イライラや怒りという感情を使わずに、子どもの心を育てませんか?/くやまない、悩まない、自分を責めない――心がラクになるアドラー流子育て【第10回】
感情、特にイライラや怒りの感情は、自然にわき起こってくるものではなく、ある目的のために使われるものと、アドラーは指摘しています。わたしたち親はそのことに気づき、できる限りイライラや怒りの感情を使わずに、親にとっても子どもにとっても、無理のない子育てをしたいものです。
不機嫌な母の顔色をうかがっていた子ども時代
子どものころ、わたしは大晦日が大嫌いでした。
その理由は、大晦日になると母がきまって不機嫌になるから。母が不機嫌になるそのわけ・・・このコラムを読んでくださっているあなたには、想像できるかもしれませんね。
実は、今でもわたしは母の顔色をうかがってしまうところがあります。80歳を過ぎた母は、良い意味でも悪い意味でも感情豊かな人。思ったことを感情的に言葉にするので、わたしはとても気をつかうのです。
機嫌が良い時はとても良い関係でいられるのですが、いったん何か気に入らないことがあると、だれに対してもそれを口にします。わたしは子どものころから、そのことでどれだけ苦しんできたことでしょう。
そうなんです、母は感情を使って人を動かそうとする人でした。そして、今もその傾向は残っています。
母の世代は「世の中の常識とはこういうもの」「人とはこうあるべき」「子どもは親の言うことを聞くもの」というような価値観の中で育ってきたと言えます。また、年長者が怒りをあらわにしていても、それが当たり前の時代でもありました。
親はいつの時代もかわらず、子どものために良かれと思って子育てをしていると思います。子どもは親を見て育つので、親のやり方が当然のことであり、自分が親になると、わが子にも同じように接することが一般的だったのではないでしょうか。
アドラー流子育ては感情で人を動かしません
自分を振り返ってみて、思い当たるところはありませんか? わたしがもしアドラーを知らなかったら、母と同じように感情的に子育てをしていたことでしょう。
その方法になんとなく疑問を感じることがあったとしても、他の方法を知らないのですからしかたありません。でも、アドラーはそんなかつての子育てに疑問を投げかけています。
感情には目的がある
アドラーは、感情的になることには目的があるというのです。
つまり、わたしの母は大晦日の日に、わたしに『掃除などの手伝いをさせたい』という目的のために、『怒りという感情』を使ってわたしを動かそうとしていたということです。
わたしは、母の不機嫌がたまらなく嫌でしたので、がまんしながら手伝いをしていたというわけです。そのため、子ども時代のわたしは大晦日という日が嫌でたまりませんでした。
でも、それでは子どもの心は育ちません。
「掃除してきれいになって気持ち良い」とか「お母さんが喜んでくれてわたしもうれしい」、「わたしはお母さんの役に立てた」そんなふうに感じなければ、本当の意味で子どもの気持ちを育てることにはならないのではないかと、今のわたしは思っています。
お手伝いが、子どもが親の機嫌をうかがいながら行う行為となってしまっては、自分から何かをしようという気持ちが育ちません。
もしあなたが、子どもに掃除をして欲しい。家のことを手伝って欲しい。と思うのであれば、イライラや怒りの感情を使わずに上手に伝え、かつ、子どもの心を育てるアドラー流の方法があります。
子どもの心を育てるアドラー流の伝え方
それは、「ママね、○○ちゃんに手伝って欲しいことがあるんだけど・・・今、時間ある?」とか、「これをやってくれたら、ママ、すごく助かるんだけどな」とか、まるで友人に語りかけるように言ってみるのです。
この方法は、子どもを親の意図通りに操作することが目的ではありません。
子どもの「協力しようとする気持ち」や「役に立ってうれしいという気持ち」を育てることが目的なのです。感情、特にイライラや怒りの感情は、自然にわき起こってくるものではなく、ある目的のために使われるものと、アドラーは指摘しています。
わたしたち親はそのことに気づき、できる限りイライラや怒りの感情を使わずに、親にとっても子どもにとっても、無理のない子育てをしたいものです。
これからも、アドラー流の具体的な子育ての方法を、このコラムでお伝えしていきたいと思っています。
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