ページ
・NTTdocomo:spモードフィルタカスタマイズの設定方法
・au:安心アクセスサービス
・softbank:あんしんフィルター
※3
コミュニティサイトでの児童被害に注意!(警察庁)
インターネットトラブル事例集(総務省)

 
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渡邉純子(コドモット)(わたなべじゅんこ)

渡邉純子(コドモット)(わたなべじゅんこ)

渡邉純子(コドモット)(わたなべじゅんこ)

株式会社コドモット代表取締役社長。
NTT在籍時代の2001年、子ども向けポータルサイト「キッズgoo」を立ち上げ、同サイトでデジタルコンテンツグランプリ・エデュテイメント賞受賞。独立後は小学生向けのコンテンツを中心に、企業の子ども向けWebサイトや公共団体の子ども向けツールなどの企画制作を数多く手がける。一男一女の母。

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