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余暇のためのICT利用、日本の15歳は?/データで読み解く、子どもとスマホ【第38回】

余暇のためのICT利用、日本の15歳は?/データで読み解く、子どもとスマホ【第38回】

今回は日本の子どものICT活用状況について、余暇の面から読み解いていきます。

余暇のためのICT利用指標、PISA調査で日本は最下位グループ

PISA2015(※1)のICT活用調査結果から、日本の15歳の余暇におけるICT活用状況をみていきます(※2)

「宿題のためのICT利用」指標が調査参加国中ダントツの最下位だった日本(第37回)。前回もお伝えしましたが、「余暇のためのICT利用」指標も、日本は46カ国中下から2番目と、最下位グループにいます。韓国、中国など、香港をのぞく東アジア諸国、ドイツも同じような傾向です。

OECD生徒の学習到達度調査 PISA2015年調査国際結果報告書 生徒のwell-being(生徒の「健やかさ・幸福度」) (2017年4月 国立教育政策研究所)より

そんなこと信じられない、うちの子、いつも家でスマホをいじっているのに! と思った方は多いでしょう。

実は、学校外でのインターネット利用の長時間化は世界的な傾向で、利用時間の面ではOECD平均と日本にはあまり差がありません。

OECD生徒の学習到達度調査 PISA2015年調査国際結果報告書 生徒のwell-being(生徒の「健やかさ・幸福度」) (2017年4月 国立教育政策研究所)より

最も回答が多いのは平日・休日ともに2~6時間で、これは保護者の実感と合っているでしょう。

常習性のあるICTの利用には、子どもの身体的、社会的、心理的、認知的成長に悪い影響がある恐れが指摘されていますので、長時間化の傾向は歓迎できることではありませんが、それでも、日本の子どもだけが飛び抜けてネットにハマっているわけではないのです。

ではなぜ余暇における利用頻度が低いという結果になるのでしょう? どうやら日本の15歳は、余暇におけるネットへの意識が、他の国と少々傾向が異なっているようなのです。

余暇の場面、ネットへの肯定的なイメージは低め

PISA2015では「余暇のためのICT利用」指標と、インターネットに対する意識との関連について分析しています。

  • インターネットは優れた情報源である
  • ソーシャル・ネットワークはとても役に立つ

この2つの質問項目は、ネットへの肯定的なイメージについて調べるものです。

日本の子どもは、2つの質問項目とも、「その通りだ」の回答も「その通りでない」の回答も、OECD平均を下回っています。

細かくみると、「その通りだ」よりも「その通りでない」の指標の方が平均から離れており、日本の15歳は総じて肯定的なイメージが低いといえます。

そして、もう1つ

  • インターネットに接続できないと気分が悪い

という質問項目があります。ネット依存意識を調べるものです。

日本はOECD諸国と比べ、余暇のためにICTを利用している頻度が高い生徒が「インターネットに接続できないと気分が悪い」という質問に「その通りだ」と回答する傾向が強いのです。

余暇で使うネットのことを、情報源としてイマイチと感じ、SNSも微妙に役立たないと感じているけれど、つながっていないと気分が悪く依存気味。いったいなんのためにネットを使っているのか、とツッコみたくなりますね。

この調査結果から、ネットとつながることがあたりまえになりすぎて意識にのぼらず、遊びでも学びでもない“日常”のシーンで、ダラダラとネットを使い続ける……そんな日本の15歳の姿が見えてきませんか?

世界では、デキる子はメリハリをつけてネットを使っている!?

ここで、インターネットの利用時間と「科学的リテラシー」「数学的リテラシー」「読解力」の3分野の得点の関係についてみてみます。

日本では、3分野すべてで、平日1時間~2時間の利用時間と回答した子どもの得点が最も高くなっています。これはOECD平均でも同様ですが、休日の利用時間については傾向が違っています。

日本では、休日も平日と同じ、1~2時間の利用時間と回答した子どもの得点が最も高いのですが、OECD平均では2~6時間が最も高くなっています。日本では、平日も休日もネットから離れている子の得点が高く、世界では休日にネットを楽しむ子の得点が高いというわけです。

OECD生徒の学習到達度調査 PISA2015年調査国際結果報告書 生徒のwell-being(生徒の「健やかさ・幸福度」) (2017年4月 国立教育政策研究所)より

日本の子どもの「科学的リテラシー」「数学的リテラシー」は1位、「読解力」は8位と上位におり、OECD平均との単純な比較に意味はありません。

でも、調査結果からは、世界の“デキる”子は、学び(宿題)と遊び(休日)でメリハリのきいたネットの利用をしているという姿が見えてきます。

日本の子どもがネットを自分の未来につながる形で幸せに使っていくためにはどうしたらいいのか、そのヒントとなるようにわたしは感じました。

次回はPISA2015のICT活用調査について全体をまとめてみていきます。

※1
PISAについて
文部科学省 全国的な学力調査(全国学力・学習状況調査等)
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/gakuryoku-chousa/sonota/1344324.htm
※2
国立教育政策研究所
PISA2015年調査『生徒のwell-being(生徒の「健やかさ・幸福度」)』報告書http://www.nier.go.jp/kokusai/pisa/pdf/pisa2015_20170419_report.pdf

 
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渡邉純子(コドモット)(わたなべじゅんこ)

渡邉純子(コドモット)(わたなべじゅんこ)

渡邉純子(コドモット)(わたなべじゅんこ)

株式会社コドモット代表取締役社長。
NTT在籍時代の2001年、子ども向けポータルサイト「キッズgoo」を立ち上げ、同サイトでデジタルコンテンツグランプリ・エデュテイメント賞受賞。独立後は小学生向けのコンテンツを中心に、企業の子ども向けWebサイトや公共団体の子ども向けツールなどの企画制作を数多く手がける。一男一女の母。

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