2023年は、みなさんにとって、どんな1年だったでしょうか。きっとそれぞれに、うれしかったり、楽しかったりした思い出が浮かぶことでしょう。社会へ目を向けると、将来、歴史の授業でもでてきそうな出来事がたくさん起きました。その中から、みんなにも知っておいてほしいこと、考えてほしいことを学研キッズネット編集部で10個をピックアップしたので、いっしょに振り返ってみましょう。あわせて、それぞれのニュースについてもう少し理解を深めることができるキーワードや関連記事のリンクも紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
【ニュース1】ロシアのウクライナ侵攻長期化、「支援疲れ」の心配
ロシアがウクライナへ侵攻してから2023年2月24日で1年が過ぎました。6月以降、ウクライナは反撃を強めていますが、ロシアが支配した東部ドンバス地方や南部クリミア半島などをまだ取り戻せていません。状況は良くならないまま被害は増え続け、11月の国連発表では、ウクライナの民間人の犠牲者は少なくとも1万人を超えました。戦争が長期化する一方で、国際社会の関心はうすまりつつあります。ウクライナを支援してきた欧米各国でも「いつまで支援を続けなければならないのか」といった「支援疲れ」が見えてきているようです。そのため、今後ウクライナがロシアに対抗できなくなるのではないかと心配されています。また、ウクライナのようにロシアに攻めてこられないよう、北欧のフィンランドは4月、欧米を中心とした軍事同盟NATO(北大西洋条約機構)に加盟しました。
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【ニュース2】子ども政策が再出発 こども家庭庁・こども基本法新設
子どもに関する政策を取りしきる新しい国の組織「こども家庭庁」が2023年4月にできました。これまでは、いろいろな省庁がそれぞれの管轄で子ども政策を行っていました。これからはこども家庭庁がリーダーとなり、子どもの視点に立って子どもの利益を一番に考えて取り組みます。担当する主な分野は、虐待・貧困対策、妊娠・出産・子育て支援、少子化対策など。学校とも深く関わるいじめ対策などは、文部科学省と連携します。また、各省庁の子ども政策が不十分だと判断したら改善を求められる「勧告権」があるのも特徴です。4月は子ども政策を社会全体で進めるための「こども基本法」もスタートし、子ども政策の基本的な方針を定める「こども大綱」づくりも進んでいます。2023年は日本の子ども政策が再出発を迎えた年となりました。
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こどもまんなか社会/こども若者★いけんぷらす/子どもの権利条約/こども未来戦略方針/次元の異なる少子化対策
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【ニュース3】世界の総人口が80億人を超える、国別人口はインドが1位に
国連人口基金(UNFPA)が2023年4月に発表した「世界人口白書2023」によると、2023年の世界人口は80億4500万人となり、初めて80億人を突破しました。最も人口の多い国はインドの14億2860万人。インドでは乳幼児の死亡率が下がったことで、これまで長く1位だった中国を今回抜きました。人口が特に多いアジアやアフリカの国々を中心に世界の人口は増え続けていて、2030年には85億人、2050年には97億人になると予想されています。一方、少子高齢化が進んで人口が減少傾向にある日本は1億2330万人で12位となり、2022年の11位(1億2560万人)から順位をひとつ下げました。世界の人口、各国の人口については、その両方で「資源に対して多すぎる」「これから少子化が進むのでまだ少ない」などと異なる意見があります。いずれにしても、人口が多いから子どもを産ませてもらえない、人口が少ないから子どもを産まされるといった、女性の自由と権利の侵害があってはならないと世界人口白書は指摘しています。
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出生率/人口置換水準/移民/性と生殖に関する健康/総務省統計局『人口推計』
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【ニュース4】新型コロナの「危険度」を下げて「5類」に、対策は個人で
世界的に大流行し、多くの死者を出してきた新型コロナウイルス感染症。ワクチンや治療薬ができ、重症化しにくい株に変化もしたため、日本では5月8日から「危険度」が引き下げられました。具体的には、感染症法での分類が、新型インフルエンザ等感染症(2類相当)から、季節性インフルエンザと同じ「5類感染症」になりました。これにより、感染したり地域で大流行したりしても国や地方自治体が「外出しないで」「飲食店は営業しないで」「スポーツの観客を減らして」などとお願いすることはなくなります。感染を広げないためにどうするかは、みなさん自身の考えに任せられ、マスクをつけるかどうかも自分で決められます。つまり対策の中心が、国から個人へと移ったのです。決して新型コロナウイルスがなくなったわけではないので、みなさんの予防策の重要性は変わりません。
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感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律/感染症発生動向調査/医療費の自己負担/学校保健安全法施行規則/mRNAワクチン
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【ニュース5】広島でG7サミット開催 核兵器、ウクライナ問題を議論
大きな影響力を持つ先進国7か国の首相や大統領が集まって、世界規模の課題について話し合う「G7サミット」が5月、広島市で開かれました。7か国は、日本、アメリカ、イギリス、イタリア、カナダ、ドイツ、フランス。EU(欧州連合)の首脳もメンバーです。今回、第二次世界大戦末期にアメリカによる原子爆弾の攻撃を受けた「被爆地」を開催地として、「核兵器のない世界」の実現へ向けた初めての声明「広島ビジョン」をまとめました。ただ、どうやって核兵器をなくしていくかという具体策は示されませんでした。また、ロシアに侵攻されているウクライナのゼレンスキー大統領も来日して話し合いに参加。G7がまとまって、ロシアを非難し、ウクライナ支援を強めていくことなどを決めました。
