「子育てが楽しくなる小さなヒント」㉒ 子どもの国語力のつけ方
学研キッズネット編集部と、元保育園園長で現在「花まる子育てカレッジ」のディレクターである井坂敦子さんがタッグを組んで、月・水・金の朝6時に配信している、音声プラットフォーム『Voicy』の番組「コソダテ・ラジオ」。月曜日配信のトークテーマ「子育てが楽しくなる小さなヒント」の内容を、いつでもお読みいただけるように記事化しています。さて、今回は「国語力」に関するお話です。
国語力は語彙力
「イデア国語教室」という国語塾の主宰をされている久松由理(ゆり)さんと話をしたときのことです。「読解問題は、そもそも語彙力がなくて言葉を知らないことで問題文が読めていないお子さんが多いですよ」と伺いました。
たとえば、問題文が戦争の話だったとします。その頃と今では、生活スタイルが変わっていますよね。親御さんからすると、「こたつ」や「たわし」、「乳母車」、「火の見櫓」など、どんなものかわかるものでも、お子さんにとっては、「ベビーカーは知ってるけど、乳母車って何?」という感じです。
火の見櫓などは、本当になくなってしまいましたよね。私が子どもの頃は、地域の人が協力し合って消防団をやっていて、使っていないけれど火の見櫓があって、ちょっと登って遊んだり、ということがありました。
そんな感じで昔は身近にありましたが、今はなかなか見られません。そうした知らないもの、知らない言葉があると、子どもはまったく想像できずに、問題文が理解できなくなってしまうのです。
語彙力を鍛える意外な方法
ではどうしたらいいかというと、「知っていく」ことしかないと思います。ですが、一つひとつ「これは○○だよ」「これは△△だよ」と教えていたらきりがありませんよね。
そこで、私が意識してやっていたことは、子どもと昭和など昔の時代が舞台になっているドラマや映画を観ること。
たとえば司馬遼太郎さん原作のドラマ「坂の上の雲」。それからNHKの大河ドラマだと、戦国時代や明治、昭和初期など、そういう時代背景のものがありますよね。
戦国時代や明治維新の辺りが舞台になることも多く、いろいろな物の名前が出てくるので、「あれは○○って言うんだね」というふうに、一緒に見ながら知識を増やしていく、ということをしていました。
「拙者」も「ござる」もわからない?
久松さんから伺ったのですが、言葉遣いに関しても、「拙者」と言われると、もうそれだけで何のことかわからなかったり、時代劇でよく「○○でござる」と言いますが、「ござる」なんてまったく聞いたことがないお子さんもいる、ということでした。
その理由のひとつが、テレビが家にない家庭が増えてきていること。昔は、お茶の間にだいたいテレビがあって、自分は見たくなくてもおじいちゃんが好きな時代劇を一緒に見るしかない。そこで、なんとなく古い言葉を知っていくということがありました。おじいちゃんが囲碁の番組を見ているので、囲碁がどんなものか知ったり、というようなこともあるでしょう。
それからもうひとつ。最近、本屋さんが減ってきて、本屋さんに行く機会が減ってしまったこと。本屋さんに行くと、いろいろな本に目移りしながら、目当ての本以外のものにも興味を持っていく、というチャンスがあります。
図書館でもいいと思いますが、自分の興味のあるもの以外のものに出会うことはとても大事です。最近はネットで本を買うことも増えました。関連する本がおすすめで出てきたりはしますが、似た本になりがちです。「偶然出会うもの・知識」が減ってきている感じがします。
そうして、興味を持ったもの以外の言葉や知識に出会いにくくなっていて、それが本や文章を読むときの「知らないことがいっぱい出てきて嫌になっちゃう」につながっているのでは、と久松さんはおっしゃっていました。
言葉に興味を持たせる声のかけ方
ちょっと知らないだけでくじけてしまうのはもったいないと思います。言葉を、なるべく勉強という形ではなく、楽しみながら増やしていくには、周りの大人が「あれなんだろうね」「どうしてこうなっているんだろうね」など、刺激になる言葉をかけてあげることが大切。子どもが、「あれって、そういう名前なんだ!」や「本当だ、なんでそうなっているんだろう?」と、語彙を増やしていけるはずです。
英語だと、勉強の一環として、単語帳で単語を覚える作業があったり、単語テストがあったりしますが、日本語だとそうした勉強をあまりしません。わかっていることが前提で、目の前にある物の名前を知らないまま通り過ぎてしまうことがあるので、意識して、「あれは何という名前なんだろうね?」と、楽しみながら覚えてほしいと思います。
しりとりや、「“あ”で始まるものを集めてみよう」「丸いものを集めてみよう」といった言葉集めなど、遊びながら、言葉をどんどん増やしていってあげられたらいいですね。
国語力のもとになる「実体験」を大切に!
子どもと月を見上げながら、「今日は丸いね」「三日月だね」と話をしたりすると思いますが、そんなときに、「下弦の月」「上弦の月」「明け方まで出ている月は有明の月って言うんだよ」などと話すのもいいそうです。
月にはいろいろな呼び方があって、国語の和歌に出てくる言葉や、理科で習う月の満ち欠けなど、勉強につながっていきますが、最初は誰でも実物の月を見て「わ、お月様だ」というところから始まります。
そこを少しずつ刺激して、「何で月の形って変わるんだろうね?」というように話をしていくと、実際その勉強が始まったときに、「あ、あのことか」とつながって興味を持ち、子どもの中で知的好奇心のスイッチが入るのだそう。
実際に自分が感じたことと知識がつながるときというのは喜びがあります。それを「おもしろい」と思ったり「へ~」とワクワクしたりということが「学び」だと思いますので、ぜひ普段の生活の中で言葉を増やしていきながら、その次の段階、勉強に結びつけていただけたらいいなと思います。
話し手/井坂敦子 構成/清野 直
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▼井坂敦子 プロフィール
慶應義塾大学→ 雑誌『オレンジページ』編集部 →公式サイト『オレンジページnet』編集長 →小学校受験対応型保育園園長 →年間約100本の子育てや教育に関する講演会や対談を企画運営 英国留学中高校生女子とボーダーコリー3頭の母
中学校高等学校教諭一種免許状(国語) 保育士 食育カウンセラー 表千家師範
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