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G7広島首脳コミュニケ/広島平和記念資料館/核抑止力/中国に対するデリスキング/グローバル・サウスとの関係強化
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【ニュース6】2023年は記録的な猛暑、地球温暖化も理由のひとつ
2023年は夏から秋にかけて厳しい猛暑となり、全国各地で「暑さ」の記録が塗り替えられました。1日の最高気温をみると、福島県伊達市梁川と石川県小松市でともに観測史上初の40.0度に達しました。涼しいはずの北日本も例年になく暑く、北海道札幌市も過去最高36.3度まで上がりました。気象庁のデータによると、7月16日から8月23日の期間で、全国の観測点 915 地点のうち 106 地点で最高気温の最高記録を更新。そしてこの夏の平均気温は、気象庁が統計を取り始めた125年間でもっとも高くなりました。猛暑の原因は、太平洋高気圧の勢力が強かったことなどの気象現象のほか、地球温暖化の影響が考えられます。2023年夏の暑さは日本だけではなく、世界的な現象でした。EUの気象情報機関「コペルニクス」によると、北アメリカやヨーロッパ、アジアも猛暑で、世界の平均気温も過去最高を更新したそうです。
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【ニュース7】広がる生成AIの活用、学校でのルールや国際ルールもできた
まるで誰かと会話しているような自然な文章のやり取りができるAI(人工知能)ツール「チャットGPT」をきっかけとして、文章や画像をつくり出せる「生成AI」が2023年、広く社会で使われだしました。チャットGPTは質問の受け答えのほか、文章をまとめたり、企画のアイデアを例示してくれたりするため、企業や官公庁などでも活用されています。一方で、生成AIからの情報には間違いや偏りがあったり、生成AIを悪用したフェイク画像・動画が広まったりと課題も多いです。文部科学省は7月、小中高校向けに生成AI利用のガイドラインを公表しました。世界的にも生成AIの活用や規制についてのルールが求められており、先進国7か国でつくるG7は12月、みんなが守るべきことを示した国際ルールを決めました。
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ディープフェイク/著作権/初等中等教育段階における生成AIの利用に関する暫定的なガイドライン/全てのAI関係者向け及び高度なAIシステムを開発する組織向けの広島プロセス国際指針/高度なAIシステムを開発する組織向けの広島プロセス国際行動規範
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【ニュース8】関東大震災から100年、近い将来の大地震への教訓に
2023年9月1日は関東大震災から100年の節目でした。1923年9月1日午前11時58分、神奈川県三浦半島から千葉県房総半島にかけての広い範囲を震源域とするマグニチュード(地震のエネルギーの大きさ、M)7.9の地震が発生。現在の基準で震度7ほどに揺れた地域もありました。建物の倒壊、火災、土砂崩れ、津波などさまざまな災害が起き、死者・行方不明者は10万5000人に。そのうち9万人ほどが火災で、1万人ほどが建物の倒壊で亡くなっています。関東大震災は、建物の耐震基準や、火災が広がりにくい街づくりなど現在につながる災害対策の出発点となりました。現在、「南海トラフ地震」「首都直下地震」など大きな地震が、いつ起きてもおかしくないと言われています。この機に家具の転倒防止や非常食の確保、避難所の確認など、日ごろの備えを万全にしておきたいものです。
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火災旋風/木造住宅密集地域/朝鮮人殺傷/液状化現象/地震発生可能性の長期評価
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【ニュース9】イスラエルとパレスチナが激しい戦闘、ガザの犠牲者が最多に
中東のイスラエルに対して、パレスチナ自治区ガザ地区を支配するイスラム組織ハマスが10月7日、攻撃を仕掛けました。イスラエル側の約1200人が犠牲になり、約240人が人質として連れ去られました。イスラエルは報復(仕返し)として、ガザ地区へ空爆、地上戦を開始。ガザ地区では1万8000人以上(2023年12月19日時点)が犠牲になり、そのうち5000人以上が子どもという報告もあります。犠牲者数はイスラエルがこれまでに行ったガザ地区への攻撃の中で、もっとも多くなっています。街や住宅の破壊も激しく、ガザ地区人口の85%にあたる190万人が避難をしいられている状況です。戦闘は、イスラエルがガザ地区に大きなダメージを与えることで、数か月で終わると予想されます。ただし、争いの原因である土地をめぐる問題や、「天井のない監獄」と呼ばれるガザ地区の厳しい生活状況が変わることはなく、イスラエルや国際社会の今後の対応が問われています。
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中東戦争/オスロ合意/パレスチナ自治政府/ヨルダン川西岸地区/イスラエル人入植
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【ニュース10】将棋・藤井聡太さんが史上初の八冠に AIで研究、AI超えも
将棋のプロ棋士、藤井聡太さんが10月11日、「王座」のタイトルを獲得し、史上初めて8大タイトルを独占する「八冠」を達成しました。藤井八冠は2016年10月、当時14歳2か月という史上最年少でプロ入りすると、2020年3月には史上最年少17歳で初タイトル、「棋聖」を獲得。その後、同年8月に「王位」、2021年9月に「叡王」、同年11月に「竜王」、2022年2月に「王将」、2023年3月に「棋王」、同年6月に「名人」のタイトルを勝ち取っていました。棋王と竜王を除く6つは、いずれも最年少記録を更新しての獲得でした。藤井八冠は将棋AIを研究に活用していますが、対局中にはAIでもすぐには思いつかない「AI超え」の最善手を指すこともあり、話題になりました。藤井八冠はまだ21歳。これからどんな記録を打ち立てていくのか、社会現象ともいえる注目を集めています。
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観る将/藤井曲線/一般棋戦グランドスラム/内閣総理大臣顕彰/羽生善治七冠
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